損失回避

2009年8月31日 月曜日

レンタカーを借りる時、最後の最後に車の損傷に対する責任が免除される保険を勧められます。例えば、手続きが終了してカギをちらつかせながらです。

損失やダメージという言葉を聞くと、何やら不安な事が頭をよぎります。もし、車をぶつけてしまって、損傷分を支払うのは嫌だな・・・。

しかし、普段の事を考えると、事故が起こる確率など天文学的に低い確率かもしれません。そもそも、クレジットカードで支払っていれば、カード会社が保障してくれる保険が自動的に付帯されています。また、車には自賠責保険も付いているでしょう。

それなのに損失というキーワードが頭に浮かぶと目の前の保険に加入したくなります。このことは損失回避として知られます。

何らかの損失のリスクがあった時、その損失のリスクを避けられる場合、多少の犠牲を払うことをいとわないのです。そしてその可能性のある損失がおおきれば大きいほど、人はその損失を嫌がります。そう、それが理由で不合理な判断をするのです。

例えば、次のような状況の時、どのような判断を下しますか?

【あなたは2万円をもらいました。ただし、どちらかのクジを引かなければなりません。どちらのクジを選びますか?】

1)確実に5000円を得られるクジ
2)25%の確率で2万円を得られるが、75%の確率で何も得られないクジ

この手の実験は多くの公的機関で実験されており、1)を選ぶ方が約2/3で、2)を選ぶ方が約1/3の結果になります。1)と2)の期待値を考えると、どちらも5000円なので、合理的な判断では、どちらを選んでも25,000円をもらえる!と考える事ができます。とすれば、1)と2)の結果が同等になるでしょう。

次に、別のクジを設定します。どのような判断を下しますか?

【あなたは4万円をもらいました。ただい、どちらかのクジを引かなければなりません。どちらのクジを選びますか?】

1)確実に15,000円を取られるクジ
2)75%の確率で2万円を取られるが、25%の確率で支払いを免除されるクジ

この結果は、2)を大多数の方が選択し、1)を選択する人が減少します。こちらも期待値を考えると、どちらも15,000のマイナスです。つまり、始めのクジと同様に最終的な手取りは25,000円になるクジなのです。

それなのに、前者と後者で結果が違ってくるのが分かります。得を得られる機会では臆病な選択をして、損失が見えている時は大胆になるのです。

始めのクジはもらったお金が増えるクジです。後のクジはお金が減るクジです。結果として損失に対しての姿勢が露骨に見える実験です。

何かを得る判断よりも何かを損する判断に敏感になります。そして、損失のリスクが避けられるのであれば、多少の犠牲を払うことをいとわないのです。可能性のある損失が大きれば大きいほど、人はその損失を嫌うのです。

レンタカーの保険の勧誘はこの不合理化の判断をうまくついたセールスといえますね。

早嶋 聡史(はやしま さとし)

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