ステークホルダーに対してのブランドの効果はどのようなものがあると思いますか?
企業を取り巻く方々を広くステークホルダーと称しますが、ここでは1)従業員、2)投資家、3)将来の従業員、4)社会、と位置付けます。
1)従業員に対するブランド効果です。
あえて2つの側面を見るとしたら、感情的な効果と機能的な効果に大別できます。はじめの感情的な効果ですが、ブレンド価値が高い企業で働く社員は、それ自体が喜びにつながり、組織への求心力をもたらします。
ある調査では、会社に対する忠誠心は3割程度しかない、という悲観的な結果が得られています。忠誠心が乏しければ永続的に成長を行う企業にとって負の効果です。しかし、対外的に評価されるブランドに携わる仕事についている方は、相対的に忠誠心も高くなるという結果がありました。
以前勤めていた企業の経験です。B2Bの企業なので比較的民間向けの広告が少ないのですが、清掃登山かでも有名な野口健氏のスポンサーになっていました。彼が報道されるときに、ちらりと映る会社のロゴ。なぜか社員として誇りに思えた瞬間でした。
2つめの機能的な効果です。強いブランドはそのブランドのメッセージがあります。したがって個々の従業員の行動を一つに揃える働きがあります。どのような製品やサービスを提供し、そのためにどのような行動を取り、どのような技術開発の在り方、品質の在り方を約束するのか。
ブランドが約束する内容が社員の立ち振る舞いまでを変えていくのです。まさに、ブランドによって1つの方向つけが行われるのです。
帝人は自社の事業変革推進に取り組むさなかでブランドを見直す活動で実現しました。帝人はレーヨン繊維事業のパイオニアです。そして合成繊維、化成品、医薬・医療、IT分野へと飛躍的に活動領域を広めていました。その中で積極的にM&Aも事業戦略の一つに取り入れ多角化がすすめられます。
帝人はグループ内において組織の一体感と求心力を確保するために、またグループ外にはグローバル市場での存在感を誇示するために帝人はのブランディングを推進していきます。
“Human Chemisttry, Human Solution”03年に制定されたブランドロゴとともに新しいブランドステートメントはすっかりおなじみになりましたね。
ブランディングを進める中で帝人は、ブランドブックの制作と配布、ブランドを浸透させるためのブランドミーティングの実施。グループ社員に対する積極的な広告活動。グローバルグループ企業での名刺や封筒などビジネスツールの統一など。帝人のブランディングはまず従業員から始まりました。
早嶋 聡史(はやしま さとし)
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