新規事業の旅113 ワイガヤ再び
2024年5月20日
早嶋です。
これまで、30年間の停滞について、いくつか考え(やや否定的な)を述べてきた(1、2、3)。一方で、徐々にではあるが、若手の起用や管理職への抜擢、異業種との接触強化、スタートアップなどとの協業を取り入れる風土や仕組みも構築しつつある。経営陣も60代から40代に若返りを見せる組織もあり、行動や仕組みを変えている企業も目立つ。しかしながら、日本はようやく30年前のスタート地点にたったのも事実だ。
30年停滞の要因では、組織の意思決定の遅さ、行動力の欠如、トライ&エラーをしない体質を指摘した。そして、組織の高齢化とともに、現場の意見を共有してディスカッションする建設的な場が不足している点も示した。
これらを如実に表すデータがある。米国IBMなどがまとめた調査によると、組織間に置いて上司と部下の距離感(権力格差)が小さいほど、イノベーションは活発に起こりやすいという結果だ。権力格差が地域ごとに小さい国で、スイス、スウェーデン、米国、英国などはイノベーションが活発だ。一方で、ロシア、マレーシア、イタリア、日本などは権力格差が大きく、他国と比較してイノベーションが起きにくい結果を示している。
別の事例がある。航空機は、操縦の際に機長と副機長がセットで機材を飛ばす。過去の事故を調べたところ、機長が操縦機を主で握っている際に主要な事故が起きている割合が高いことを発見したリサーチャーが、詳しく調べた。結果、先程と同じことが示された。つまり、副機長が自由に機長と議論できない結果、不運の事故につながったとまとめられたのだ。
ドラマの世界だが、「白い巨塔」の中でも、先輩や上司のドクターが独裁者となった医療機関の不慮の事故はなくなることがなかった。
今後、日本の組織が劇的にイノベーションを起こしていくには、当たり前にワイガヤが発生しているチームを作ることにあるのだ。確かに、30年前はタバコこそ激しかったが、上も下もなく皆、日本の成長や企業の成長を考えて、一生懸命に自分の意見を交換して議論しながら道を探っていた。この作業を無視して皆が他人毎になった30年だったのかもしれない。
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新規事業の旅112 30年停滞からの学び
2024年5月16日
早嶋です。
大きく昔から変わらない企業は指を加えて眺めている。この構図は10年、20年そして、今でも観察される。事業チャンスはあらゆる組織、規模の大小に関係なく平等だ。新規事業の必要性をただ連呼するだけでは何も生まれない。組織のトップが現場レベルにまでコミットし、試行錯誤を繰り返しリスクをトップが引き受ける。このような組織は、社長=起業家か、現在も成長を遂げている企業の姿だ。
芳しく無い企業は、経営方針が不明瞭、リスクを取る覚悟が経営陣にみられない。これまでの思考の枠組みに収まり、様子をみることで自らの成長チャンスを潰している。守りに徹して組織のクイッぷちを守るのも正論だが、動かないで30年間じっとするのは違う。できない場合は、できる役者にバトンタッチすれば良いのだ。今の日本は、他の国に100歩くらい後に追いやられている現実なのだ。直視しよう。
チャットGPTが去年頃より賑わせているが、成長が止まっている大きな組織は、情報の流出の懸念があるからという理由で、何も調べない内から導入しない。昨日のGPT4o は、ITリテラッシーが低い社員でも、コンピューターを自然言語で、しかも口頭で使える革新があるのに、おそらくそれらを活用するという発想は1mmもないのでは無いかと思ってしまう。
デジタル技術が誕生した際に、例えばレントゲンの写真をアナログからデジタルに移行させる意思決定も、口腔内の撮影をして治療の経過を見る工程をデジタルに置き換える際も、昔の人は難癖つけて現場の導入を10年単位で送らせている。「レントゲンの写真の白黒の色合いじゃないと診断ができない!」とか、「デジタルで口腔内の写真を取ったら加工できるじゃないか!」とか言った具合で。いわゆる「偉い人」の一声に迎合して若い人も声を挙げない期間が続いているのだ。
選挙の電子投票もしかり。昔からの体質の大きな組織は年齢が高いが所以に、変化をしないままでいる。デジタルに反対の一派は、「不正が起きたらどうするか?」と断固反対している。デジタルで行った場合が、不正は回避しやすくなるのに、一度反対を決め込んだら死ぬ前態度を変えないのだ。
ソフトウエアの開発も、ベンチャーがオープンソースを導入し開発スピードとソフト品質を向上させている中、大きな成長をしていない組織の長老は、「誰が作ったかわからないソフトを組み込んでいいのか!」と現場を怯えさせてチャンスを何度も逸してしまう。
大きな成長できない企業の構図は、実はある程度おなじだと思う。経営陣が表では成長、イノベーション、新規事業と連呼している一方で、裏ではトライ&エラーをしない、失敗を許さない、方針を明確にしない。そして、何もよりも悪な思考は既存事業の判断軸で新たな取組を評価してしまうことなのだ。
ここまで読むと、「やっぱりトップが悪いね」とか「そうそう」と若い世代の組織人は頷くかもしれないが、若手の世代にも課題はあると思う。仮に、上が動かないとか、考えないとか思っているのであれば、自分のアイデアを整理して提言すべきだからだ。しかし、ある程度規模が大きくて年功序列の組織ほど、上司と部下のコミュニケーションの実質的なギャップが大きいのだ。結果的に「言っても意味がない」「どうせ却下される」となり、徐々に思考することすら忘れてしまっているのだ。どこかしら組織に属していながらも、組織が目指すビジョンの実現を他人事として捉えているのも罪なのだ。
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新規事業の旅111 30年停滞の要因
2024年5月15日
早嶋です。
日本は30年間成長せず、むしろ一度衰退して、ようやく30年前に戻った。この要因は何だろう。私は組織の意思決定の遅さ、行動力の欠如、トライ&エラーをしない体質だと思う。それは組織が高齢化して実業の意思決定に現場の意見が入りにくくなっている状態が、まさに常態化したことに要因があると思う。
80年代。日本が栄えた頃は、常に答えがあり、欧米が開発した取組を日本は実にうまくコピペした。大量生産大量販売と規模の経済でキャッシュを生み出したのだ。
2000年頃よりコピペが無意味化した。IT化が進み、2007年頃よりスマフォセントリックな経済がはじまった。大きな組織の力で数で戦うのではなく、少数でもITとソフトを組合せると従来と異なるビジネスモデルでレバレッジが取れるようになったのだ。アトムの世界では、何か規模を大きくするために大きな投資が必要になったが、ビットの世界では一度仕組みを作ればプラットフォーム化して一気に世界に展開できる可能性がある。
2010年代に普及しはじめたクラウドが一気に過去のビジネスモデルを駆逐する。全てを自前で揃え、自分たちで開発する。その発想の対局に、得意なところを自分達で実装し、苦手なところはオープンソースを活用する。積極的に他社と協力した上で、とにかく事業化のスピードアップを図った。一度波に乗ると、その展開は加速度的に早まり、自社の株価も指数関数的に高くなる。今度はその株価のレバレッジを活用して、周辺技術を持つ企業を次々に買収してグループイン。昭和平成の企業が外出ししていた顧客データベースの管理や、使用後のアフターフォローやメンテナンスを内製化して、中間にいる企業を排除し直接エンドユーザーと取り引きする形態を生み出したのだ。昔の発想では、顧客の管理コストも高く、コミュニケーションを取るのも一苦労だった。しかしITやSNSやクラウドなどの要素技術を組合せて活用することで、コミュニケーションコストが一気に下がり、様々な情報が地球の隅々まで届くようになり、情報の民主化が一気に進んだ。
フットワークが軽い動きをする組織は、若手のアントレプレナーが作り上げた組織が多い。お金も資本も少ないなか、アイデアを即実行しながらトライ&エラーを繰り返し知見をためていく。一方で、伝統的な大きな衰退する組織は、仕事をいちいち分業化しているため、全体最適の発想を持ち事業に取り組む人材が極めて少ない。何かするにも複数の組織の確認が必要で、ちょっとした変化を組織に導入するにも、あっという間に半年から1年の時間を必要とする。変革を起こしたいのであれば腹をくくってトップダウンで一気に変えれば良いものの、構造的にできない組織になってしまっていると勘違いしているのだ。
組織の意思決定の遅さ、行動力の欠如、トライ&エラーをしない体質。これは全てその組織が勝手に作り出したバグだ。その会議いらないよね。その承認不要だよね。いきなり成功なんてないから小さく始めると良いよね。と、当たり前に考えればわかることを、当たり前に変えていくことが大切なのだ。結局、組織の上部と下部や現場レベルで、実情が入らなく、情報を遮断する仕組みを作ってしまったのだ。組織の問題なので、組織のトップがその気になれば、時間はかかるが確実に変えることはできる問題でもあるのだ。
新規事業の旅110 30年の停滞
2024年5月14日
早嶋です。
24年3月21日。日経の見出しに「日経平均、終値も最高値更新 812円高の4万0815円」とあった。
「コロナも明けて、いよいよ日本も復活するのか!」と心躍った方もいたと思う。しかし、実際は89年頃に当時のピークで4万円近くになった株価は、03年頃に向けて低迷して1万円を割り、そこから20年近くかけて、ようやく4万円台に回復したに過ぎないのだ。失われた10年は20年、30年となり、ようやくスタートラインに戻ったのだ。
89年12月29日当時で国内の時価総額上位10社はNTT(22.93兆円)、日本興行銀行(13.23兆円)、住友銀行(10.55兆円)と以下、富士銀行、第一勧業銀行、三菱銀行、東京電力、三和銀行、トヨタ自動車、野村證券(6・74兆円)だった。
24年2月22日現在の国内時価総額上位10社はトヨタ自動車(57.45兆円)、三菱UFJ銀行(18.38兆円)、東京エレクトロン(17.25兆円)と以下、キーエンス、ソニー、NTT、ファーストリテイリング、三菱商事、ソフトバンク、信越化学工業(12.63兆円)だ。
80年代のバブルは金融機関主導で、それから一気に金融機関にとって冬の時代が到来する。そして、半導体やソフトウェアなどの企業が日本を牽引するも、全体としては入れ替わりがゆっくり進み、国内の経済代謝が進まなかったとも言える。国内のみの動きをみていると、ときに近視眼になりがちだ。そこで同時期の日本とドイツと米国を比較してみた。
89年の主な株価指数を0とした場合、日本(日経平均)は△50前後まで堕落して、ようやく0に戻ったのが今年だ。米国(米ダウ平均)やドイツ(独DAX)は30年で数百倍から千数倍の規模で伸びていることを知ると驚愕するだろう。ドイツは89年を0とした場合、2000年にかけて300後半まで成長、03年にかけて一旦低迷し0に近づくも、そこから右肩成長で現在は800くらいを示す。米国も同様で89年を0とした場合、30年間安定の右肩成長で現在は1500くらいなのだ。如何に日本が30年間低迷し続け、海外が普通に成長を遂げているのかがわかるだろう。
世界時価総額ランキングの値も、30年前は50位以内に日本企業(主に金融)が多数ランクインしていた。しかし、今は1社でトヨタが30番目くらいにようやく登場する。マイクロソフト、アップル、NVIDIA、アルファベット、アマゾン、メタ、テスラなど、30年前には存在しないITや半導体関連の企業が時価総額を高めているのだ。
GDPのランクも日本は米国に次ぐ2位のポジションが2000年頃より急成長を遂げる中国に抜かれ、独、インドなどに追い越されようとしている。更に一人あたりのGDPを見ると97年当時は3.5万ドル程度で4位のポジションだったが、19年現在で4万ドルと微増しているものの、他の国が経済発展を遂げているためポジションは19番目。コロナ後の23年の直近の統計では3.4万ドル程度で34番まで下がっているのだ。
既に日本は成熟国の中でもかなり経済的な発展を遂げれない国に成り下がっているのだ。現実を直視することが成長を遂げる第一歩だ。
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新規事業の旅109 ファイナンス関連の書籍
2024年5月8日
早嶋です。
新規事業は、事業アイデアを考えて、それらを事業プランに落とし、実際に行動に移す。そのためヒト、モノ、カネに関する知識や知見があったほうが良い。ここでは会計財務とした場合、会計ではなく財務に焦点を起き紹介する。
道具としてのファイナンス増補改訂版 石野雄一著
ファイアンスの基本として、価値を金銭で評価する際の考え方をわかりやすく解説。
コーポレートファイナンス戦略と実践 田中慎一・保田隆明共著
ベンチャー企業の価値算定からIR対応まで、広く浅くわかりやすく解説。
スタートアップ投資のセオリー 中村幸一郎著
スタートアップ投資に対しての考えを体系化して整理。
ベンチャーキャピタルの実務 グロービスキャピタルパートナーズ共著
VCの実務を広く体系的に整理。
起業のファイナンス 磯崎哲也著
ベンチャー企業のファイナンスの在り方、考え方、あるいはグランドデザインの大枠を提示
起業のエクイティ・ファイナンス 磯崎哲也著
エクイティファイナンスの勘所を分かりやすく解説
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新しいことに挑戦する時に必要な考えるポイント
2024年5月3日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今月のテーマは「新しいことに挑戦する時に必要な考えるポイント」です。この4月から新たな期が始まった企業も多いのではないでしょうか。「今期は前期比130%アップを目指す!」というような高い目標を掲げておられる企業もあるかもしれません。今まで通りでは到底達成できません、どのような戦略を立てればいいのでしょうか。今回は新しいことに挑戦し、業績拡大するために考えるべきポイントをご紹介いたします。
経営者は常に前年比アップを求めておられるのは当然ですね。企業が価値ある新しいことに挑戦していかなければ、変化の激しいこの時代に、相対的に衰退してしまうと絶えず危機感を感じておられるのではないでしょうか。
その一つの例として、前期比130%アップの売上目標を掲げるということです。自組織の将来を常に案ずる経営者がやっと安心できる数字が前期比130%アップと言われています。
前期比130%アップするためには、戦略を立てなければなりませんが、どのように考えればいいのでしょう。
2ステップで考えます。「業務改善フェーズ」と「新規事業フェーズ」です。
1つ目の「業務改善フェーズ」は既存事業についてです。既存事業を前期と同じようにやっていたのでは、とても130%アップは望めません。なぜならそのアップを創り出すリソース(ヒト・モノ・カネ)がありませんからね。
よって事業拡大のため、既存事業を7割のリソースでこなすことを目指します。つまり生産性の向上と徹底的なコストの見直しです。どうすれば少ないリソースで前期と同じ成果(売上や利益)を創り出すことができるか、考えなければなりません。
部門ごとに問題点の洗い出しやムダ・ムラ・ムリの解消、システムや仕組みの見直し、コストカットできるところはないか原材料からバリューチェーンの再点検など、やれることはたくさんあるはずです。
2つ目の「新規事業フェーズ」は、そのように創出した2割のリソース(ヒト・モノ・カネ)で新しいことに挑戦します。その新しいことで前期比130%アップを実現するわけです。
ここで問題は何をするかですね。その方向性を考えるひとつの見方として、「既存顧客か新規顧客か」という視点と、「既存商品か新規商品か」という視点の組合せです。アンゾフのマトリクスとして有名です。既存顧客に既存商品をさらに売る戦略は市場浸透・シェア拡大です。既存顧客に新規商品を売るなら商品開発という戦略です。新規顧客に既存商品を売るなら市場開拓という戦略です。新規顧客に新規商品を売るなら多角化戦略です。どの戦略をとるのが、自社にとって最も有利か考えましょう。自社の強みを活かすには?外部環境はどうなっているか?競合は?など考慮すべきことはたくさんあります。
このようにして、限られたリソースでも毎年、業務改善と新規事業を同時に行っていくことができれば、企業は成長しますし時代の変化にも対応できていることでしょう。
もちろん言うは易しで、そのためには経営者の力だけでなく管理職の力も必要ですし、それができる社員をそろえるために人材育成も絶えず行わなければなりません。
しかし新しいことに挑戦しなければ、生き残ることが難しい時代ともいえます。新しい期が始まるタイミングで考えてみられてはいかがでしょう。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
対人関係が苦手な方のリーダーシップ
2024年5月2日
安藤です。
職場におけるメンタルヘルスの悪化、抑うつの増加が近年問題となっています。昨今の新しいタイプの抑うつ症状の増加が目立っております。以前は、日本でのうつ病は、「メランコリー親和型うつといわれており、40代~50代が中心。自分に厳しく、几帳面で仕事熱心。他者に対しても「迷惑をかけては申し訳ないと」頑張ってしまう。一方で、新タイプ抑うつの特徴は、・プライベートでは元気で活動的だが、職場では元気が無い ・仕事を任せても自分勝手で・自分は悪くない・上司が悪いと他者への批判が多い ・自己愛が強くプライドが高い ・20 代~30 代と若い世代に多い」 といわれています。
他、抑うつ状態になりやすい方の特徴としては、他者からの評価を過度に気にしたり、他者からの評価に過度に反応したりする傾向や、自己の快の感情を他者や集団との関係よりも優先させて追求しようとする傾向があります。要は、思考・感情・行動が他者を優先にする傾向です。
対人苦手意識は、「特定の他者に対する否定的な感情と消極的な態度の総称」と定義されています。学校、企業での現場では、この傾向は顕著に増えているように感じています。眼を合わせるのが苦手、相手からどう思われているか心配、人が怖いという心理が働くなどです。
しかし、現実職場では、相手に対して “負の態度” をもっていてもその他者に接近する場面は多く、自身の感情をコントロールすることが求められます。
新タイプ抑うつ(呼称として新型うつといわれていました)を耳にするようになったのは、2012年頃です。現在の管理職社員をしている方の中にも対人過敏傾向、自己優先志向の方も存在すると考えられます。
そこで、そのような傾向のある方に対してのリーダーシップとして、適切なのは、サーバント・リーダーシップ(Greenleaf 1997)と考えられます。
サーバント・リーダーシップに求められる属性は、傾聴・共感・癒し・気づき・説得・概念化・先見力・奉仕・成長への関与・コミュニティーづくりです。従来型の先頭をきってリーダーシップを発揮するタイプではありません。
メンバーの自立性を引き出し、チーム内でのコラボレーションを活性化し、新たな発想を創造していく必要があり、そのためにはメンバーの成長を支援し、職務を円滑に遂行できるように支え奉仕する。というリーダシップの在り方です。
*参考までに
新型うつ病になる人の傾向は、①人格が未熟なので、自己中心的で無責任な行動をとる。また、自己愛が強いので失敗を嫌う。②自己愛が強いため、業務上の注意であってもプライドが強く傷着きやすい。③病気になった理由を周りの人間や職場のせい、自分を責めるような発言がない。④仕事にはいけないが、自分の好きなことは楽しめる。等が挙げられています。
新規事業の旅108 イノベーションとCVC
2024年4月26日
早嶋です。
イノベーションを実現するための手法は、R&D、M&A、提携・出資などがある。そもそもイノベーションとは、なんだろうか。
ポケベルがケータイになりスマフォになる。ケータイからスマフォの変化はイノベーションだと思う。従来のメセージのやり取りや通話に加えて、写真や動画を活用したコミュニケーション、24時間365日常にオンラインにほとんどの人がいるために、スマフォで様々な体験を共有することが可能になった。隙間時間には音楽や映像を楽しみ、仕事や買い物もスマフォがあれば簡潔でいる。スマフォは財布にもなり決済や商品の購買も簡潔させてしまう。スマフォによって完全に人間の、消費者の行動が変化したのだ。
そのスマフォだが、特質した1つの技術による成果ではなく、様々な技術やサービスが組み合わせられた結果できあがった産物とも言える。その意味でスマフォのイノベーションは、消費者の行動を変える機能を実装する技術開発やサービス提供と言ってよい。これは今後のイノベーションの開発に一定の示唆を与えてくれる。
イノベーションの大家、クリステンセンのイノベーションの議論では、1960年から1990年代までは実に連続的な技術開発が進展した。しかし2000年代にデジタル技術とネットワークの融合により急激にグローバル化が進展する。ここに異業種の技術融合なる取り組みが派生した結果、非連続的なイノベーションが誕生する。
技術のベースは国や企業が持つ基礎研究所からスタートし、そのシーズを製品にインストールして事業化していく。研究所から事業部へ技術移転された技術は、実際の市場からのフィードバックを受け磨きがかかる。1980年から90年代は、事業の多角化がブームになり要素技術はどんどん体系化され、プロダクトイノベーションが加速したのだ。2000年に急遽インターネットなどのIT技術が発達し、コミュニケーションコストの削減とデータ管理コストの削減がなされた。一方で、あらゆる記録をデータとして保持することに価値の源泉が移り、そのデータを駆使して価値を提供する企業が世界的にキャッシュを稼ぐようになる。
まさに連続的な技術開発に加えて、異業種の技術や融合を図り、製品に加えて、その製品を活用する前後のサービスの工夫など、最終的にはビジネスモデルを工夫した企業が競争優位に立つ世界ができあがってきたのだ。
これらを整理するとイノベーションは、継続的な技術開発に加えて、異業種の技術や製品、サービスを組み合わせることで、消費者の経済行動を変化する諸々の取組を指すと言ってもよい。この考えは、近年の学者の指摘の中で、早稲田大学ビジネススクールの入山准教授の話と合致する。イノベーションは知の探索と深化の両利きの経営の中で生じ、事業が新規に近ければ未知の知を探索し、既存の事業であれば知の深化を進めることになると入山准教授は述べている。
事業は、1つの知を継続的に探索することでキャッシュを得る。しかし継続的な取組は、いつしか破壊的なイノベーションによって駆逐される可能性がある。かといって、知の探索をおこなっても、すぐにキャッシュを稼ぐことができない。企業イノベーションを行うには、この2つを頭に入れてうまく管理するしかないのだ。
では、イノベーションに投資する方法は何があるだろうか。冒頭に書いた通り、R&D、M&A、提携・出資などに類型できる。
既存事業の短期的な時間軸で取り組む手法がM&Aだ。まさしく時間を買う目的で事業シナジーを獲得する。既存事業の長期的な取組は、新規事業の探索になるのだろうが、実際に企業を観察すると既存事業の延長で研究開発をしている企業が多い。R&Dと名前はつくが、既存事業の継続的なプロダクト・イノベーションを進める取組なのだ。
新規事業の短期的な時間軸で取り組む手法はイントレプレナーやJV(ジョイント・ベンチャー)がある。多くの企業を観察するとこのエリアは、企業の事業ポートフォリオのノンコア部分で取り組む事例が多い。飛び地の事業を開発する取組だ。
新規事業の中期的な時間軸での取組は、CVCが近年注目される。事業会社がスタートアップ企業に投資することだ。通常、スタートアップ企業は、常にオンリーワンの新しい事業を企てている。そのため事業会社からみてもCVCは新規事業に位置づけることができる。事業会社がCVCに与えるメリットは、キャッシュ以外に、革新的なアイデアと自社の固有の技術しかもたないスタートアップに、事業化を促進するための他の資源を提供できる可能性だ。
このように捉えると、知の探索と知の深化を同時に行える可能性としてCVCはドンピシャなのだ。
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新規事業の旅107 エクイティにおけるインセンティブ
2024年4月25日
早嶋です。
企業勤めのインセンティブの代表がボーナスだ。特徴は、一定の成果に対して事後的に金額がきまる。それも自分の上司が評価を決める。一方で、ベンチャー企業におけるストックオプションは、事前に付与された比率によって決まる。そして、その金額は実際の時価総額の上昇幅によって変化する。つまり完全に結果重視だ。
ストップオプションの評価は、従来の事業会社の評価と全く異なるメカニズムだ。上司の評価は全く関係ない。ストックオプションを持たない社員はただのりしても、評価を得られないのでそもそも存在しない。事業会社であれば、ボーナスの原資を一定、実際に仕事をしていない従業員にも分配しなければならず、フリーライドする人材が確実に一定数存在する。ボーナスの査定は常に上司に委ねる部分がある。そのため顔色を伺うことを確実に行ってしまう。属する部門の成績によって、ボーナスの原資配分が決まるので、他の事業部の取組などは全く忘れて、全社の限られた事業の限られた部分での成果を追い求めてします。ボーナスの評価は四半期の成績を積み上げるもので、長期思考には絶対なり得ない。
一方、ストックオプションは異なる。既存の事業と異なり、目先の利益ばかりを追求しない。評価は5年程度先の事業価値を上げることによってしか得られないからだ。短期的なキャッシュインのために動いても価値は向上しない。継続的な先を見据えた取り組みに必然とフォーカスされる。不安定なベンチャーの事業モデルは、場合によってどんどん変えていく必要がある。組織は暫定で、異なる組織であっても、長期的に全体最適で成果が出る仕組みを追求する。限られた部門の成果に見合う歩合を払うボーナスとは異なり、同じ成果でも長期的な活動にコミットさせるのがエクイティ連動の評価制度になるのだ。
言われなくても、上司が見ていようが見ていまいが関係なく行動する。既存の事業とは異なり、どの仕事が、どの程度影響するかは、誰もわからない。結果、数年経過しなければ正解は無いのだ。そのような状況で試行錯誤して動くには、ストックオプションは極めて合理的だと思う。
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新規事業の旅106 スタートアップと採用
2024年4月24日
早嶋です。
数名の企業が素晴らしいビジネスモデルを信じ事業を展開する。将来、100人、1000人の規模になるかもしれない企業のポテンシャルは、これから採用する人材で決まる確率も高い。一方、鶏と卵の関係で、今のキャッシュフローがネガティブな段階でポテンシャルだけ示されても、将来の従業員を引き付ける力は弱い。
スタートアップは、今金を払うことはできない。だからと言って低賃金で高給取り経験豊富な人材を獲得できる虫の良い話はない。当然、将来を拡張する可能性を持つ優秀な社員に対しては、相応のインセンティブが必要だ。そこにストックオプションが活用される。例え1%以下のストックオプションだとしても事業価値が1,000億になれば、その価値は数億にも相当する。
加えて、スタートアップの理念や、従業員が大企業で得られない体験ができたり、社会を変える挑戦に参画したりと、副次的な要素が集まれば、優秀な人材がやってくる可能性はある。お金ありきではないが、リスクしかないスタートアップには、やはり相応以上のリターンが大切だ。
そのために創業者や経営者は、事業の成長に対して、価値を作り出すことにコミットし、自分はいけると信じ続け行動する。この取組を10年単位で爆速できる胆力が絶対条件だと思う。そこに、今のメンバでなんとか問題を解決する感じではなく、適材適所で、適切なタイミングで、適切な人材を活用すること。そして規模を拡大して価値を創造する思想が大切だと思う。
数字や事業の中身も同様に大切だが、時期やフェーズに合わせた人材投入と組織構築は鍵だ。数名のメンバで1,000名規模の仕事をしたいのであれば、既に1000名規模でガンガン引っ張っている人材を登用する発想だ。今のメンバが頑張ったとて、現メンバの成長を期待しても、事業の成長はないし、人の成長は時間がかかる。既存の事業であれば、人材の成長を期待しながらでの登用は問題ないが、変化が激しい不確実な世界でその発想は、すなわち停滞を意味する。確実に人の成長は事業の成長より遅いのだ。
SaaSの仕組みを提供したいのであれば、既にSaaSの世界で活躍している人材を引っ張ってくるべきだ。法人営業を行うのであれば、法人の経験者を採用すべきだ。2Cの販促を拡張したいのであれば、試行錯誤するのも大切だが、その道のプロを責めてアドバイザーにつけるべきだ。起業メンバの学生とともに経験が浅いのに、プレゼンシートをちまちま作っても時間がいくらあっても足りない。あるべき姿を逆算したら、採用やメンバも、同様に逆算してメンツを決めていく。そのような発想は極めて大切だ。ベンチャーは現在の延長で議論しても無意味なのだ。※もちろん、一定のフェーズは自分たちで手や足を動かして汗をかくことは大切だ。ただPoCなどを終了して一気に展開するフェーズは思想を変えた方が良いのだ。
せっかく起業したのだ。常に自分が優秀である必要はない。自分よりも優れた仲間を集めマネジメントする。そのメンタルが大切だ。優秀な人材ではなく、使い勝手の良い、使いやすそうな人材を選んでも価値は創造できない。仮に問題を解決できても、将来に飛躍する起爆剤になra
る可能性は低い。
ベンチャーのトップの仕事は企業価値を高める取り組みだ。そのための戦略、そのための組織、それを達成するためのプロセス、そこに必要な資金。それらを示して投資家と議論しながら調達をし続ける。その取り組みができなければ、既に組織構築を経験した人材を採用して右腕につけるべきなのだ。
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