パートタイムは無いでしょう
2021年10月12日
早嶋です。
M&Aという言葉や概念は11年前、一般財団法人M&Aアドバイザー協会を設立してから随分と世の中に浸透していると思います。そして最近は、シリアルアントレプレナーをイメージし、売り手の立場として会社そのものを商品として売却する仕掛けを意図的に作っている経営者も増えています。これに関しては良いとか悪いとかはなく、その戦略なので間違っては無いと思います。
ただ、シリアルアントレプレナーを目指すのであれば、はじめの一件は是非フルコミットしてもらいたいところです。どんなに優れた事業モデルでも現時点で赤字で、かつ経営者がパートタイムで事業を行っているような取り組みは、どんなに御託を並べられても時価総額のイメージがピンと来ません。それは売り手の都合であり、買い手の意思を無視しています。
更に、そこに対してM&Aでバイアウトしたいのであれば尚更です。IPOはたしかに将来の可能性に対してある程度価値を評価するでしょう。しかし中小企業のM&Aにおいては、今の利益が重要で、過去からの取り組みで何をしたのかがなければ将来の推定もできません。ですので社歴が1年ポッチの会社で赤字であれば、仮に優れた仕組みを持っていたとしても、相当の経営者でなければ買収する気持ちにななれないと思います。
企業のベースは、その企業を起こす大義名分で、経営者は本気でその大義名分を達成する気持ちで行動し続けるものです。その結果、企業の収益がついてくる。それを志がなく、売却が目的ですよってな会社は、従業員にも、顧客にも、取引先にも申し訳ないと私は思います。あくまでも一部の特定のシリアルアントレプレナーを目指している方に向けてのメッセージで、他の経営者や成果を残しているシリアルアントレプレナーに対しては社会に価値を提供し続けているので立派だと思います。
囚われのない素直な心で聞く
2021年10月6日
原です。
ビジネスを取り巻く環境の変化が早く複雑な時代、顧客の声は、企業の問題解決やマーケティング活動が顧客重視の傾向になればなるほど、貴重な情報源ととらえられるようになってきました。
私の最近の経営相談でも、「顧客の声をもっと自社のビジネスに活用したいのですが、具体的にどのようにしたら良いでしょうか」という相談を受けることが増えてきました。
私は、これまでに多数の「顧客の声」を活用したマーケティング調査に取り組みました。そして、企業の製品開発・サービス開発や改良、自治体政策課題研究など多様な問題解決の解決策提案に役立てています。
調査結果から明らかに見えてきたことは、企業側が提供している商品やメッセージに対して、消費者が誤解しているケースがとても多いのです。
企業側が「知っていて当たり前」、「伝わって当然」と思っていることも、顧客は意外と分かっていないものです。
つまり、企業側と顧客側にギャップ(誤解という問題)があるのです。
ギャップが生じているなら、それを解決しなくてはいけません。そのためにはどうすれば良いでしょうか。
問題点は、「あるべき姿」と「現状」のギャップを分析することで発見できます。まずは、「現状を知る」ことから始めます。つまり、「顧客の現状を知ること」なのです。顧客は、何を意識しているのか、何に価値を感じているのか、企業側が商品や広告を通じて伝えたメッセージをどのように感じるのか。そのように意識し感じる理由はなぜなのか。これらの顧客の現状を知ることが、ビジネスの問題を解決するための第一歩となります。
顧客の現状を知るには、グループインタビューなどの顧客の声を聞くことが「素直な」方法です。
松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)創業者の松下幸之助氏は、次のように述べています。
「世間、大衆の声に、また部下の言葉に謙虚に耳を傾ける。それができるのが素直な心である。それを自分が正しいのだ、自分のほうが偉いのだということにとらわれると、人の言葉が耳に入らない。周知が集まらない。いきおい自分一人の小さな知恵だけで経営を行うようになってしまう。これまた失敗に結びつきやすい。素直な心になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさざるべきかということも分かってくる。なすべきを行い、なすべからざるを行わない真実の勇気もそこから湧いてくる。」(引用:「実践経営哲学」著者 松下幸之助)
私は、大学生の頃から松下幸之助氏の著書を何度も読み返しています。
インタビューで顧客の現状や実態を把握することは、問題を発見し、それを効果的に解決していくための土台となります。インタビューの重要性、有効性を認識し、机上で悩む前に「素直に顧客の声を聞く」姿勢がとても大切です。
職場に活かす心理学
2021年10月6日
安藤です。
仕事でのマネジメント・人間関係構築に活用できる心理学を2つ記載いたします。
1つは、「語用論」です。もともと語用論には、言葉とは用いる場面や発する人、受け取る相手によって意味合いが異なっているということを示しています。例えば、「できていないよね」という言葉一つとっても、ピリピリした上司―部下の関係で、上司が部下に向かって「できていないよね」と言えば、「できていない」という意味や能力を否定されているように捉えられるかもしれません。それに対して、親友から「できていない」といわれたとしたら、もっと「できていないところを指摘してくれている」という意味で捉えるかもしれません。同じ言葉でも“文脈” によって意味合いが違います。このような語用論的理解が、文脈の理解において重要視されます。文脈とは、物事を前後の状況(文脈)に合わせて臨機応変に認識することです。前後の文脈や置かれた状況によって、認識する意味が変化することを文脈(コンテキスト)効果と言います。 人間は感覚器官から情報を得ると、それまで蓄積した経験や知識をもとにそれがなんであるかを認識します。一般的な例からすると、文字の場合、線分や輪郭の組み合わせからパターンに当てはめて「何の文字か」を判断しています。別の見方をすると、語用論から少し外れるかもしれませんが、受け取る相手によって意味合いが異なるということは、互いの関係性も関係していると考えます。日頃からどのような関係を築いているのか、信頼関係があるのか、そんな観点からも捉え方が変わるのではないでしょうか。
2つ目は、ダブルバインド理論です。ダブルバインド理論(二十拘束理論)は、グレゴリー・ベイトソン(Bateson.G)らが、パロアルト・グループの研究での概念です。ダブルバインドは、あるメッセージ(言語的)と、それとは矛盾するメタメッセージ(非言語的)を同時に与えられることのよって、混乱する状況に置かれることを言います。
例えば、事務所で部下Aさんを上司が呼ぶ時に笑顔で呼ぶとします。そのAさんが、近づいてくると上司が不快な表情をしていたり、威圧的な態度になったりすることがあると部下Aさんは、自分がどのような態度をしたらよいのかわからなくなります。 ここで最も影響をうけるのが非言語コミュニケーションです。コミュニケーションには、「情報」と「情報に関する情報」の2つのレベルがあります。別の例でお話をすると、「あなたの話をきいているよ」といいながら、パソコンに視線を向けて、それをいじっている状態だったらどう思うでしょうか。「話を聞いている」という言語的情報と、「~ながら」でしか聞いていない」という非言語的情報の2つのレベルのコミュニケーションが同時に行われています。このように、非言語的コミュニケーションによって、人間関係における問題となることは少なくないのではないでしょうか。
*非言語コミュニケーションとは、他者とコミュニケーションを図る上で、表情や顔色、声のトーン、話す速度、身振り手振り、視線などのことです。また、服装や髪型、香りなども非言語コミュニケーションとして影響しているといわれています。
コロナ禍で在宅勤務が増えており、聞きたい事が直ぐに聞けない。そのために、業務が進まずに支障がでているなど、コミュニケーションの問題が多くなっているようです。そのようなことも含めて、コミュニケーションの問題・課題、他
人材育成・開発に関して、気軽に弊社にご相談くださいませ。
発情期の牛、働く人の幸せ
2021年10月5日
◇牛の発情期センサー
原田です。
15年くらい昔のことです、あるベンチャー企業の事業内容に衝撃を受けました。
その事業は、雌牛の発情期をセンサーで感知するというものです。これまで雌牛の発情期の判断はベテラン飼育員の目利きに任されていました。それがセンサーで測ることで、人に頼らず確実にわかるというものです。
雌牛は発情期になると、特有の落ち着きのない動きを取るようになります。発情期は一定のサイクル(20日くらい)でやってきます。一方で発情期は短く、適正な受精をするためには、早期発見が求められます。もし、受精に失敗すれば、なかなかの損失になります。しかし、雌牛にセンサーをつけることで、特有の動きを検知し、迅速に知らせてくれます。ベテラン飼育員の目利きに頼ることもなく、確実性も高いです。
そして、この技術は現在、業界では標準的な技術になっています。WEBを検索すると同じ製品を提供する企業がたくさんあって、私が読んだ冊子の企業がどうなったかはわかりません。確か宮崎の企業で、産官学連携の案件だったような記憶があります。多分この企業だと思います。
特許情報プラットフォームを検索すると、1998年には、「識別記号および雌牛発情期表示器」という特許が出願されています。ちなみにスウエーデンの人の発明のようです。上述の企業も1999年から「発情ピタリ」という製品を開発しているようなので、何か関係があるのかもしれません。
ちなみに現在は、似たような特許が、NECや富士通からも出願されています。なので「雌牛発情期センサー業界」は様々な企業の製品が入り乱れています。
◇働く人の幸せセンサー
そして、5年くらい前、同じような原理のセンサーに衝撃を受けました。それは働く人の「幸せ」を、センサーで図ろうというものです。
2015年日立グループの「イノベーティブR&Dレポート」に、「ウエアラブル技術による幸福感の計測」という小論文が掲載されました。
https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/2015/06_07/2015_06_07_13.pdf
内容は、人の「幸せ」をウエアラブルセンサーを使って定量化するというものです。詳しい説明は省きますが、研究チームは、人の身体運動に着目し、「1/Tの法則」を見いだしました。そして、人の「幸せ」と「1/T」のゆらぎに強い相関があるというのがこの小論文の結論です。
この「1/T」のゆらぎは、隠れた身体運動の特徴を捉えた指標であり、移動が多い営業職と、椅子に座る業務が中心の事務職のように職種による運動量の差には影響されないということです。
また、「幸せ」を単に居心地のよい安楽な状態と定義していません。自身のレベルに応じて、仕事をしている状態が幸せだということです。つまり仕事が簡単すぎて「退屈」という状態と、難しくて「不安」という状態の間に「幸せ」があるということです。
この小論文では、フロー理論のミハイ・チクセントミハイにも言及しています。チクセントミハイの著書「FLOW」を読んだ方には、この「幸せ」の定義の素晴らしさがわかると思います。
なお、この研究結果は、日立グループから社内ベンチャー「ハピネスプラット」として、事業化されました。アプリも無料でダウンロードできます。
事業化されて、表現がかなりマイルドになっています。個人情報の扱いがかなり厳しくなったことや、データをAIで解析することの倫理観など、今はいろいろうるさくなっているので、かなり気をつかっているなと思います。
それでもこの定量化された数値は、人の主観が入るアンケートや、専門家が行う複雑な組織サーベイなどよりも信憑性がもてると思います。これを導入する企業は増えていくと思います。
◇なんでも数値化される
近年はなんでも数値化される時代です。睡眠の質を測るスリープテックも普及してきました。体重計も、体脂肪率だけでなく、骨密度から、肉体年齢まで図れます。さらには臭いもセンサーで測れるようになりました。なんと手のひらの臭いでその人の気分がわかるということです。
しかし、数値化の多くは、そのまま解決につながりません。考えてみれば当たり前のことです。体重計を例にとります。おそらく日本人は、1週間に1回以上(多くの人は1日2回)は体重を測っていると思います。しかし、世間はダイエットのコンテンツで溢れています。みんな自分の体重をコントロールするのに必死です。体重を測って予想より軽ければ、うれしくなって、必要以上に食べます。もし予想よりも重ければ落ち込み、食事制限する。その繰り返しだと思います。
社員の「幸せ」を測っても、ネガティブシンキングの人たちが集まっていれば、私はなんて不幸なのだとか、ウチの組織はなんて幸せがないのだとか、余計に暗くなりそうです。性格が悪い人たちの集まった組織であれば、数値が低いのはあいつのせいだ、などとんだやぶ蛇になりそうです。
何事も数値化されても解決策がなければ、そしてその解決策を確実に実行できなければ、それを解釈、または言い訳するのは人間なのでまたひどい結果を招きます。
そもそも組織に明確なビジョンと目標があり、みんなで共有し、実行、フィードバックすれば「幸せ」になります。このことは大昔から変わっていません。
◇取捨選択が大事
今、世の中には、このシステムを導入すれば会社の業績が劇的に良くなるというような魅惑的な製品・サービスで溢れかえっています。営業DXとか、人事DXとか、財務DXとか、そういうセミナー、イベントもたくさん開かれています。
でも結局は、みんなと同じことをすれば、同質化競争に陥り、自社の製品・サービスがコモディティ化し、価格競争になります。そして最後は「気合」と「根性」が引っ張り出されます。いつものパターンです。
このような時代、大事なことは取捨選択、つまり必要なものを見極めることです。大小を問わず、すべての企業で強みの根源は、極めてアナログな要素です。人の熱意であり、組織の風土であり、理念です。
そのためには改めて、自社の内部分析とビジョンの共有、そしてテクノロジーの根本理解が必要です。両方とも、頭に汗をかくしかありません。粘り強く人を育てる必要があります。そして、現場で試行錯誤を繰り返すということです。人が働く「幸せ」はそこにあると思います。
『型』を作る手順について(後編)
2021年10月2日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今回は「『型』を作る手順について(後編)」というテーマでお届けします。
『型』というのは、自社の標準的な営業の進め方のことです。営業プロセスとも言います。
何をどのような順番で行えば目標を達成することができるのか、最も効果的な手順を標準とします。その標準的な営業の進め方『型』を営業チームの全員が身に付ければ、全体の生産性は必ず向上します。
さて、『型』を作る手順は4つに分かれます。メルマガではその手順を前編・後編に分けてお伝えします。今回は前回の➀➁に引き続き➂④についてです。
➀目的・テーマを決める
②プロセスとゴールを決める
③ステップを決める
④ポイントを決める
前回の振り返りをすこし
➀目的・テーマを決める
今から作る『型』がどのような営業活動のプロセスなのか?どのような状態になると最終ゴールか?をまず明確にすることです。
②プロセスとゴールを決める
普段の仕事の進め方を棚卸し、最も効果的にゴールに到達することができるであろう営業活動を選び、プロセス(何を、どのような順番で行うのか)を作り上げていきます。
さて、後編に入ります。
③ステップを決める
各プロセスが決まれば、そのプロセスで行う営業活動をさらに分解していきます。
例えば、アプローチというプロセスのステップを考えます。アプローチは初めてのお客様にお会いする場面です。
まず一通りのご挨拶、名刺交換を行った後、さて次に何をしますか?例えばこのようなステップを考えます。
➂‐1 今回お伺いした経緯をお話しする
➂‐2 自己紹介と自社会社案内をする
➂‐3 お客様との関係を作るためのトークをする(お互いのことを知る、お互いに興味を持つ、私に好感を持っていただく)
➂‐4 関係構築ができたと思える状態になれば、このプロセスのゴール
と、ここまでがアプローチのプロセスの各ステップです。(非常にシンプルな例ですが)
ここで気をつけないといけないことは、
1.最終ゴールに至るために効果的か(このステップを踏んでいけば、ゴールに到達するか)
2.具体的な行動であるか
④ポイントを決める
ステップが決まれば、各ステップでの行動の注意点や留意点をポイントとして特記します。
例えば、今回お伺いした経緯を話す時には、紹介でお会いするのなら『必ず紹介者の影響力を使うトークを話す』などです。
また第一印象が重要なので、『表情や声のトーンに気をつけ親しみやすい印象を与える』などです。
これだけは絶対に外してはいけないという行動やトークを明記します。大事なトークはトークスクリプトという台本を作り、暗記するまでロールプレイングすることをお薦めしています。
このように営業活動の最初から契約に至るまで、何をどんな順番で、どのようにすれば良いのか、ポイントも含め見える化することによって、誰でも最も効率の良い営業活動ができます。新人営業パーソンにとっては教科書になりますし、メンバーにとっては自分の営業のやり方を見直し、どのプロセスでつまづいていたのか、もっと成果を出すためにはどのスキルを磨かなければならないのか、ガイドになります。
言わば、自社の営業活動の勝利の方程式ですね。
実際に「型」を作成した会社では、営業成績が直後から半年で120%伸び、新卒の営業マンが「型」とそのロープレビデオを学習することによりデビュー初月に住宅営業でご契約をいただくことができました。
営業プロセス、顧客満足、人材育成、セールスコーチなどをお考えの経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
船頭多くして
2021年10月1日
早嶋です。
言葉は概念的なものであり、表もあれば裏もあります。昔の人は文字に残すことよりも、言葉以外の文脈や全体を持って意を解釈していた次期も日本にはありました。文明は文字が出来てからと解釈する学者さんもいますが、文字が全てを表すというものでも無いと思います。
諺に、「船頭多くして船山に上る」と「三人寄れば文殊の知恵」があります。1隻の船に何人もの船頭がいれば、船は山に上ってしまうようなおかしい方向に迷う様から指図する人ばかりが増えても物事がうまく進まないことを示します。後者は凡人でも3人集まると、思いがけない知恵が浮かんでくるというニュアンスです。
一連のみずほ銀行のことです。2月28日に、ATMの通帳が出てこない問題から9月30日のシステム障害で外為取引に遅れを生じるという問題まで、実に8回ものシステム障害を出しています。
そもそも2002年11月に大規模なシステム障害を起こし、2019年にシステムを刷新しています。その勘定系システムはMINORIと称され、全面稼働しました。しかしそれが端を発し、システム障害のオンパレードになっています。
過去を遡ると、金融業界ではバブル崩壊により国際競争力を得るための規模の拡大が必要不可欠とされ都市銀行の再編がはじまりました。2001年に旧三井銀行の流れをくむさくら銀行と住友銀行が合弁して三井住友銀行が発足。2002年には第一勧業銀行と日本興行銀行と富士銀行が合弁して、みずほ銀行が発足。2006年には東京三菱銀行とUHJ銀行が合併して、現在の三菱UFJ銀行、当時の三菱東京UFJ銀行が発足しています。こうして3大メガバンクができたのです。
しかしながら、船頭多くしての状態になっているのは、3つのメガバンクの中でみずほ銀行だけ。なぜ、他の2行は文殊の知恵になっているのでしょう。
それらは勘定系システムの統合の戦略に因果があると思います。大きな銀行が合併した場合、システム統合の方向性は2つに分かれます。1つは、全く新しい情報システムを構築して、ゼロベースにして、それぞれの銀行が既存システムから新システムに移行する方法です。そして。もうひとつは何処か1つの既存のシステムに他の銀行が移行するやり方です。
三菱UFJ銀行の場合は、旧三菱銀行のベンダーだった日本IBMのシステムに寄せられます。三井住友銀行の場合は、旧三井銀行のベンダーだったNECのシステムに寄せられます。そしてみずほは、旧みずほ銀行、第一勧業銀行のベンダーだった富士通のシステムに寄せられました。しかしMINORIは、2002年と2011年に大規模なシステム障害を発生させたため日本興業銀行のベンダーだった日立製作所、富士銀行のベンダーだった日本IBMが富士通とともに開発。そして、ぐちゃぐちゃな状況に更に(ここは推測)NTTデータが中に加わり4社のマルチベンダー体制での開発に至りました。
当然、それぞれのベンダーは日本、あるいは世界を代表するシステムインテグレーターで開発能力はピカイチでしょう。しかし、ここが仇となったのではないでしょうか。小さな案件の場合はマルチベンダーのメリットが出る可能性は高いでしょうが、大規模の案件になればなるほど、マルチベンダーになると意思疎通が悪くなり結果的にデメリットが全面にでたのです。
本来は、各システムのアルゴリズムは決まったルールに基づき、互いがコミュニケーションできる思想で設計しているはずです。しかし規模が大きくなりすぎて、見解の違いなどが生じました。統合のたびに小さなテストを繰り返してミスがでないようにするのが通常ですが、およそ期間が短いなか突貫が続く体制で、4社が入り混じり、その下請けもぐちゃぐちゃになり、結果的に必要な業務の漏れや手抜きなどが頻発した(ここも推測)のではないでしょうか。
大手の統合を見ているときも、ニュースでいいおじさんたちが握手をして写真を取っている状況を時々みます。しかし、あの光景は後追いをしても結果が出ているケースのほうが遥かに少ないのです。親分が2人以上集まれば、責任の所在が不明瞭になるのです。
9月30日、金融相の麻生さんは、「システム障害が月1回くらいのペース。利用者にとっては不便で、極めて迷惑な話」と指摘しています。金融庁は一連の障害の要因解明に向けたシステム全体やガバナンス(企業統治)の検査を続けています。それからインテグレーターをIBMに一本化することで、全体の解決を図ろうとしたさなか、今回のトラブル。実に問題の根深さが浮き彫りにされました。
5感のデジタル化の弊害
2021年9月30日
早嶋です。
21年9月初旬の日経の記事で、味やにおいの成分をデータに変換して再生する技術についての特集があった。明治大学の先生が電気信号を使い味を再現する技術だ。メーカーのキリンなども塩味を提言する技術として研究を進めている分野だ。
テレワークになり、リモート環境が当たり前になった場合、5感の内、目と耳はある程度カバーできる目処がついていますが、味と香りについても今後イノベーションが起きるのでしょうね。また触覚に関しては筋肉に刺激を与えるという方向性で進むと感じます。
さて、その味ですが、テレビやネットを見て、グルメの記事や情報を見た時に、試食などを自宅にいてもできるように工夫が近い将来実現すると思います。音楽や文章のシェアは、普段の生活に根付きましたが、味や香りのシェアなどもSNSやネットを介して自由にできるようになるのでしょうね。
ただ、その味はあくまでも何らかのセンサを通じて、今の所、電気信号に分解して行いますのでデジタル情報になります。香りの世界では、天然成分の香りと人工での香りで明らかに違和感を覚えるものが多いので、ますます『本物』の価値、『アナログ』の価値、『体験』の価値が高くなる技術だなと思います。
図鑑やネットで5感が共有できるようになった場合、『本の虫』的なデジタル人間が増えると、リアルの世界で、本物の体験をした時、リアルが偽物で、バーチャルが本物と感違いを起こす、逆転現象が生じるかもしれないですね。
激変する自動車業界をジョブ理論で整理
2021年9月24日
早嶋です。
激変する自動車業界についてジョブ理論を通じて整理しています。内容は自動車業界のMaaSにおける変化についてです。CASEのうち、従来、環境目的のE(電動化)と、従来、安全目的のA(自動化)が『コンニチハ』することで、『あれあれ?』となり、車業界に大きな変化をもたらすきっかけになりました。そして車がネットワークにC(接続)することで、結果的に、車を中心としたアリとあらゆるサービスを統合しよう!というMaaSが本格的にイメージできるような昨今になっています。
従来の車屋さんが車を売ること、つまりビックハイアで稼いでいた時代が終わり、車の購入後、或は、車の利用におけるリトルハイアにフォーカスする時代に大きく変わります。従来のメーカーは、自分たちを『製造する人たち』となずけている通り、顧客のIDや、顧客がどのように使用しているかには興味がありません。
ここに車が電子仕掛けになった瞬間、ネットワークにつなげた瞬間、自動化が出来るようになり、ウーバーやDiDiのようなスマフォベースに顧客IDを武器に分析整理活用する企業が一気に覇者になる時代がすぐそこまで見え隠れしています。
近い将来、車の所有は一部の金持ちか、趣味趣向の延長で、今の高級機械式時計のような位置づけになると思います。すると、従来、個人が車を買うことを前提に構築されたビジネスモデルや道路や駐車場の想定がガラリと変わります。個人の家やマンションに電気仕掛けの充電器を提供したい企業も、個人に損保を提供したい企業も、個人の洗車をせっせと行っている企業も、あっというまに自動運転車を沢山保有する企業や資本家とスマフォベースの会社が、従来の事業モデルをぶっ壊して、牛耳る可能性が出てくるかもしれません。
ただ、一般消費者の我々としては、よりMaaSの恩恵を被ることになり、豊かな社会を過ごせるようになると思います。
集合住宅の出口なし
2021年9月20日
早嶋です。
分譲住宅の建替。国土交通省によればH31年4月1日時点の調査で278件の事例しかありません。分譲住宅の検討が始まる築年数が30年頃からですので、そのポテンシャルは約200万戸。マンションに換算して1棟あたり50戸としても約4万棟分の可能性があるなか278件というのは誤差の範囲です。
一般的に言われる建替が困難な理由は、1)費用負担の話、2)建替の意思決定が難しい話、3)法的な問題があります。
1)費用負担の話として、建替負担の費用相場はおそよ1,800万円程度です。解体、建築、調査、手続き等の費用の総計です。従来、容積率いっぱいに再建築して余った戸数を販売あるいは賃貸するお金でキャッシュを賄える事例もありましたが、都市部のマンションなどでは容積率の緩和がなく難しいです。
2)建替までの意思決定と流れです。準備、検討、計画、実施という段階を踏むと推定されますが、スタートの壁はマンション管理組合の合意です。検討では専門の会社を入れて改修か建替かを再度調査しますが、やはりベースは区分所有者の意思決定です。計画段階では具体的な計画と費用を明らかにして区分所有者の4/5の賛成が必要です。そして実行という流れです。平均的に10年程度の期間を有するといわれます。
3)法的な問題は、既存不適格です。建築時は当時の法律でOKだった物件、それが今の法律には適合しないという建物です。1970年代、80年代は各種法整備が整う前の物件が多いのです。ここに1)の議論にあった容積率もあります。
最近、上記の取組を進めている不動産会社の方とお話をしました。そこは分譲ではなく集合型の賃貸なので住居者の合意を取ることで先に進む話でした。しかし、「住民とのコミュニティがなくなると生きていけない」、「立地条件が変わると生活ができない」ということで、まるごと新たな引越し先などが見つかって、そのリッチがピシャリ同じような条件ではないと難しい。という思惑が見えてきたのです。
そもそも論ですが、分譲も賃貸も両方引っくるめて、住宅を建築して引き渡すことで目的を果たしてきた会社が圧倒的に当時から多かったのですね。購入する人も、30年先のコトを考えるわけもなく住み続けた。あっという間に30年という期間が来て、事前に予測できたトラブルに巻き込まれている。というわけです。
住宅の提供は、生活者に対して快適に生活を提供「しつづける」とした場合、60年位のスパンで見ないといけないのだなと思います。ただ、提供側はそこまで長いスパンで見ることはできないですよね。ということで、この手の問題は国が介入するか、高いお金を払える住宅を持てる人でない限り難航することが予測できます。
ジョブ理論で言うところのビックハイアに提供者も利用者もフォーカスしすぎているということでしょうね。
飲まない人の選択肢
2021年9月14日
早嶋です。
covit-19により、オンライン化が進み、企業の重い腰を上げた効果は否めない。きっかけはイケてないが今後の未来を変えてくれた。そして、ノンアルコールの市場開発もしかりだ。
従来、飲食店に行き、特に出張中に一人で入った時に、まずはアルコールを決めなけれならない雰囲気がたまらなく嫌だった。別に飲みたくないけど、そこの料理は食べたい。でもなんとなく、「おいドリンクたのめよー」という無言の視線が痛かった。かと言ってノンアルコールにはコーラやオレンジジュースのたぐいしかなく、「料理には合わないよね、しかもこの単価とるのにこのラインナップ?」と甚だ疑問だったので「取り敢えず生」ではなく「仕方がなく生小」というのが定番だった。
ここ1年半で世界が変わりつつある。実質アルコールが禁止されているような状態なので、ノンアルコールの開発が進み始めたのだ。そう、飲まない人にとってはある意味朗報なのだ。
そもそもノンアルコールの市場ってどの程度だろう。サントリーが調べている調査によると日本のノンアルコールビール市場は年々需要が増加しており直近2020年は約7億本(350ml/本)とのこと。アサヒ飲料のファクトブックでもビール市場そのものは減少しており2020年は推定で57億本。酒税の影響やアルコールの種類が増えた事、食のバラエティが進んでいることなどが背景だろうが、飲まない選択肢を尊重する動きも、ようやく現象として見えてきたということだろう。
2010年と比較した場合、従来50人に1人程度の割合でビールとノンアルコールビールの割合だったのが、2020人には20人に1人がノンアルコールのビールになっているという換算になる。5%を馬鹿にするか、5%もあるの?とそこにニッチをつくかで、ニッチと捉えずに、一つのカテゴリだと考えた企業が出始めたのだ。
そしてcovit-19。アルコールを出せないと飲食店の利益が出ない。もっというと自分たちが儲からない。そういう背景も重なりコロナとともにノンアルコールが台頭していくきっかけを後押ししたと言っても過言では無いでしょう(正直言えば、アルコールに頼る飲食ってどうなのよ?と心では思うのだが、それは内緒にしておこう)。
上記数値を鑑みると日本のノンアルコール市場はまだまだ1,800億円程度ですが、従来のソフトドリンクと違って、お酒の代替なので1杯300円ではなく、500円から場合によっては1,000円をとっても問題ないカテゴリなのだから、「もっと企業は努力しても良いのにな?」というカテゴリなのです。
例えばフレンチを食べて、ぶどうジュースと言われたら500円でしょうが、ノンアルコールワインと言われたら1,000円払っても良い気分になるマジックなのです。であれば、真面目にノンアルコールと食事のマリアージュを考えても良いものの、企業は高いノンアルコールをまだ出す程度。と言っても、選択肢がコーラか、ジュースか、という店舗よりはまだまだマシだけど、このような飲まないでも美味しくご飯を提供してくれる店舗が今後増えてくるだろうことは嬉しいことだ。
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