新記事業の旅 その28 動画サブスクの落とし穴と処方箋
2022年12月6日
早嶋です。
企業の悩みの一つに、「成熟したポートフォリオをどう組み立て直すか?」がある。皆既存の事業運営コストを下げ利益体制にし、新規事業に夢を求めて躍起になる。既存と新規の両利きの経営には、社員教育は不可欠で、今まで以上に重要性が増す。そこにコロナの影響もあり、対面研修が激減し、変わりに動画やオンラインを活用した取組が急速に普及する中、危険な側面を観察できる。
例えば、動画のサブスクを社員全員に提供することで、教育を代替する取組だ。自社で作成した動画や監修した動画であれば一定の意味はあると思うが、サードパーティが汎用的に作成した動画を全社員が見れるようにIDを配布して教育を置き換えてしまう行為は大いに疑問を感じる。人事としては「公平性の観点から全員に動画のIDを渡して好きな動画を見て成長してほしい」というメッセージを出すが、余り意味が無いと思う。放題にした場合、ほとんどの確率で見る必要が無い人はどんどん見て、見る必要がある人程視聴しないのだ。
この事実に気がつくと、企業の対応が本末転倒になる。せっかく契約したからには社員に動画を見てもらわないと困る。ということで、視聴履歴を管理しはじめるのだ。するとやはり見てほしい社員ほど見ていないことが検証される。それでも契約期間がまだ残っているし、すでに投資した金額をサンクコストと捉えることは難しく、回収しなければならないと思ってしまう。そして半ば強制的に動画を見せさせる行動にはしる。すでに見ている人も、「履歴管理を初めたら再び見なさい」などと、意味不明な管理だ。
面倒だと感じる社員の中には、動画をすっ飛ばして倍速や3倍速、あるいは一気に早送りして1時間の動画を5分で見たことにして、視聴履歴を作る社員も続出する。そこで人事は、視聴した動画に確認テストを取り入れ、確認テストに合格しないと視聴を認めないなど、イタチごっこが始まるのだ。
本来、社員教育は、社員の自主性に任せるべきではない。そのため、社員のキャリアビジョンと自社の戦略の方向性を紐付け、各々の社員に必要な能力やスキルレベルを示しつつ、当人に不足する能力や概念を教育しなければならない。その場合、階層教育のように一定レベルの底上げをする教育以外は、個々人によってカスタマイズしなければ学びの意味は薄い。それらを放棄して、「動画を見て学習してね!」は潔さは感じるが、一方で怠慢感もたっぷりだ。
サブスク見放題であれば、「あなたは今、●●の問題を抱えている。だったら、△△の動画を見て、それをベースに再挑戦することで見通しが明るくなるよ」というように、本人の状況に応じて、タイミングよく動画やコンテンツを案内することができれば、動画サブスクも活用できるだろう。多くの社員は、動画が200シリーズとか300シリーズ用意されていても、どれを見れば良いのか検討もつかないし、強制的に見なければならないという動機のもとに視聴しても、入ってくる情報も蓄積されない。社員は自分のスキルレベルを把握しているわけではないし、自分に取っての不足が想像つかないのが当たり前の状態になっている。
サブスク動画を有効的に活用するのであれば、社員の能力レベルを仕組みで把握して、不足する情報を適切なタイミングで社員に案内する工夫など、コンテンツの提案がすごく大切になる。逆に、そのような提案が適切に行われるようになると、社員が自発的に学びはじめるので、動画でのインプットはかなり有益になるだろう。
また、放題の動画の中から人事や管理者が選定して、事前にインプットさせ、その内容を参考に、業務についてブレストさせるとか、何らかのお題を与えてワークさせるなど、視聴で終わるのでは無く、そのコンテンツを活用したアウトプットを組み合わせることも非常に重要だ。これらができれば動画のID投資も瞬殺で回収することになるだろう。
新規事業の旅(その29) 売り手のトラブルは売り手の無知から
新規事業の旅(その28) 動画サブスクの落とし穴と処方箋
新規事業の旅(その27) 仲介会社のビジネスモデルと買い手の事情
新規事業の旅(その26) M&Aの勘所を押さえる
新規事業の旅(その25) キャズムを超えるまでのKPI
新規事業の旅(その24) 敵のコトを知りつくそう
新規事業の旅(その23) 道具の使い方
新規事業の旅(その22) 売ってから始まる事業
新規事業の旅(その21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(その20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(その19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(その18) アンゾフ再び
新規事業の旅(その17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(その16) キャズムを超える
新規事業の旅(その15) 偶然と必然
新規事業の旅(その14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(その13) ポジションに考える
新規事業の旅(その12) 山の登り方
新規事業の旅(その11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(その10) NBとPB
新規事業の旅(その9) 採用
新規事業の旅(その8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(その7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(その6) 若手の教育
新規事業の旅(その5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(その4) M&Aの成功
新規事業の旅(その3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(その2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(その1) 旅のはじまり
【動画】2022年度「リーダー研修」
2022年12月1日
本ページは、西日本プラント工業の2022年度「リーダー研修」参加者向けのページです。
エネルギー業界の大変革が進む中、職場のリーダーが変革を促すことが不可欠です。研修は、指導職2級1年目を対象に、経営に対する当事者意識を養成、御社の将来形成のために職場で何を変革するか、そのための行動は何かを考えます。
当日の研修参加までに、以下の動画を視聴ください。PWは別途事務局からの指示に従って下さい。
マネジメントの基礎 不確実への対応(約30分)
なお、本動画はマネジメントの基礎(全6本)シリーズの抜粋です。不確実な世の中へ、リーダーとしてどう対応するかのヒントとして視聴ください。
人生100年時代の社会人基礎力
2022年12月1日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今回のテーマは「人生100年時代の社会人基礎力」です。経済産業省の資料を基に社会人基礎力について説明し、人生100年時代に求められる能力を3つの能力・12の能力要素に分けて解説します。
まず「社会人基礎力」について説明しましょう。(参照:https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
社会人基礎力とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。その後「人生100年時代」を踏まえ、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました(2018年)。
経済産業省の説明資料では、社会人基礎力をパソコンの【OS】に例えています。つまり社会人としての基盤能力である「社会人基礎力」を身に付けた上で、その【OS】上に【アプリ】としての「業界スキル」や「社内スキル」など業界特性に応じた能力を活用すべきとしています。人生100年時代の働き手は【アプリ】と【OS】を常にアップデートし続けることが求められます。
必要とされる社会人基礎力は「3つの能力と12の能力要素」で構成されています。
能力➀前に踏み出す力(アクション):「一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力」
能力要素は「主体性」、「働きかけ力」、「実行力」です。「指示待ちにならず、一人称で物事を捉え、自ら行動できるようになることが求められている」と解説されています。
変化の激しい時代に、前例踏襲では解決しないことがますます多くなります。その時に失敗を恐れず、果敢にチャレンジする姿勢が求められます。さらに周りを巻き込んで目標達成するリーダーシップも必要です。
能力➁考え抜く力(シンキング):「疑問を持ち、考え抜く力」
能力要素は「課題発見力」、「計画力」、「想像力」です。「論理的に答えを出すこと以上に、自ら課題提起し、解決のためのシナリオを描く、自律的な思考力が求められている」と解説されています。
物事を筋道立てて考える論理的思考(ロジカルシンキング)能力が必要です。ムダなことをやっているヒマはないということでしょう。周囲の協力を得るためにも納得感のある解決策や計画は必須です。
能力③チームで働く力(Teamwork):「多様な人々とともに、目標に向けて協力する力」
能力要素は「発信力」、「傾聴力」、「柔軟性」、「状況把握力」、「規律性」、「ストレスコントロール力」です。「グループ内の協調性だけに留まらす、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力が求められている」と解説されています。
価値観が多様化し、色々な考え方の人が協働する時代です。自分と考え方が違う人ともコミュニケーションをしつつ、一緒に成果を作り上げていかなければなりません。個を活かしながら、ルールを順守するコミュニティの一員として活躍するイメージです。
このように人生100年時代では、企業や社会との長い関りの中で活躍し続けるために3つの能力・12の能力要素が基礎力になります。
そして、3つの視点「どう活躍するのか(目的)」、「どのように学ぶか(統合)」、「何を学ぶのか(学び)」のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置付けられています。
これからは自らの人生を自分で設計する、まさにライフデザインが重要であるということでしょう。逆の言い方をすれば、長い人生を自分らしく生きるためには3つの能力・12の能力要素が必要ですよということにもなりますね。
次回は社会人基礎力をリカレント教育の視点から読み解いていきます。個人の成長と企業の成長のすり合わせです。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
【動画】2022年武者修行課長版
2022年11月21日
※本ページは、2022年度武者修行研修課長版参加者向けのページです。
(セッション3)
課長版武者修行研修の参加者は、必要に応じて以下の補足動画を視聴下さい。次回のプレゼンテーションの参考動画です。プレゼンテーションの流れや準備、コンテンツ(中身)の作り方や、発表(配信)の仕方を整理しています。プレゼンテーションに不慣れな方は参照ください。
プレゼンテーションの基礎①概説
プレゼンテーションの基礎②流れ
プレゼンテーションの基礎③準備
プレゼンテーションの基礎④中身
プレゼンテーションの基礎⑤配信
(セッション2)
セッション2参加当日までに、以下の事前課題を整理、動画を視聴下さい。
1)事後課題
・テーマオーナーの取り組みに必要な資料や情報を適宜収集して下さい。
・当日の質問内容の整理して下さい。
・セッション1の議論を参考に、再度自社の課題を深堀りして整理して下さい。
・課題解決のために長期的な取り組みと短期的な取り組みを考察して下さい。
・短期的な取組に対しては何らかのアクションを行って下さい。
2)動画視聴
デザイン思考の基礎(観察) 約26分
テーマオーナーに対して何らかの提言をする際の調査の参考として視聴下さい。
論理思考の基礎(仮説)約16分
テーマオーナーに対しての議論を行う際の考え方のヒントとして視聴下さい。
規模の推定 約54分
市場規模や売上等、定性的な情報から定量的な情報を推定する際のヒントとして視聴下さい。
※以下の動画は問題解決の考え方の補足として視聴下さい。任意です。
セッション1のインプットで問題解決の基本的な考え方をベースに事業の分析について理解を深めて頂きました。こちらの動画は問題解決の基本的な考え方の概説をしています。
論理思考の基礎(問題解決思考) 約10分
(セッション1)
セッション1参加当日までに、以下の事前課題を整理、動画を視聴下さい。
1)「自己紹介シート」の作成
参加者同士の理解を深める目的です。各自自己紹介シートを作成下さい。テンプレートは各社事務局の指示に従って下さい。
2)事前課題「動画視聴」 戦略思考の基礎
自社や他社の課題を抽出する際に参考下さい。経営学等の修士・学位等をお持ちの方は視聴しなくても結構です。
※PWは別途事務局からお知らせがあります。
戦略思考の基礎 戦略思考編
戦略思考の基礎 全社戦略編
戦略思考の基礎 成長戦略編
戦略思考の基礎 基本戦略編
戦略思考の基礎 環境分析編
戦略思考の基礎 戦略立案編
3)「自社紹介と自社の経営課題の整理」 ※各社ごとでまとめる
詳細は、受講ガイドを参考下さい。
新規事業の旅 その27 仲介会社のビジネスモデルと買い手の事情
2022年11月16日
早嶋です。
M&A仲介を行う上場企業給の与レベルは1,500万円前後で、高い企業は2,000万円を超える。「そんなに?」と思うだろうが、事業モデルとして粗利を稼ぐ力が高いのだ。
昨今のM&Aの背景は、買い手企業が成長戦略を掲げるも、自社のポートフォリオ(事業の組合せ)を思うように変えることが出来ない背景があると思う。既存事業から得られるキャッシュを投資に回し、新たな成長事業を立ち上げる手法は3つある。自社のみで自力で立ち上げる(ゼロイチ)、業務提携やマイノリティ出資などの活用、そしてM&Aだ。事業経験豊富な企業は、3つをバランス良く、目的や事業領域、成長ステージにより使い分ける。経験少ない企業はゼロイチから初めて徐々に資本政策を考えるようになる。その最初の一歩はM&Aに向かう傾向が強い。結果、昨今は買い手の需要が異様に高い状況が続く。
本来、買い手企業はM&Aかゼロイチかの議論よりも、事業ポートフォリオをどうするかの議論が先決だ。しかし、成長のみがフォーカスされ、どの事業領域に資源を投下すべきかの議論はあまりされない。ここにも仲介会社の収益が高くなる理由がある。後で解説する。
M&A仲介のビジネスモデルを考える。仲介は、売り手と買い手の両方の立場に寄り添い、案件探し、マッチング、交渉、価値算定、DDの助言、契約関連、クロージングとM&A取引を円滑に進める役割を担う。当然、仲介事業として成立する条件は、買い手を集めるより、優良な売り案件を獲得することが重要だ。現時点で優良な売り案件を直接グリップすることができれば、初期時点では買い手候補が10社から15社程度は興味を示すのだ。
さらに仲介手数料は、売却金額に応じて高くなる。仲介企業として収益を獲得することのみを考えると、売り手にマッチした企業よりも、高く買収する買い手とマッチングさせることが高い利益を獲得することになる。そのため優良な案件をグリップした後は、高く買収する相手を選定し、買い手に魅力的に提案する力も肝になる。同様に、本来はM&Aをいきなり行うよりも、マイノリティ出資出資など別の選択肢が良い場合もあるが、そのような提案は自分たちの収益を下げることになるので、あくまで支配権を伴うM&Aが全てのように振る舞う。これもビジネスモデルを考えると当然だ。
これまでの議論を整理する。仲介会社が高収益を得られる理由は、買い手企業がM&Aを欲し、しかも自分たちで案件を探すノウハウが乏しいことだ。また、買い手は自社の戦略が不明瞭なのに成長欲求は高い。対して仲介会社は買い手に魅力的な提案をする力もある。総じて、売り手をグリップする能力と買い手に提案する能力が極めて高い、つまり営業力が超強力なのだ。
国内のM&Aの市場規模は年間に4,000件程度で、半数以上は支配権を伴わないM&A、つまりマイノリティ出資だ。一般的に想定する支配権を異動を伴うM&Aの件数は年間に2,000件程度。上場企業が3500社程度で、大手企業がざっくり1万社あると考えても、5社に1社程度しか支配権の異動を伴うM&Aがされていない算段になる。簡単に言うと、買い手が求める売り案件が圧倒的に少ないことがわかる。
買い手企業は、自社で優良な売り案件を探すも、良い案件にたどり着けない。そもそもM&Aやファイナンスに長けた人材は企業にとってマイノリティでメインディッシュの人材ではない。また、M&A担当者は日々金融機関や証券会社から買いの提案を受けるも、自分たちの想定する案件が少ないと感じる。しかし、買い手の担当者としてもM&Aを実施しなければ、自分の評価も下がる可能性があり、戦略を度外視したM&Aを実行してしまう気持ちに陥る。普通の社員の殆どは、資本政策やM&Aは特別なもので、内容の理解や興味がそもそもない。会社の投資の仕方に誰もメスを入れる仲間もいない。そんな時に、上場M&A仲介は、売り案件の獲得営業力と買い手に寄り添った提案ができるため、当初、買い手企業に明確な戦略が無くても、提案を受ける内に担当者はその気になってM&Aに進むことも考えられる。ここは筆者の推測だが。
ただ冷静に考えると買い手の立場からすると明らかにおかしいのだ。その際、M&A仲介のビジネスモデルも思い出してほしい。資本や資産の動きが大きい案件がより仲介会社にとっても実入りの良い話になる。仲介会社は買い手に高く買ってもらった方が都合が良い。仲介会社も上場したからには、常に自社の売上と利益ノルマを満たさなければ株価が下がり、他社に買収されたり、役員であれば飛ばされる。決して仲介が悪いわけでもない。
M&Aの市場に競争がなければ、売り手の価格は合理的な価格(1)に陥る。例えば、合理的な算定根拠が同じだとする。そして売り手も買い手も同じ情報を持っているとする。その場合は、双方とも一定の価格帯に収束するはずだ。しかし、売り手が優位な条件では、つまり買い手が複数社以上いる場合は、売り手は売却金額を更に高く(2)するし当然のことだ。買い手も競争に勝つためならば、当然それを上回る金額(3)で交渉を進めないと取得できない。実際は売り手と買い手は完全に情報は一致せず常に買い手が情報不足の状況になる。算定方法も一定の主観が入るため実際は更に複雑になる。
本来買い手は、売り手が乗せた金額(2)と競争により高くなった金額分(3)については、買収した時点では払いすぎたことになる。しかし、それでもM&Aをする理由は、買収により、買い手の中で発生するシナジーがその金額よりも高くなると算定しているからだ。しかし、そもそも多くの買い手が緻密にシナジーや事業ポートフォリオの向かう先に対して戦略を立てているケースが少なく、そのような議論も行われている可能性が少ない。なんとなくM&Aをして、無理した状況でお買い物を続けるる場合もあるのだ。当然に、買い手にとってM&Aはスタートに過ぎない。その後の経営は買い手が経営陣を調達して、あるいは自社から社員を送り込み、シナジーをしっかりと生み出し、買収した金額の投資をする必要がある。が、同業種ではない限りなかなか経営を上手く行うこともできない。買い手の戦略が乏しければ、どう考えてもM&Aをするたびに逆に苦しくなっていくのだ。
理想は、買い手自身が自力で案件を探し、失敗しながらもノウハウを組織に蓄積する。案件を探す以前に自社の事業ポートフォリオの方向性や全社戦略をしっかりと握る。その戦略実現を前提に、自社に不足する資源やノウハウや時間を整理しながらM&Aや出資や提携やゼロイチなどの複合的な手法を視野に入れて取組むのが正解だ。
当然、その業務の全てを完璧に行うことはできないだろう。交渉やアプローチが難しい組織に対しては第三者の機関をピンポイントで活用する。その際も決して丸投げしないことだ。
目的がM&Aでなく、事業を創造することや、自社の事業の不足を補う成長であれば、業務提携や業務資本提携の話を持ちかけるのも自然だ。一緒に事業を行う中で互いに強力するのだ。この場合はM&Aの交渉ではなく営業の延長になる。アプローチは劇的にやりやすくなる。仲介業者が提携や資本提携を買い手に提案しない。資本や資産の異動金額が目減りし、受け取る対価が小さくなるからだ。ビジネスモデルを考えるとM&A以外を一緒に行うパートナーでは無い。
業務提携や業務資本提携であれば、その先の事業に応じて第三者割当増資等を行い、進める事業に必要な資金を出資企業が追加するなど自然な形でM&Aに向かう場合もある。更に、短期間でかつ競争相手がいる中で進めるDD(買収前調査)では、実際その企業の中身は分からない。M&Aをする前に、対象企業と一緒に何らかのプロジェクトや業務をスタートすることで、じっくりとその会社の特徴や文化がわかるのだ。当然、その先に進む必要が無いと判断すれば、追加投資をしなければ良い。無駄な投資も減らすことができる。
上記を当たり前だと思わない最大の理由は、買い手の担当者や経営陣が資本政策やM&Aの流れや全体の手法に対して経験や知識が乏しいことにあると思う。
新規事業の旅(その28) 動画サブスクの落とし穴と処方箋
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新規事業の旅(その26) M&Aの勘所を押さえる
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新規事業の旅その26 M&Aの勘所を押さえる
2022年11月8日
早嶋です。
JMAA、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会を2010年8月から仲間と立ち上げ運営している。中小企業のM&Aを行うアドバイザーの認知と育成、M&Aの認知と普及が目的だ。講座やセミナーでのターゲットは中小企業のM&Aに関与する方々だったが、ここ数年、大企業でM&A業務を担う方々の参加が増加している。Webで様々な教育機関を探しても見つからなかった、内容がフィットしないとの理由からだ。
考えてみると、企業においてファイナンスの担当やM&Aを積極的に業務として行う担当は1,000人以上の従業員規模でも数名いたら良いほうだ。そのため企業内での教育設置は難しくコストも合わなければ、そもそもノウハウも無い。企業内でOJTで教育しても断片的な知識と経験しか得られない。そしてとても時間がかるのだ。しかし、社外機関を探しても、M&Aのピンポイントの話を深ぼる講座は多数見つかるが、体系的な流れや考え方を整理する講座はJMAAの講座しかないのだ。その部分が評価されている。大企業のM&A担当者が全ての実務を行うことは無い。一方で、様々な役割の人間をまとめ、企業の戦略を満たすためには、個別の業務の流れや勘所を押さえておくことは重要なのだ。
他社が行っている教育は、買収前調査のDDに関して、有名弁護士事務所の有名先生がディープに話をする。有名監査法人の有名先生が企業価値算定の話をマニアックにする。等々、講師陣は超豪華メンバなのだが、全体の筋や流れが見えにくい。結局、自社でM&Aの部隊を立ち上げる際に何から初めたらよいのか、自分たちの手法や取り組み方は間違っていないのか、などの確認ができずに悶々としているのだ。ということでJMAAの講座のポジションは「体系的な流れが把握できる」になった。お役に立てて嬉しい限りだ。
アドバイザーの役割は全体の流れを把握して、勘所を押さえる。そして適宜、専門家をアサインして一緒にM&Aを実現する支援をすることだ。企業のM&A担当者も同様で、全ての業務を自分たちで行うことはない。かと言って、専門家に丸投げというわけにもいかない。あくまでも流れは抑えて置きながら、どのようなタイミングで、どのようなオプションがあり、誰にどのように依頼をすることで全体のコストを抑えつつ、リスクを一定程度抑え込み、目的を達成できるかを考えることが大切なのだ。その意味で、大企業のM&A担当者にとってアドバイザー向けの養成講座はフィットしているのだ。
新規事業の旅(その26) M&Aの勘所を押さえる
新規事業の旅(その25) キャズムを超えるまでのKPI
新規事業の旅(その24) 敵のコトを知りつくそう
新規事業の旅(その23) 道具の使い方
新規事業の旅(その22) 売ってから始まる事業
新規事業の旅(その21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(その20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(その19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(その18) アンゾフ再び
新規事業の旅(その17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(その16) キャズムを超える
新規事業の旅(その15) 偶然と必然
新規事業の旅(その14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(その13) ポジションに考える
新規事業の旅(その12) 山の登り方
新規事業の旅(その11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(その10) NBとPB
新規事業の旅(その9) 採用
新規事業の旅(その8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(その7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(その6) 若手の教育
新規事業の旅(その5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(その4) M&Aの成功
新規事業の旅(その3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(その2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(その1) 旅のはじまり
【動画】2022年度 MOT研修
2022年11月7日
※本ページは、九州電力・総合技術研究所様向けのページです。
【インプット編】
12月6日のMOT研修・インプット編に参加される方は、以下の動画を必要に応じて視聴下さい。
法人マーケティングの基礎 特徴
28分の動画です。組織に対して価値を提供する活動(法人マーケティング)の基本的な考え方を整理しています。組織で意思決定する意味、法人に提供する価値などを理解する目的で視聴下さい。
DXの基礎 顧客体験価値
顧客に対しての価値を理解するための補足です。動画は1時間以上あります。今回は、18分40秒の顧客体験価値の説明が終わるところまでを視聴下さい。
インプット編では、動画の内容に関連するインプットをワークを行います。普段、マーケティングや顧客の価値について議論をする機会が無い方は、事前に視聴ください。
【アウトプット編】
10月5日のMOT研修・アウトプット編に参加される方は、以下の動画を見て、プレゼンテーション資料の準備の上、ご参加ください。プレゼン時間は各自8分です。
1)事前課題
アウトプット研修は、自身の研究テーマを8分間プレゼンして頂きます。資料をつくる際に、まず課題に対しての動画を視聴下さい。YouTubeの限定公開リンクに動画を掲載しています。約4分です。
2)動画視聴
事前課題に対しての動画でも触れていましたが、プレゼンテーションに対してのインプット動画は以下から視聴が可能です。必要に応じて、適宜視聴下さい。パスワードは別途事務局から指示を受けて下さい。
プレゼンの基礎 概説
プレゼンの基礎 流れ
プレゼンの基礎 準備
プレゼンの基礎 コンテンツ
プレゼンの基礎 デリバリ
3)プレゼン資料
当日、8分間の資料を各自準備ください。会議室にプロジェクターを準備しています。各々投影した上で、8分間のプレゼンテーションを行って頂きます。
交渉術としての営業プロセス
2022年11月4日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今回のテーマは「交渉術としての営業プロセス」です。社内外を問わず、win-winの関係構築をすることがビジネスパーソンにとって必要であることは皆が認めることですが、実際は出来ていないようです。
そこで交渉という抽象的な概念を、営業のプロセス特に質問話法に則って具体的に解説します。顧客との関係はもとより、社内の人間関係に悩んでいる方にお役に立てれば幸いです。
「交渉」の上手な方は、自分の意見や希望を押し通すことや、相手はしぶしぶ、自分は満足のようなwin-lossの関係性を持ちません。それは顧客に対しても社内の同僚に対しても同じことが言えます。「勝ち負け」のような関係性は長く続くわけがなく、顧客との良好なビジネス関係や社内でのチームビルディングによくありません。
大切なことは、相手(顧客や同僚)の願望をしっかり把握すること、そして相手の願望を満たしつつ自分も満足を得るコミュニケーションです。
そのための手段の一つに、営業の手法であるSPIN質問話法が役に立ちます。
SPIN質問話法については以前にも解説していますのでその詳細説明は割愛します。次の順番通りに相手に尋ねる(質問する)話法です。
➀Situation Question『状況質問』:相手が現在置かれている状況、状態、背景を質問する
➁Problem Question『問題質問』:相手の解決したい問題を質問する=相手の願望
➂Implication Question『示唆質問』:その問題を放置すればどうなるのか質問する
➃Need Pay-off Question『解決質問』:解決策を提示し、合意を質問する(願望をかなえる方法)
SPIN質問話法の目的は、相手(顧客や同僚)の潜在的な願望を引き出すことです。それも自分自身の真の願望(問題や課題)に気付いていただかなければなりません。
例えば、営業パーソンから商品・サービスを勧められても、お客様は「買わされている」と感じると買ってくださらないです。
交渉術も同じように、こちらの都合の良いように押し付けたり、丸め込む(営業で言うと買わせる)とすると、相手(顧客や同僚)は距離を取ろうとします。つまり関係性が上手くいきません。
SPIN質問話法は質問によって相手(顧客や同僚)ご自身が自分の願望に気付かれますので、例えば営業パーソンが売り込まなくても商談が進むように、交渉において自分に有利に進めようとしなくても相手の願望を知って、それを実現するように進めるだけで自然と話がまとまります。その上で、自分の満足(目標や利益)を盛り込めば、ムリな商談や押し付けをすることなく話がまとまります。
以前書きましたが、営業とは「お客様の問題の解決策を提案する」仕事です。同様に、真の交渉術も相手の問題を解決しつつ、自分も満足いく結果を得るコミュニケーションスキルです。
相手の願望(解決したい問題)を知るための方法が、SPIN質問話法なのです。
このコミュニケーションスタイルですと、相手(顧客や同僚)からは問題解決ができて感謝され、自分は無理に売りつける必要がないので気持ちよくストレスなく仕事ができ、良い成果を出すことができます。相手も喜んでいただき、自分も喜び、会社も成果が出て喜び、まさに「三法良し」です。Win-winですね。
ぜひ多くの方にこのSPIN質問により問題を解決するコミュニケーションスタイルを採用していただきたいと願います。
改めてSPIN質問話法については、別の機会にまた解説したいと思います。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
新規事業の旅その25 キャズムを超えるまでのKPI
2022年11月4日
早嶋です。
スタートアップ企業や新規事業を行う際に、顧客シェア獲得の目標に悩むかもしれない。そんな時に指標となる数字を紹介する。経験則半分と市場における認知の理論(ランチェスター戦略)、キャズム理論等を総じて考えた数字だ。
そもそも新規事業なので、シェアを表現する市場の定義が曖昧だと思うが、なにかを判断する際の基準として確度が低くても設定すべきだと思う。その上で読み進めて頂くと良き。
(ランチェスター戦略をベースに考える)
ランチェスター戦略は弱者の戦略とされるが、弱者の定義を見れば、ほとんどの企業が参照すべき考えだとわかる。一方で、新規市場において参照できるのかという疑問も残るが、参考までに活用すると良いと思う。
3%、生存シェア。成熟したマーケットでは存在価値がようやく出るシェアだ。ランチェスター戦略の場合、市場を全世界とか全国とか広範囲を想定しておらず、限定的な市場での考えだ。そのため、スタートアップとしても参考になると思う。テストマーケティングを行い、限定的なマーケットで先ずは3%を目指すという概念を持つことが大切だ。
例えば、フェムテックエリアで何らかのサービスを開発した場合、特定のマーケット、例えば福岡でシェアの3%獲得をスタート時点で目指すのだ。月経を迎えはじめる頃から更年期まで幅広い年齢層の女性が対象だとすると福岡県510万人の人工の内、女性が半分。その内15歳以上の女性が85%だとざっくり想定すると、対象は、510万✕50%✕85%=216万人。この3割くらいが想定市場としても70万人程度が母数になる。ここから約3%を目標に捉えると、約2万人に対して何らかのサービスを提供している姿を目指すのだ。
7%。存在シェア。成熟したマーケットで7%というのは、競合や代替する商品から一応、存在されるという認識レベルになる。
例えば、イスラエルにおける自動車メーカーのシェアを見てみる。イスラエルは人口900万人程度で決して市場の規模は大きくない。そのため自国に自動車完成メーカーは存在せず国内販売の自動車は全て輸入車だ。メーカー別のブランドで見ると、2021年で韓国現代が15%、韓国起亜が14%、トヨタも14%、マツダが5%、三菱は4%、日産も4%、スズキが3%だ。となるとマツダや三菱や日産やスズキは、韓国の現代や起亜からは意識されていない存在ということになる。新規事業においても、特定の市場において7%よりも低い場合は、下位グループになるため顧客や競合からは認識されにくい。その意味で、3%の次は7%の獲得を目標に設定するのは良いアイデアだと考える。
11% 。影響シェア。特定のカテゴリや市場からは、競合からも顧客からも認識される規模感だ。
例えば、統計としては古いがみかんのシェアで考える。2015年の統計によるとみかんは和歌山、愛媛、静岡となる。シェアはそれぞれ20%、15%、13%だ。では4位はどこか考えて見てほしい。みかん愛好家か業界の人であれば熊本(10%)、ついで長崎(7%)を想起したことだろう。10%前後のシェアがあれば、一定の人にはようやく認知されはじめるレベルなのだ。顧客に認知されていない状態で、自社の商品をセールスするためには莫大な広告宣伝費がかかる。このシェア前後くらいよりようやく広告費の費用対効果が出始めるのだ。
14%。上位シェア。ここまでくると、市場からも競合からも認知を得られ、一定の収益を上げることが出来る。スタートアップであれば、まだ商品の開発コストを回収出来ていないかもしれないが、全体の14%前後を当面の目標に設定するイメージが収益がトントンから上振れするラインだと思う。
先程のイスラエルの自動車の場合は、上位が14%から15%で1位から3位を占めている。ということは、まだまだ競争が激しい市場だと言える。みかんの事例では、13%から20%で1位から3位が占めている。和歌山が飛び出した形で、どんぐりの背比べでも一応一位の状態だ。全体の14%前後を獲得したからと言って戦いが終わるわけではないが、スタートアップとしては、まずこのラインに立つことが大切なのだ。
(キャズム理論をベースに考える)
これまでの議論にキャズムの概念を入れてみる。上述をポイントとすると、先ずはスタートアップとして3%を超え、7%そして14%のシェアを獲得することを念頭に入れ踏ん張ることが重要だ。しかし、そこからも競争は続くことを論じた。
だが、ここに新規事業の概念を含めて考えると、注意点が一つある。それはシェア14%前後の顧客を始めて開拓して市場を創造している場合の中利点だ。市場に100人いた場合、ざっくり上位の15%前後と残りの85%前後の顧客はそもそも商品や新しいモノを利用する、購買することに対しての取り組み方が全く異なるのだ。
上位の顧客は、新しい概念や理論を用いた商品が世の中に出ても、自分たちでリスクをとって導入しようと試みる。しかし、多くの人々は用心して、新しい取り組みをチャレンジしたがらないのだ。その境が15%前後というのがキャズム理論のポイントだ。
15%前後の初期市場からメインストリームの残り85%にリーチするためには、基本的なコミュニケーション戦略や商品の使い勝手等をゼロベースで見直す必要がある可能性が高いのだ。頑張って15%のシェアが獲得できたからと言って喜んではいけない。従来の通りの延長で事業を行うと急激にシェアが取れなくなり成長が鈍化してしまう。
専門家はキャズムにはまった可能性を指摘するだろう。そして、当然に成長を進めるためにはこの溝を飛び越える作戦が必要になる。具体的にはターゲットをイメージしながら、そのターゲットがアーリーマジョリティの可能性を考えるのだ。彼らは15%前後の既に購入している顧客の声を参考にする傾向が強い。その声を市場任せにするのではなく、企業として積極的に作戦を考えて声を露出させ、その声をアーリーマジョリティに届けることがポイントになる。
更に、今の商品の使い勝手がどうかを徹底的に検証し直すことも必要だ。15%前後の既に購入している顧客は、仮に不具合が多少あっても、勝手に自分たちで対応してくれる。しかしメインストリームの顧客はそうもいかない。そのため再び製品の安心感や品質、使い勝手、購入のしやすさ、リピート購買のしやすさなどを検証して改善する取り組みも必要になる。企業として、直接顧客候補にインタビューをして直にインサイトを得るなども必須の行動になる。
スタートアップのピッチを効いていて、キャズムを超えるために、具体的にこんな取り組みを行う。というスピーチを聞く機会があるが、その際の取組の指標に市場にリーチ出来ている数字を参考に考える傾向が強いのだ。
ということで14%を超える辺りから成長が鈍化する場合、そこにはキャズムが待ち構えている。その溝を飛び越えるために、従来の延長ではない取り組みが重要になるというコトを肝に銘じて動くことが大切なのだ。
新規事業の旅(その25) キャズムを超えるまでのKPI
新規事業の旅(その24) 敵のコトを知りつくそう
新規事業の旅(その23) 道具の使い方
新規事業の旅(その22) 売ってから始まる事業
新規事業の旅(その21) 現場とトップのギャップ
新規事業の旅(その20) 自前主義の呪縛とイデオロギー
新規事業の旅(その19) モノからコトへ転身できない企業
新規事業の旅(その18) アンゾフ再び
新規事業の旅(その17) 既存事業の市場進出の場合
新規事業の旅(その16) キャズムを超える
新規事業の旅(その15) 偶然と必然
新規事業の旅(その14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(その13) ポジションに考える
新規事業の旅(その12) 山の登り方
新規事業の旅(その11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(その10) NBとPB
新規事業の旅(その9) 採用
新規事業の旅(その8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(その7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(その6) 若手の教育
新規事業の旅(その5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(その4) M&Aの成功
新規事業の旅(その3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(その2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(その1) 旅のはじまり
これからの時代を生き抜くため~well-being~②
2022年11月1日
安藤です。
今回は、「これからの時代を生き抜くため~well-being~②」です。
前回は、なぜ、今well-beingが注目されているのかについてお書きしました。Well-beingは、「身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」を指す言葉です。このWell-beingについての研究で有名なのが、慶應義塾大学大学院 教授の前野 隆司氏です。Well-beingには、「幸せの4つの因子」を高めていくことが幸せにつながるといっています。それは、①自己実現と成長、②つながりと感謝、③前向きと楽観 ④独立と自分らしさです。
具体的には、1つ目が、「やってみよう」因子(自己実現と成長の因子)です。夢や目標ややりがいを持って、「本当になりたい自分」をめざして成長していくとき、人間は幸せを感じます。
「ただし、“やらされ感”の強い目標ではなく、ワクワクする目標でなければ幸せにはなれません。企業の場合は、『社員一人ひとりが会社の理念と一致した目標を持ち、それを自分事と捉えて、やりがいを感じて働いている』というのが理想です。会社の部品となって働くのではなく、社会・組織の一員として、本当にやりたいこと、やるべきだと思えることをして生きていく。コロナ禍での自宅待機中に、『自分が本当にやりたいことって何だろう』と、あらためて考えた人は多いと思います。どうしたらもっとワクワクしながら、自分の仕事に取り組めるのか。
2つ目は、「ありがとう」因子(つながりと感謝の因子)です。多様な人とつながりを持ち、人を喜ばせたり、人に親切にしたり、感謝したりすることが幸せをもたらします。
「要は、『人を幸せにしようとすれば、自分も幸せになる』わけで、身近な人から世界中の人々に至るまで、感謝が広くて深い人ほど幸せを感じやすい。たとえ苦手な人がいても、先入観を取り払えば、相手のいいところや素敵なところが見えてくる。まずはそれを見つけ出して感謝すること。それが幸せになる第一歩です」。
3つ目は、「なんとかなる」因子(前向きと楽観の因子)です。いつも前向きで、「自分のいいところも悪いところも受け入れる」という自己受容ができており、「どんなことがあっても何とかなるだろう」と感じる楽観的な人は、幸せになりやすいといわれています。
4つ目は、「ありのままに」因子(独立と自分らしさの因子)。人目を気にせず、自分らしく生きていける人は、そうでない人と比べて幸福感を覚えやすい傾向があります。
「他人と自分を比べすぎず、自分軸をしっかり持って生きる人は幸せです。逆に、自分軸がぐらついていると、人と比べて『自分はダメだ』と思い込み、幸福度が低くなりがちです」。人目を気にしない人は、他人との比較によらない無形資産を大切にする傾向があるため、長続きする幸せを手に入れやすいといわれています。
引用:一般社団法人ウェルビーイング
これからは、個人のWell-beingは何か。そして、Well-being型管理者が求められています。
私自身も、企業でwell-beingコーチとして担当しています。何かお役にたてることがありましたら、気軽に弊社にご相談くださいませ。
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