
新規事業の旅166 新しいことのはじめ方
2025年4月10日
早嶋です。約1500字です。
なにか新しいことを始めるときは、まずそのゴールイメージを持つこと。次に、取り組みの骨子を整理し、実際の行動に落とし込んでいく。最初の一歩は小さくていい。慣れていなければなおさら、小さく始めてあたりを付ける。必要に応じて修正・アップデートを繰り返しながら進めていく。コツコツと、そして柔軟に。ゴールイメージに向かって、仲間と共にその姿を思い描きながら、徹底して取り組む。
「新しいこと」は、初めての人にとっては確かに新しい。でも、今日が1日目であれば、明日には“経験者”になる。この姿勢で取り組み続けると、1ヶ月後には「1ヶ月やってきた人」になる。3ヶ月、半年、1年と継続していく中で、業界構造やビジネスモデルの輪郭が見えてくる。関係者とのネットワークも自然と形成されていく。
そして1年前の自分と比べたとき、確実に“経験者”になっているのだ。これは誰がどう見ても正論で、当たり前のこと。だけど、いざ新しいことに直面すると「自分にはできない」と思い込んでしまいがちだ。
でも本当に大切なのは、「行動すること」だと思う。最初に描いたアイデアを実際に試してみて、修正を重ねるうちに、全く違う形の事業として成果が出る。そんなことは、よくある話だ。アイデアは最初は曖昧で、確度も低い。でも行動を通じて、それが少しずつ“形”になっていく。だから、行動して試行錯誤を繰り返せる人は強い。
こうした取り組みを、ジャンルやレベルを問わずいくつもやっていくと、「可能性」に敏感になる。ただ闇雲に動くわけじゃない。知らない領域でも、徹底的に調べ、一定の方向性を描く。その時々の判断で、もっとも合理的だと思える選択肢を取りながら、行動し続ける。判断基準を持っているからこそ、行動の結果を定期的に測り、検証することができる。もし違っていたなら、前提や仮説を見直し、次の行動をブラッシュアップする。こうなると、「失敗」という概念は「成功へのプロセス」に変わっていく。
情報収集に“完璧”はない。限られた時間の中で、集められるだけの情報を整理する。時間は有限だから、ダラダラと調べ続けない。時間を決めて、集めた資料を読み込む。過去の事例、類似の事例、少し分野は違っても似た構造のケース。実体験できるなら、一次情報を得る目的でトライする。この繰り返しで、情報感度が高まっていく。そしてたいていの場合、「合理的に考えると、AかBだな。ならAだ」と迷いが少なくなる。もしAかBで悩むなら、どっちでもいい。どちらかを始めてみれば、答えは動きながら見えてくる。
新しいことを立ち上げ続ける人は、ときに「考えがコロコロ変わる」と見られることがある。でも、遠くから全体を見れば、最初に描いたゴールイメージは変わっていない。変わっているのは“進め方”や“アプローチ”だけ。本人にとっては、実証やリサーチの結果、プランBの方が良いと判断したから切り替えただけなのだ。
つまり、新しい取り組みでは、まず「向かう方向」を決める。そして骨子を整理し、そこに至るシナリオを構築する。そのシナリオを、行動に落とし込む。特別なテクニックやノウハウなんて必要ない。これは、誰でも確実にできるやり方だ。アイデアそのものには、実はあまり価値がない。特許や権利で守られていれば別だが、実行されていないアイデアは“存在しない”に等しい。本当に大事なのは、そのアイデアを「形にする行動」そのもの。だからこそ、「何をやるか」を一通り議論したあとは、「どうやるか」を試しながら修正していく力こそが、問われるのだ。
契約後のフォローが営業の成否を分ける!(その2)
2025年4月7日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今月のテーマは「契約後のフォローが営業の成否を分ける!(その2)」です。前回に引き続き、契約後のフォローについてお伝えします。フォローをしっかりすることによって、お客様の満足度を上げ、リピーターや紹介による新規顧客の獲得を狙います。今回も、契約後のフォローで重要なポイントを解説します。
③ 追加提案のチャンスを逃さない
契約後のフォローを通じて、お客様のニーズが変化することがあります。適切なタイミングで追加提案を行うことで、アップセル(より高価な商品・サービスの提案)やクロスセル(関連商品・サービスの提案)につなげることができます。
アップセルの例
「現在のプランをより便利にするオプションもありますが、ご興味はございますか?」
クロスセルの例
「他のお客様には、〇〇の商品もセットで導入される方が多いです」
注意すべきなのは、お客様の満足度が高まる前に追加提案をすると、不信感を持たれる可能性があることです(売り込みとみられる)。まずは信頼関係を築くことを優先し、その上でお客様のメリットになる提案を行いましょう。
④ クレームやトラブルの対応を迅速に行う
どんなに良い商品・サービスでも、トラブルが発生することはあります。問題が起きたときの対応が、その後の関係を大きく左右します。
お客様の話をしっかり聞く(まずは共感を示す)
迅速に対応策を提示する(「対応します」ではなく「いつまでに何をするか」を具体的に明確にする)
対応後にフォローを入れる(「その後、問題は解決しましたか?」と確認)
クレーム対応をしっかり行うことで、逆に信頼関係が強まるケースも少なくありません。
⑤ 感謝を伝え、関係を深める
「契約して終わり」ではなく、長期的な関係を築くためには、感謝の気持ちを伝えることが大切です。
定期的に感謝のメッセージを送る(お礼のメール、手書きのカードなど)
特別な情報を提供する(業界ニュース、セミナー案内など)
感謝を伝える機会を作る(契約1周年のお祝い、記念品の送付など)
「この営業担当者は、自分のことを大切にしてくれている」と感じてもらえれば、リピート率や紹介率が格段に上がります。私は保険営業時代、お客様の誕生日にバースデーカードを毎年送っていました。
3. まとめ:契約後のフォローが「次の契約」につながる
契約後のフォローは、単なるアフターサービスではなく、次のビジネスチャンスを生み出す重要な活動です。
初期対応を迅速に行い、信頼を得る
定期的なフォローで不安を解消する
追加提案のタイミングを見極める
トラブル対応を誠実かつ迅速に行う
感謝を伝え、長期的な関係を築く
この5つを意識すれば、お客様との関係が深まり、リピーターや紹介が増え、売上アップにつながるはずです。
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
新規事業の旅165 アメリカの終焉
2025年4月5日
早嶋です。5500文字です。
トランプは、輸入品に対する関税額を引き上げた。アップルなど地球規模でサプライチェーン構築する企業は、結果的に米国で販売する商品の金額が跳ね上がる。例えばiPhoneが20万だったのが30万を超える等だ。一方で米国の商品を海外に輸出しても報復関税で相手国も関税を課す泥沼になる。そもそも魅力が少ないアメリカ商品は安くても売れない。米国での商品も価格は上がり、企業の経済活動も低迷する。結果、当然不況になる。なぜトランプは関税政策を執行するのだろうか。
いくつか理由はあると思う。1つ目は、アメリカ第一主義の実践だ。トランプは一貫して、グローバル化の中で損をしてきたアメリカの「労働者階級」や「製造業」を再生することを訴えている。関税を課すことで、2つのねらいがある。海外からの安価な製品にストップをかけ、アメリカ国内の産業を守るということだ。そして、アメリカ企業が海外ではなく国内に工場を戻す、いわゆるリショアリングを促すことだ。
2つ目の理由は、中国との経済戦争(テクノロジーと覇権)だ。特に中国との関税合戦は、「不公正な貿易慣行」や「知的財産の盗用」に対する制裁として打ち出された。これは経済的制裁でありつつ、米中覇権争いの一環でもある。
そして、最後は選挙における支持基盤へのアピールだ。トランプの強固な支持層は「ラストベルト(衰退した工業地帯)」などの製造業従事者や白人労働者階級だ。彼らにとって「関税=外国に対抗する正義の象徴」であり、「雇用を取り戻す手段」とも見られる。これはポピュリズム的な政策とも言える。
しかし、結果として誰も得しない。物価上昇(インフレ)が米国内で発生する。関税でコストが上がり、最終的には消費者が負担するからだ。消費者の購買意欲が下がり、企業活動の停滞がすすむ。サプライチェーンが混乱し、投資も減るだろう。もちろん、既におきつつあるが、貿易相手国との関係悪化がすすむ。皆が報復関税をして、輸出減少、不況のスパイラルとなるのだ。最終的には、米国は経済の孤立化を招く可能性が高い。
少し考えると分かる行動を平然とすすめるトランプ。経済学的にはマイナスが多いのだが、トランプにとっては「政治的にメリットがある」と考えているのだろう。経済の損失よりも、「支持者へのアピール」「強硬姿勢の演出」が選挙での票につながると考えているのだ。
しかし、どうだろうか。アメリカの製造業と言ってピントくるものはあるのか?彼らは世界のサプライチェーンを無視して独自で製品が作れるのだろうか?さらに、仮に作れたとしても、アメリカの高額な人件費で製造した場合の製品のコストが高まるのではないか?さらに、ラストベルトの人材は、アルコール中毒、薬中毒でまともな労働者が少なく、働き手が足りないのではないか?諸々と湧いてくる疑問を整理してみる。
そもそもアメリカの製造業は、伝統的な自動車(GM、フォード)、航空機(ボーイング)、重工業(キャタピラー)、鉄鋼、化学などだろう。ハイテク産業は、IT機器、半導体、医療機器などもあるが、多くは設計・開発はアメリカで、製造はアジアという形でサプライチェーンを構築している。つまり、現代のアメリカの製造業は「グローバル製造モデル」に依存しているのだ。
そして、そのアメリカが世界中のサプライチェーンを無視して独自に製造ができるかの答えは確実にNoなのだ。iPhoneを例にとるとわかりやすい。そもそも部品は日本(センサー、ガラス)、台湾(チップ設計)、韓国(ディスプレイ)、中国(組み立て)など、多国間にまたがっているのだ。それを無視して全てアメリカで作ろうとすると、工場のインフラ、人材、ノウハウ、部品の供給網すべてが不十分なのだ。つまり非現実的かつ高コストの取組を始めようとしていることになる。
アメリカでの人件費も無視できない。当然に、製造コストが圧倒的に高くなり、価格競争力を失う。例えば、同じスマホを中国で100ドルで作れるとしても、アメリカなら200〜300ドルかかるだろう。結果として製品価格が上がり、 消費者は購買意欲がわかなくなるだろう。もちろん、それらの商品を世界に輸出出来たとしても、高すぎて買う人がいなくなるだろう。
紙面ではあまり報道されないが、ラストベルトの労働力は質が低い。アメリカの汚点でもあるのだ。ラストベルト(五大湖周辺の工業地帯)は過去数十年で衰退し、大量の失業、人口流出、教育水準の低下を招いている。そして、薬物・アルコール依存が深刻な地域も多い。仮に、企業が工場を戻しても、そもそもまともに働ける人がいないし、仮にいても、訓練されていないし、訓練しようがないかもしれないのだ。さらに、若年層はITや都市部に流れており、肉体労働を好まない傾向は世界中同じなのだ。結果として、「製造業の復活」は理論的には可能でも、現場が成立しないのだ。
それでもトランプが強硬する理由は、現実よりもイメージを重視して、政治に利用しようとしているとしか考えられない。「アメリカに工場を戻す」「外国に頼らない強いアメリカを取り戻す」という夢を語り、実際にはコストも人材も合わないが、そう主張することでラストベルトからの指示を得られ続けるのだ。
このままでは、アメリカは四面楚歌になるかもしれない。伝統的な自動車はそもそも今でも商品の魅力は薄い。GMやフォードがBMWやベンツ。トヨタや高級車のレクサスに勝てる要素はない。ボーイングはここ数年品質トラブルの温床でまともな製造が出来ているとは考えにくい。キャタピラー等の重工業も三菱やヒュンダイなど多くの競合がひしめく。鉄鋼、化学なども同様だ。ハイテク産業は、IT機器、半導体、医療機器等があるが、米国はそもそも設計や開発しかしていない。そうなると日本、欧州、中国の企業がこぞってその技術者を引き抜き、彼らが企画開発を強化するだろう。そして、マーケティングは欧州、精密部品は日本、ディスプレイ関連は韓国、半導体は台湾。組み立てなどもアジアで行うという流れになるのだ。グローバルサプライチェーンから米国を排除して、それ以外の国は元の関税の枠組みに戻すことで、アメリカは一気に失墜するシナリオだ。
実際、その動きは1回目のトランプで検証されている。トランプ政権の移民制限政策、とくにH-1Bビザの発給制限は、アメリカのIT産業にとって長期的に痛恨の一撃となっている。そして、インド・中国・台湾のIT産業に大きな追い風となった。H-1Bビザは、高度技能職向けの就労ビザだ。特にIT・エンジニア系の外国人労働者(インド人が最多)が多く活用していた。1回目のトランプ政権下、2017年から2020年にかけて「Buy American, Hire American(アメリカ産を買い、アメリカ人を雇え)」政策を強化したのだ。H-1Bビザの発給数を制限、審査を厳格化した結果、多くの企業や人材が米国での就職を断念し、更にグリーンカード審査の長期化・停止も重なり、米国定住をあきらめる優秀人材が続出した。
その人材は母国に戻り、同様の仕事をするため、結果的にインド、中国、台湾のITが強化されたのだ。インドでは、元Google、Apple、Amazonの人材がインドに帰国し、バンガロールなどに自社スタートアップを設立。コロナ禍のリモートワークも後押しとなり、グローバル案件を自国内で受託する体制が進展している。2023年以降、生成AIやフィンテック分野での成長が著しいのだ。インド政府も「Digital India」「Startup India」などで強力に後押している。
中国では、米中摩擦を契機に、「帰国者(海亀:ハイグイ)」が増加した。中国国内でクラウド、AI、半導体設計分野の人材供給が充実し、国家レベルでの「自給自足戦略(内循環)」にも人材が貢献している。HuaweiやBYD、Tencentなどが米国依存から脱却し独自技術で躍進している背景はトランプが撒い種とも言えるのだ。
台湾でもやはり、TSMCやMediaTekなどの半導体企業が高い報酬と働き方改善で人材を呼び戻し、アメリカで経験を積んだ人材が帰国し、先端チップやAI設計に反映する。やはり台湾政府も積極的なR&D投資とスタートアップ支援を強化した。
トランプ1次政権では、短期的には国内雇用を守ったように見えるが、高度人材を自ら放出した。そして、シリコンバレーの革新力が鈍化した。世界中で「次のイノベーションはアメリカ発ではない」という空気感が定着しているのは偶然ではないのだ。
今回の関税の横行は、アメリカを外すと案外さっぱりしている。米国と付き合うのをやめようぜ。的な空気が働くことで、米国の経済は一気に冷え込む。リストラを直ぐに行うアメリカは、優秀な人材から他国の同業者に流れるだろう。たとえ、米国に住み続けても、仕事はオンラインでアメリカ以外の企業に勤めることになるだろう。その際にいの一番に引き抜かれ、転職する人材がこれまでアメリカ企業で「企画・設計・ブランド力」を生み出した人材だ。それと連呼して業績が落ちたAppleやGoogleにいた人材はリストラされるか、自主的に退職して欧州やアジアの企業にヘッドハンティングされるだろう。「知の中心」がアメリカからシフトするのだ。ポイントは、トランプ1次政権では、「外国籍の知の移動」がおきたが、今回は「アメリカ国籍の知の移動」がはじまるのだ。
そして、徐々に脱アメリカ連合の流れになる。日本は、精密機器、ロボティクス、素材技術。韓国は、ディスプレイ、有機EL、バッテリー。台湾は半導体(TSMC)、IC設計。中国は製造・スケーラビリティ。欧州はマーケティング、環境技術、規格設計。東南アジアやインドは製造拠点、開発支援とグローバルサプライチェーンがアメリカ抜きを加速する。
その結果、アメリカは確実に弱体化する。米ドルの信認は減少。取引がアメリカを通らなくなると、基軸通貨の地位は当然に揺らぐだろう。世界標準が変わるのだ。これまでアメリカ企業が主導してきた標準(例:Apple製品の仕様、WindowsのOSなど)が、新興勢力や欧州主導のものに移るのだ。アメリカ製品の孤立がはじまり、iPhoneもTeslaも「高価で時代遅れ」と見なされる可能性が高まる。米国市場は巨大だが、確実に内需だけでは維持できない。世界から無視されたテック企業は急速に縮小する。つまり、アメリカは孤高の消費大国に成り下がる危険性が十分にあるのだ。
トランプは、今や短期的な将来しか考えない。所詮は不動産屋さんなのだ。トランプや一部支持層は、短期的な支持獲得が目的で、10年後の構造的崩壊には無頓着だ。「自国中心」や「独立経済圏」を夢見ているが、現代は複雑に絡み合ったサプライチェーン経済。彼らの世界観は、1980年代のアメリカの再現を目指しているが、それはもはや幻想だ。
アメリカ依存のパラダイムを捨て、アメリカ以外で進化できる、或いはせざるを得ないフェーズになったのだ。アメリカの過去の特権に依存しない経済が、合理的かつ持続可能になる。その動きをアメリカが止めようとしても、逆に世界からの信頼を失う加速装置になりはじめていく。
ここまでのシナリオは中国の存在を無視している。中国が米国を除く協調路線に従うか、いやいや大中華思想の元祖ですよと、今後も独自路線を貫くかで、将来のシナリオは大きく変わるだろう。そういう意味で、将来のシナリオは2つのパターンを予測することが出来るかもしれない。
中国が脱アメリア連合に賛同し参加した場合をAシナリオとしよう。Aシナリオの場合、世界最大の製造力が協調に組み入れられたことになる。脱アメリカ連合に中国が入れな、供給能力と価格競争力が爆発的に増すだろう。特にEV、半導体中間材、通信機器(例:ファーウェイ)での連携が深まると思う。中国は、表では「一帯一路」の延長線上に経済協力を進め、裏ではインフラやデジタル網の支配力を拡大するだろう。そして、台湾やASEANとの緊張を和らげ、サプライチェーンの平和的共存を選ぶのだ。その結果、世界のGDPの50%以上が「脱アメリカ圏」になる。アメリカが圧倒的に孤立化し、国内製造も、軍事優位も相対的に弱体化する。中国は「世界の製造工場」から「世界の経済運用者」へ進化するのだ。
次に、中国がやはり独自路線を貫く場合をBシナリオとしよう。中国一極の世界観の実現だ。中国はサプライチェーンでは協調するが、政治的・軍事的には排他主義だ。台湾・南シナ海問題で緊張を生み、欧州や日本との信頼関係が不安定になる。経済では連携を装いつつ、デジタル通貨、標準規格、AIインフラで主導権をしたたかに狙うだろう。技術標準を中国流に差し替えることで、中国依存の経済圏を形成するのだ。その結果、世界が「脱アメリカ vs 中国 vs 多国間協調」という三極化に向かっていく。脱アメリカ連合は、日本・欧州・インド・韓国などで結束を強化し、非覇権的な協調経済圏として独立を維持する。アメリカと中国は互いに孤立気味となり、覇権を争うが中心にはなれない構図ができあがるのだ。
最後に、日本の立場を考察してまとめよう。Aシナリオでは、中国の巨大マーケットと製造力を活かしつつ、「安心な中核技術国」として価値を発揮するだろう。Bシナリオでは、「中国には技術を渡さない」「アメリカにも巻き込まれない」というバランス外交と、EU・インドとの連携強化がカギになる。どちらにしても、日本は信頼性ある中立国としての価値を最大化できるポジションにあることが分かるのだ。
【動画】ABRM研修 事前動画視聴
2025年4月5日
※本ページは、2025年度ABRMの研修を受講される方向けのページです。
2025年度のABRM研修会に参加される対象者は、以下の動画を視聴し、事務局の指示に従い事前課題の作成、当日議論に必要な資料を準備ください。
6月11日に、事前課題の深堀りや議論を通じて、考え方を整理します。また、当日に議論した内容を基にプレゼン資料等を作成いただきます。議論に必要な資料(特に、自社、市場、競合)等は、各自持参下さい。
(視聴動画)
事業分析の基礎_概要
約20分の動画です。ABRMの視点を整理する内容です。店舗を取り巻く環境を考えながら、レンタカー事業全体を分析して問題、課題、解決策を立案する流れをイメージしながら視聴下さい。
事業分析の基礎_前提条件
約12分の動画です。レンタカー事業を分析する前提として、企業全体の概要、ミッション、ビジョンを確認します。特に、自社が直近から数年先にどのような売上や利益目標を掲げているかは明らかにして当日の研修に参加して下さい。また、直近の事業分析も適宜行って下さい。
事業分析の基礎_問題課題
約14分の動画です。レンタカー事業の問題の特定の考え方と課題の発見の考え方を解説しています。レンタカー事業の課題を特定する際に、市場、競合、自社、マクロの視点で情報を収集します。詳細は、次の動画で整理しています。
事業分析の基礎_市場顧客
約16分の動画です。課題の発見を行う際の市場分析の考え方です。
事業分析の基礎_代替競合
約11分の動画です。課題の発見を行う際の競合分析の考え方です。
事業分析の基礎_自社
約18分の動画です。課題の発見を行う際の自社分析の考え方です。
事業分析の基礎_マクロ
約12分の動画です。課題の発見を行う際のマクロ分析の考え方です。
事業分析の基礎_解決策
約23分の動画です。課題の発見を行った際に、どのように解決策を立案するかを示しています。レンタカー事業全体の経営を考えるために、合わせて事業部長の視点や考え方を解説しています。
事前課題の取り組みを行う際に、上記動画の流れや考え方を参考に準備して下さい。不明な点や、わからない点は当日の研修で議論しながら解決していきます。パワーポイントのフォーマットを完成する事が目的ではなく、ABRMとして、どのような考えを持ち、取り組むかを理解頂くための課題です。試行錯誤しながら適宜必要な資料や分析を行いながら準備して下さい。
プレートの連鎖は考えにくい
2025年3月31日
早嶋です。
直近で以下の地震が発生している。SNSでは、何らかの大型地震を示唆しているが、プレート全体が地球上で連動することは極めて稀な状況で考えにくい。
(①3月25日10:43頃)
ニュージーランド付近
深さ:21km
規模:M6.7
(②3月28日15時20頃)
ミャンマー(インド付近)
深さ : 10km
規模 : M7.7
(③3月29日2時17頃)
北大西洋(大西洋中央海嶺中部)
深さ : 6km
規模 : M6.6
(④3月30日21時19頃)
南太平洋(トンガ諸島)
深さ : 不明
規模:M7.3
①3月25日のニュージランド付近、プレートはオーストラリアと太平洋プレートの境界。ここは、ニュージーランド周辺で両プレートが強く衝突し、沈み込みしており、常に地震が多発する地域だ。
②3月㉘日のミャンマー付近、プレートはインドプレートとユーラシアプレートの境界。ここは、インドプレートが北へ押し上げる力が集中し、過去にも大規模地震の多い場所だ。
③3月㉙日の大西洋中央海嶺、プレートは南アメリカプレートとアフリカプレートなどが広がる拡大境界(海嶺)。プレートが引き離されてできる拡大型のプレート境界で、通常は浅い地震が多く、M6〜7程度の地震がときどき発生する。
④3月30日のトンガ諸島、プレートは、太平洋プレートとインド・オーストラリアプレートの境界。ここは世界でも有数の沈み込み帯で、深く大規模な地震が頻発するエリアだ。
整理すると地震④(トンガ)と地震①(ニュージーランド)は太平洋プレート関連であるため、同じプレート上での活動とはいえる。しかし、数千km離れており、誘発等の直接的な因果関係は小さい。他の地震の②ミャンマーと③大西洋中央海嶺は異なるプレート境界で、連動性は基本的にない。
新規事業の旅164 脇毛とマーケティング
2025年3月24日
早嶋です。2300文字です。
脇毛に思う。脇の下に生える毛だ。主に思春期以降にホルモンの影響で生え始める第二次性徴のひとつだそうだ。脇毛の意味は、摩擦から皮膚を守る。汗の拡散と蒸発を助ける。フェロモンを拡散する。という3つの機能がある。
1つ目の機能は、腕の動きによって脇の下が擦れるのを防ぐ役割だ。次の機能は、脇にある汗腺の機能を助けるのだ。毛があることで汗が広がりやすくなり蒸発しやすくなるのだ。そして、汗腺の中のアポクリン腺から出る汗が脇毛に付着することで、におい(フェロモン)を拡散しやすくする働きがあるという。ただし、近年、文化的な観点から脇毛の処理が習慣化されている。
人間の祖先は、全身が毛に覆われていた時代があった。しかし進化の過程で「体温調整の効率化」や「病気のリスクを下げる」などの理由から、だんだん体毛が薄くなったと考えられている。それでも「ワキ・陰部・頭・眉」などは比較的濃い毛が残っている。
脇にあるアポクリン腺は、思春期以降に発達する。体臭のもとになる成分を出すのだ。脇毛は、この臭い物質を毛に付着させ、拡散させる。性的な成熟や魅力のサインとして進化上の役割があるのだ。それなのに美意識が高い人は脇毛を剃っている。矛盾しているのだ。自分の魅力を高めたいと思う人が、本来持ち合わせている機能を敢えてシャットアウトしているからだ。
文化の進化が本能を上回ったのだ。匂いは不快、ムダ毛は不潔やだらしなさ。と捉える感覚を、一定の人間は社会的な価値観として受け入れてしまった。本能的な価値観を打ち負かしたのだ。脇毛を処理して、敢えて香水やデオドラントで「人工的ににおいをコントロール」するのだ。そして、「視覚的に清潔感を演出」している。その自然の美しさに対して、人工的な美しさを洗練されたと捉えたのだ。
別の観念もある。例えば都市部などに過度に人が密集するエリアでは、体臭(フェロモン)が「不快なひおい」と受け取られてしまったのだ。そのためフェロモンよりも、デオドラント、或いは人工的な香水の香りに軍配を置いたのだ。
そして人の密集は、本来の自分ではなく、周りからみられた自分という観念的な像を作り上げてしまい美意識が高い人達が作り上げた美意識を追い求める愚行を選んでしまったのだ。もちろん本来の姿を受け入れる傾向もあるが、マイノリティになってしまっている。
人間の進化が人間の機能を手放す瞬間は他にも観察できる。子孫を残す本来の機能を抑制する避妊。素顔の視覚的な情報を抑制する化粧。体温調整を度外視するファッション等だ。
人間が何百万年もかけてDNAに刻んできた機能を、たかが数十年から数百年の文化でかき消す人間。進化の叡智を信じるべきなのか、一過性の流行という薄っぺらい文化を大切にすべきか。どちらが正しいのかはあなた次第であるが、それらを確かめる研究はあまりない。おそらくイグノーベル賞等の対象になるので誰も本気にしないのであろう。
もちろん、体毛の多さとテストステロンの相関や、体毛の処理と自己肯定感や美意識の関連性、脱毛産業やマーケティング視点での調査は結構ある。しかし、脇毛の有無と収入や知性、正確や魅力度が高まるのか?などの問いに対する研究はみるけることができなかった。
間接的な情報としては、美容や身だしなみと収入の相関などはいくつか見つけることができた。ビジネスパーソンの調査などでは、身だしなみに気を使うほうが年収は高いとされるが、あくまで「外見の意識」や「社会適応」の一環としての評価なので脇毛の有無と直接的な要因では無いと思う。
欧米や日本の都市部においては、脇毛を処理することが「常識」とされる文化も根強くある。これに従うか否かが、就職や対人印象に影響を与える場合もあるかもしれない。しかしそれは「本能的な機能を活かすかどうか」という議論とは無関係で、むしろ文化的圧力やマーケティング戦略による影響が大きいのだと考えた。
そう、脇毛を剃るように史受けたのはマーケティングの力なのだ。「剃らないと恥ずかしい」と感じるようにしむけることで、一定の企業の実入りが高まる背景があったのだ。
1900年代初頭のアメリカでは、脇毛を処理する文化はほぼ存在していない。しかし、1915年にジレット社が女性用カミソリを販売開始した。それと同時に「ノースリーブを美しく着こなすには、脇をきれいに」という広告が始まったのだ。雑誌・ファッションと連動して、「脇毛=見せてはいけないもの」という認識を定着させたのだ。そうやって「毛を処理する必要がある」というニーズを先に作ったのだ。
マーケティングのコンセプトとして、恥や美や清潔を再定義させたのだ。毛があるのは自然なことを、「不潔」とか「恥ずかしい」と再解釈させたのだ。体臭は個性で本能であることを、匂いは「不快」で「迷惑だ」としたのだ。そして外見は内面の一部であることを、外見は社会的な評価の全てとしてしまった。結果、洗脳された人間は「処理していないと不安になる状態」に追い込まれ、脱毛・除毛商品が生活必需品として売れるようになったのだ。
そしてある時から、脱毛することを自由の象徴のように逆説的な売り方を始めた。自分のための脱毛。好きな自分でいるために。聴いたことがある心地よいフレーズを並べて、今は自由を売るイメージが強い。更にだ。最近では、ファッションモデルが個性の象徴として脇毛を処理させないことで自然体を表すマーケティングも観察できる。
脇毛を剃る文化は、結果的に企業が作り上げた概念なのだ。その概念を満たすために、消費者はこぞって、「無駄な毛を処理する」という「膨大な無駄な消費」を続けるようになったのだ。実に謎の行動を取り続ける人間であるのだ。
中途半端な正義
2025年3月13日
早嶋です。
国際刑事裁判所(ICC)は、フィリピンの元大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏を、ダバオ市長および大統領在任中に行われた「麻薬戦争」における超法規的な殺人や人権侵害に関与した疑いで逮捕し、オランダのハーグに移送た。 ICCは、ジェノサイドや人道に対する罪など、最も重大な国際犯罪を扱う国際的な裁判所だとされる。各国の司法制度がこれらの犯罪を適切に追及できない場合に介入するのだ。 フィリピン政府がドゥテルテ氏の行為に対して適切な法的措置を講じていないと判断したのだ、ICCは独自の捜査を開始し、逮捕に至った。この逮捕は、ドゥテルテ氏の「麻薬戦争」において数千人が殺害されたとされる事件に対する国際的な責任追及の一環で、被害者やその家族にとっては正義への重要な一歩と受け止められている。一方で、「麻薬戦争」で被害を受け続けたた一般市民からすると英雄であるドテルテの逮捕には反対の声があり、フィリピン国内では賛否両論の状態だ。
ICCについて思い調べた。上記が正義ならば、なぜに北朝鮮に目を向けないのかだ。調べてみると、政治的、法的な理由があった。ずばり北朝鮮はICCの管轄外なのだ。そして、フィリピンは過去にICCの加盟国であり、ドゥテルテ政権の人権侵害について捜査を受ける根拠があったのだ。しかし、北朝鮮はICCの加盟国ではない。ICCは加盟国の犯罪、または国連安全保障理事会(UNSC)の決議を受けた場合のみ捜査権を持つ。そのためICC単独では北朝鮮に対する法的な管轄権を持たないのが大きな理由だ。
もし、ICCが北朝鮮の犯罪を捜査するには、国連安全保障理事会(UNSC)の承認が必要となる。しかし、中国とロシアが北朝鮮を擁護し、拒否権を行使する可能性が非常に高いため、ICCによる正式な調査が進められないのだ。ドゥテルテの場合、フィリピンは国際社会との関係を持ち、国内にICC加盟国の協力者がいたため、圧力をかける余地があった。一方で、北朝鮮は完全な独裁体制で、国内での逮捕は不可能なのだ。さらに、金正恩は他国へほとんど渡航せず、身柄を拘束するチャンスがほぼなかった。今回、ドテルテは香港から家族で帰国する際に身柄を拘束されている。ドテルテ自身も考えが甘かったのだ。
何人かは茶番だと思わなかっただろうか。ICCの今回の動きに対して。
ICC(国際刑事裁判所)が北朝鮮、中国、ロシアのような国に対して直接手を下せないのは、現実的な国際政治の力関係が影響しているからだ。強国や独裁国家が加盟していないために、ICCの影響が及ばないというのは、まさにICCの限界であり、国際法の矛盾だ。
正義と矛盾は今後もなくなることはないだろう。ICCのような組織は、「普遍的な正義」を掲げているが、実際には「加盟国の合意と協力」がなければ機能しない。そのため、欧米や一部の国には影響を及ぼせても、中国やロシア、北朝鮮のような独裁国家にはほとんど何もできない。さらに、アメリカもICCの管轄を拒否しており、自国民(特に軍人)をICCで裁かれることを認めていない。
これは国連も同じだ。大国には無力なのだ。国連(UN)も、大国(特に安全保障理事会の常任理事国)は拒否権を持っており、実際には国連の介入を封じ込めることができる。たとえば、ロシアのウクライナ侵攻では、ロシアが拒否権を行使したため、国連は何もできず、国際的な圧力は経済制裁などにとどまっている。常任理事国は、ロシアにまるソビエト連邦の時の権利なので、本来はその権利を一旦剥奪してゼロベースで議論すべきだが、常任理事国がそのような美味しい権利を手放すことなく、今もその椅子に座っている。国連は見た目だけの組織であり機能しないのだ。
従い、国際組織は結果的に都合が良い相手にしか裁きをできなくなる。ICCも同じなのだ。権力基盤の弱い国や、欧米諸国と関係の深い国の指導者しか裁けない。例えば、アフリカ諸国の元指導者や、フィリピンのドゥテルテのようにICC加盟国であった国の指導者には裁きの手が及びやすい。一方で、中国やロシアの指導者を裁くとなると、軍事力や外交の壁に阻まれるため、ICCは事実上何もできない。
従い、何かの違和感が強烈に湧き上がったのだ。本当に裁かれるべき指導者たちが野放しになっている状況は、多くの人々にとって言語化できない要因だ。もしICCが「本当に公平な国際法機関」なら、ウイグル問題やロシアの戦争犯罪、北朝鮮の人権弾圧などを率先して裁くべきだからだ。しかし、現実には国際政治の壁があり、裁ける相手だけを裁いているということだ。
ICCのような国際組織は正義を掲げているが、結局は国際政治の力関係に縛られている。強国や独裁国家が加盟しない限り、ICCの権力は及ばず、本当に裁かれるべき指導者は「特権階級」として逃げ続けることができる。この状況が続く限り、ICCが「公平な正義の機関」ではなく、「都合のいい国だけを裁く組織」と見られるのは避けられないだろう。実現するには、国際社会が本気で大国の免責をなくす仕組みを作るしかない。が、それが現実的に可能かどうかは…無理だろう。
新規事業の旅163 問題設定の大切さ
2025年3月12日
早嶋です。3200文字です。
伝統的な組織や変化を避ける企業の問題点は、「問題そのものの設定が曖昧であること」だと思う。多くの企業は、「売上100億を目指す」「DXを推進する」「経常利益10億達成」など、一見それっぽいでも実は極めて抽象的な目標やスローガンを掲げる。しかし、実際にどう達成するのかという具体的なロードマップが書けない。それは問題の所存が不明瞭だからだ。従い、問題を特定することなく従来の流れで行動するので現場はそれっぽく忙しいし、取り組んでいると勘違いする。しかしいよいよ大変になってきた。時代の変化もさることながら、新たなテクノロジーの活用により今まで想定していないライバルが進出している。
今すぐ、現状のビジネスモデルがどの程度維持できるのか、新たな収益源をどこで確保するのかを具体的に分析して企業の方針として明確にすべきなのだ。問題の特定ができていない企業の特徴は、目標を掲げることで計画を終えている。例えば、2030年に売上100億を達成する。等だ。これではその内訳の定義がわからないから今との比較ができない。つまり問題が設定できないのだ。問題は、現状と時間軸におけるありたい姿(目標)とのギャップだ。
更に問題の特定ができていない企業は、現状分析も甘い。例えば、現在80億の売上があるとした場合、その売上を達成してきたメカニズムの把握や、複数の事業において何が問題になるかを整理しきれていない。それらを理解するためには、事業事の売上推移や今後の見通しを分析するのだ。その際、自社分析以外に、市場や競合の変化を理解して、3年、5年先を予測する際には、それ以外のマクロ的な分析を加えるのだ。その結果、現状80億の事業が、A事業(50億)、B事業(20億)、C事業(10億)などに細分化され、それぞれにどのような問題があるかが見えてくるのだ。
他に観察するのは、抽象的かつ定性の議論が多いことだ。時間軸の設定や定性的な目標を達成した際の具体的なイメージや定量的な表現が乏しいのだ。例えば、「DXを推進することで利益を獲得する!」というような表現だ。しかし、DXをどのエリアで推進するのか?それによって、1)売上(単価とか、客数とかを増やす)を上げるのか?2)今かけている費用を●%に削減するのか?3)売上や費用は変わらないが、従業員の精神的な負担をけいげんするのか?などのフォーカスがないのだ。
そして昨今、新たに追加された概念が新規事業だ。高い目標を掲げたものの、これまでの経営を通じて、なんとなく複数の事業が成熟期に達していることを察している。そのため例えば目標100億に対して不足する売上があることをなんとなく把握しているのだ。そこで我が社も新規事業!とスローガンを出すのだ。しかし、実際に新規事業で5億獲得するのか?10億獲得するのか?の定義はない。さらに、新規事業の領域や方針がなく、現場に新規事業という言葉がまるねげされる。少なくとも経営陣は新規事業のドメインを明確に決めることなどはすべきなのだ。
実際に問題解決能力がある企業で、実績を出している企業は以下のような取組をする。同じ2030年の売上100億に対して、A事業50億は40億に縮小(▲10億)。B事業20億は現状維持(±0)。C事業10億は30億に拡大(+20億)。不足する10億は新規事業で補う。と事業事に問題を切り分けている。
更に、売上のギャップと同時に、人員計画を合わせて明確に示し、人員のギャップがどのようになるかを示すべきだ。仮に事業毎に売上のギャップを明確にできたとしても、その売上を人材を中心にどのように満たしていくのか?という前提を明らかにすることが大切なのだ。
2030年の売上を現状の80億から100億にする。人員は現在800人で、人員を大きく増加させないで800人で実現する。という前提は経営が示すべきだ。すると、縮小するA事業は人員減少。新規事業の開発は何人必要か?A事業の人員を単純に新規事業に当てはめても適正はそもそもあるか?などが議論できるようになる。その議論の方向性を明確にするために整理するのだ。
A事業は50億を500人で対応できるが、この内新規事業に取組む人員を加味しながら100人減らして400人で40億の売上を作れるたいせにする(▲100人)。B事業は20億を100人で取り組んでいるが、人数は現状を維持する。ただし、新規事業を行うポテンシャルの人員は入れ替えをする必要がある(±0人)。C事業は10億を50人で対応しているが、20億の売上増に伴い人員を50名増やして100名体制にする(+50人)。更にスタッフ部門が150人おり、2030年は組織をスリム化して100人で運営する(▲50人)。そして新規事業の専属社員を100名確保する。
というように2030年の数字の内訳と、現事業の分析とその方向性、そしてそこに対しての人員計画を明確にすることで、各事業部と機能部と新規事業の問題がより明確になるのだ。
A事業は40億まで売上は減少させるが、現状の500人の内、新規事業を行うポテンシャルのある人員を100名選び、残った400人で40億の売上を維持獲得するためにはどうするか?という問題になる。
B事業は20億を現行の100人で行うが、その中で新規事業メンバを抽出して入れ替える。何人を入れ替え、新たに入ってきたメンバを教育しながら20億を維持するためにはどうするか?という問題になる。
C事業は50人で10億の売上から他部門から獲得した追加50名のメンバと30億の売上を実現するためにはどうするか?という問題になる。
スタッフ部門は80億のスタッフ事務機能を150人で行っている体制から100億の管理事務機能を100人で行うためにどうするか?というう問題になる。
新規事業は新メンバ100人で2030年までに売上を20億獲得するにはどうするか?という問題になる。
このように、売上目標を細分化させた後は、それに対して人員計画を明確に設計することが「実行可能な戦略」につながるのだ。伝統的な組織や変化を避ける企業は「売上を伸ばす」「新規事業を作る」といった目標を掲げて終わるだけだが、実行し成果を出す組織は、目標を細分化させ、事業毎やスタッフ部門ごとや新規の取組事に売上や利益のギャップを示す。さらに、それに対応するリソース(人員・組織体制)をどのように変化させるかを定量的に設計することで問題を明らかにするのだ。
売上と人的リソースのバランスを同時にみることで、縮小事業のリストラクチャリング、削減部門のリストラクチャリング、拡大事業のリストラクチャリング、新規事業の構築などを全社横櫛で考えたうえでの人員の議論ができる。さらに、社員の年齢や能力を加味しながら、自然退職と新規採用(新人・中途)を連動させたリソースの確保が考えられる。
当たり前だがこの問題の定義がないので、新規事業の目標だけ掲げて人員計画がなく、新規を取組む人員がいなくて成果が出ないのだ。縮小する事業の人員計画を示さないから、余剰人員が発生しコスト増になるのだ。さらに、間接部門に対してはスリム化をせずにそのまま維持するため収益性を悪化させる。当然に売上と人員の計画があれば、DXを活用して本店と事業部と視点の事務と総務機能を●%削減、●人で行う体制から●人でできる仕組みをデジタルを使って実現する。と目的が明確になり、スローがんではなく成果がでるか、でないかの取組にできるのだ。
「変化を求めない企業」「変化できない企業」は、問題を定義していない。DXや新規事業という言葉をならべることはできる。しかし、今あるビジネスの本当の姿を冷静に分析し、それを突破する戦略を持つ企業になる意思がないのだ。
新規事業の旅162 単一と統合の生態系
2025年3月10日
早嶋です。約3000文字です。
Skypeは、サービスを2025年内に終了するという。マイクロソフトは当時、Skypeの買収に多額の投資を行った。メッセンジャーやVOIPを活用した音声サービスの先駆者だったSkype。当時は「Skypeしよう!」と動詞にもなっていたと記憶する。単一のテクノロジーは残りにくい。現在では統合され、マイクロソフトもチームズに技術統合したのだろう。単体で一定の成長を遂げた後は、常にセキュリティや保守メンテナンスの効率が悪くなりサービスを終了するのだ。
2011年当時、マイクロソフトはSkypeを約85億ドルで買収した。SkypeはVOIP(Voice over IP)の先駆者で、法人個人向けのオンライン通話の標準的なツールだった。しかし、その後の市場変化とマイクロソフトの戦略転換により、Skypeの役割が薄れていく。その理由はいくつか考えられる。
まずは、サブスクリプションモデルへの統合戦略だ。マイクロソフトはOffice 365(現 Microsoft 365)を軸に、企業向け統合ソリューションを提供する方向に戦略シフトした。Skypeの技術は、ビジネス向けのTeamsに統合され、単独サービスとしてのSkypeの価値は相対的に低下したのだ。Teamsは、ビジネス向けチャット、音声通話、ビデオ会議、ドキュメント共有、タスク管理などの機能を統合したツールで、企業のコミュニケーションプラットフォームとして急成長している。特に2019年12月の武漢熱、Covit19 以降、リモートワークが世界中で急速に普及し、Skype for BusinessはTeamsに完全移行していくのだ。
セキュリティやメンテナンスに対しての課題もあっただろう。SkypeはもともとP2P(ピア・ツー・ピア)技術を基盤としていたが、クラウドベースの技術と比較すると、メンテナンスやセキュリティ面での課題があったと思う。Teamsでは、Azureクラウド上での運用が可能となり、より一元的な管理ができるようになった。
競合環境の変化もあるだろう。Skypeが買収された当時は、ZoomやSlackのような競合はまだ目立っていなかった。しかし、ここ数年でZoomがビデオ会議市場を席巻し、SlackやDiscordもテキスト・音声コミュニケーションツールとして台頭した。Skypeのブランド力は相対的に低下し、マイクロソフトも、競争力のあるTeamsにリソースを集中させる方が合理的だったのだ。もちろん個人向けの市場でも変化が激しい。WhatsAppやFacebook Messenger、LINEなどの無料通話アプリの台頭が、Skypeの影響力を弱めていった。かつての「Skypeしよう!」というフレーズは、今では「Zoomする?」とか「LINEでいい?」とかに置き換わっていたのだ。
マイクロソフトは、Skype単独の製品を維持するよりも、その技術をTeamsやその他のMicrosoft 365のエコシステムに統合し、より効率的に活用する方が戦略的に合理的だと判断したのだ。Skype単体の維持にはコストやセキュリティリスクが伴うため、特にビジネス向けでは、Teamsへの一本化が自然な流れだったのだ。
統合と淘汰のサイクル。今回のSkypeのようなアプリやデジタルサービスに限らず、多くの業界で観察される現象だ。技術やサービスが単独で成長し、ある程度市場で存在感を持った後、大手の統合システムやエコシステムに組み込まれる流れだ。
Skypeとチームズのように、企業は単体の製品よりも、統合されたプラットフォームやエコシステムを持つ方が強い競争力を発揮する。AmazonはECで力を発揮して、その利益を周辺事業に投資を続けた。今では、AWS、Prime、Audibleなど、サービスを束ねることで法人と個人のサービスのリテンションを高めている。Googleもだ。検索サービスでの収益を、Gmail、Youtube、Driveと広げ、統合した顧客体験を提供することでユーザーの生活に根づいた収益をあげている。個別に存在するよりも、エコシステムの一部として組み込まれた方が競争力がより強固なものとなるのだ。
つまり、単独の技術やサービスは、持続的な競争優位を構築するのが難しいということだ。独立系企業が競争に耐えるには、「持続的な差別化」が必要だが、技術の進化や市場の変化が相当早い昨今、一定以上の品質を提供することができた後は、差別化は維持しにくくなる。
この背景には、業界全体に対して、ファイナンスを武器に成長する文化が当たり前になったとも言える。大手企業はスタートアップと協業を繰り返し、時にはマイノリティ出資をして新商品の開発や不足する経営資源を高速で補っている。あるいは、その事業ごとグループ傘下に加えることで、時間を買った成長を遂げるケースも珍しくない。そして一度資本政策による成長を経験した企業は「成長の手段としての買収」を加速させるのだ。
支払い方法に対しては、個別の商品を販売するのではなく、統合サブスクリプションの中に組み込むことで収益が安定することを学んだ。アドビは単体のソフト売りから今では、Adobe Creative Cloudに統合している。マイクロソフトも上述の通りMicrosoft 365に統合。NetflixやSpotifyは、コンテンツの単体販売ではなく、定額モデルで収益を安定化させている。
単体のサービスでは、ユーザーの選択が都度あり、その度に獲得コストが必要だった。統合プラットフォームは、とりあえず全てのサービスがあるので、一度獲得した顧客に対して、継続的な体験を提供できれば、退会することはない。そのため、企業としては、安定的な収益と確実な収益計画が作れる。これは予算化も明確で、数年における設備投資や事業の強化がより正確になるため企業のファイナンスもぐっと強化されていく。
統合されたサービスは、セキュリティや規制対応のコストも下げることができる。経営企画から、人材やサービスの調達、製造や流通、販売やマーケティング、その後のカスタマーサクセスまで。機能部隊は一部、あるいは全部を共通化することで運営のコストも高効率にまわせることがわかってきた。この流れは、今後もあらゆる業界で発生するのだ。特にまだ統合が進んでいない業界においてもだ。
生成AI・クラウドは、AIスタートアップがGoogle、Microsoft、Amazonに吸収されるだろう。電池・再生可能エネルギーは、EVメーカーや電力会社が蓄電池企業を買収する方向性が加速するだろう。ヘルステックは、AppleやGoogleが医療データ企業を統合するだろう。ロボティクスはTeslaやBoston Dynamicsのような企業がシナジーを求めて統合するだろう。そして、宇宙ビジネスはSpaceXやAmazon(Blue Origin)が衛星通信企業を取りむだろう。
Skypeのサービス廃止を事例に、世の中の単独サービスが統合されることを議論してきた。あなたは統合される側、する側、どちらの立場でプレーしているだろうか?
契約後のフォローが営業の成否を分ける!(その1)
2025年3月6日
高橋です。
私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。
今月のテーマは「契約後のフォローが営業の成否を分ける!(その1)」です。前回までクロージングについてお伝えしました。今回はその次のプロセス、契約後についてです。営業にとって、契約が取れた瞬間は大きな達成感を感じるものです。しかし、契約はゴールではなく、むしろスタート地点。契約後のフォロー次第で、「単発の取引」になるか、「長期的な関係」になるかが決まるのです。
契約後のフォローを怠ると、お客様の満足度が下がり、クレームにつながることもあります。逆に、適切なフォローを行えば、リピーターや紹介による新規顧客の獲得が期待できます。今回は、契約後のフォローで重要なポイントを解説します。
1. なぜ契約後のフォローが重要なのか?
契約を取ることばかりに集中し、契約後のフォローをおろそかにしてしまう営業担当者は意外と多いものです。しかし、契約後のフォローをしっかり行うことで、次のようなメリットがあります。
顧客満足度が向上し、継続利用につながる
リピーターになり、追加注文やアップセルの機会が増える
紹介をもらいやすくなり、新規顧客の獲得につながる
トラブルやクレームを未然に防げる
お客様が「この営業担当にお願いして良かった!」と思えるような対応を心がけることが大切です。そのために押させるべきポイントは次の5つです。
2. 契約後のフォローで押さえるべき5つのポイント
① 初期対応をスピーディーに!最初の印象がカギ
契約が成立した直後は、お客様の期待が最も高まっているタイミングです。この時点で迅速かつ丁寧な対応をすると、お客様の信頼を得やすくなります。
例えば、
すぐにお礼の連絡を入れる(メール・電話・訪問)
納品・導入のスケジュールを明確に伝える
手続きや準備が必要な場合は、分かりやすく説明する
「契約を取ったら終わり」ではなく、最初の対応がその後の関係を左右することを意識しましょう。
② 定期的なコンタクトで不安を解消する
契約後、お客様は「本当にこの商品・サービスで大丈夫かな?」という不安を感じることがあります。放置すると、クレームや解約のリスクが高まります。
「導入後〇日以内」に連絡を入れる (例)「その後、ご不明点やお困りごとはございませんか?」
「定期フォローのスケジュール」を決める (例)導入後1週間、1か月、3か月ごとに連絡する
訪問やオンラインミーティングを活用する
お客様の状況を確認し、小さな不安や不満を早期に解消することが大切です。
今回はここまでです。次回は5つのポイントの残り3つをお伝えします。どうぞお楽しみに!
営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。
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