早嶋です。(約2300文字)
2024年7月31日現在で台湾の状況を報告する。
(マクロ的な数字)
マクロ的なデータを見ると2024年の第1四半期で前年同比で6.56%の経済成長を記録している。台湾の経済は貿易、投資、消費の三つの主要な要素に支えられる。特に貿易は、過去5年間で19%増加。アメリカ、中国、日本、ASEAN諸国との貿易が大幅に拡大している。また、2024年の輸出額は5,230億米ドル、輸入額は4,240億米ドルと予測され、依然として高水準を維持する見込みだ。さらに、台湾の消費は観光業の回復により支えられる見通しもあり、インフレ率も2024年には1.6%に減少する予測が立てられている。今後も消費者の購買力が向上し、経済全体にプラスの影響をもたらすことが期待されている。
では、どのくらい台湾の経済が成長しているかを見てみる。2010年から直近2024年のGDPの変化だ。2010年が4403億ドルで2024年が7900億ドル。倍近い成長を遂げている。
人口のデータは、2010年2,316万人で2,024年で2,395万人。経済の成長スピードと比較して人口はあまり増えていない。一人当たりGDPで比較すると、2010年が18,997ドルで2024年で32,982ドル。この成長は改めてすごい。成長スピードを確認する目的で日本と比較すると2010年は42,823万ドルが2024年は37,722(推定)ドルだ。為替の影響もあるとしても日本は成長が止まっているどころか徐々に衰退していることがよく分かる。
(ミクロ的な数字)
私が最後に台湾に訪問したのは2016年12月。為替の影響で物価が高いと思ったが経済データを諸々調べて見ると、単に台湾の物価が経済成長とともに高くなっていることが理解できる。先に肌感覚でどの程度の価格が上昇したのかを示すために食べ物と交通インフラとホテルの価格の違いを見てみる。
まずは食べ物だ。と言っても僕が個人的に好きな食べ物3つを選んだ。牛肉面、小籠包、胡椒餅だ。どれも台湾名物の屋台やレストランで食べるのだが、2024年7月31日現在で、当時2017年12月の最後の記憶と比較して高い!と思ったが直感は正しかった。
台湾ローカルフードの値段も確実に価格が上昇しているのだ。牛肉麺。2010年頃の牛肉麺の相場価格は約100台湾ドル(約3.2米ドル)だった。それが2024年現在で約160台湾ドル(約5米ドル)だ。次に小籠包。2010年は10個で約80台湾ドル(約2.5米ドル)が2024年は10個で約150から200台湾ドル(約5-6.5米ドル)になっている。そして胡椒餅。2010年は1個で約40台湾ドル(約1.3米ドル)が2024年で約60から70台湾ドル(約2-2.3米ドル)になっている。総じて1.6から1.8倍の価格差と言ったとこだ。
次は交通インフラだ。タクシーと鉄道(MTR)を見てみよう。2010年の台北市のタクシー初乗り料金は70台湾ドル(約2.3米ドル)で、1キロあたりの追加料金は20台湾ドル(約0.65米ドル)だった。2024年現在、初乗り85台湾ドル(約2.7米ドル)で、1キロあたりの追加料金は25台湾ドル(約0.8米ドル)だ。約25%程度高くなっている。MTR(Mass Rapid Transit)は地下鉄やJRのイメージを持って貰えば良い。2010年は台北MRTの基本運賃は20台湾ドル(約0.65米ドル)で、距離に応じて追加料金が課されていた。2024年現在もこの料金に変化は感じられない。
最後にホテルだ。一般的なホテルとラグジャリーホテルを比較した。2010年の一般的なホテル(3つ星ホテル)は1泊あたりの料金は約2000から3000台湾ドル(約65から100米ドル)だった。2024年現在、3000から4500台湾ドル(約100-150米ドル)だ。高級ホテル(5つ星ホテル)も同じように、2010年は約6000から10000台湾ドル(約200-330米ドル)で、2024年現在で8000から15000台湾ドル(約265-500米ドル)になっている。台湾で宿泊するリージェントホテルの相場もおよそ同じ程度の上昇率だった。ホテルも総じて30%から50%程度の値上げ幅だ。
(所得水準)
約15年の間でこれだけの物価が上昇すると所得も増えなければ国民は大変だろう。そこでどの程度の推移になっているか調べた。平均賃金は、2010年で月収は約36,000台湾ドル(約1,200米ドル)が2024年で約57,866台湾ドル(約1,890米ドル)だ。最低賃金ベースで、2010年は月額18,780台湾ドル(約625米ドル)で、2024年は月額27,470台湾ドル(約900米ドル)だ。約15年で台湾の平均賃金は約6割増加している。先に見た屋台やレストランの価格の高騰と賃金の高騰はおよそ同じ水準なので、生活感が苦しくなることは無いと予測できる。ただ、これは平均値なので、実際に台湾での生活は地域によって異なると思う。台湾でも他国同様、地域や業界による賃金差はある。例えば、台北市では平均年収が約882,000台湾ドル(約29,400米ドル)で、台湾全土を見るとやはり高い。また、技術職や管理職など特定の業界では平均以上の収入を得ることができる。
台湾と言っても、私は2017年12月もその前も、基本は台北のしかもかなりの都市エリアしか動いていない。ただそれでもわずか数年の変化が如実に感じられるのはすごい。逆をいえば、日本がどれだけ変化していないのか、どれだけ低迷していることに気が付かないのかを考えるきっかけになる。
(過去の記事)
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