早嶋です。
これまで、30年間の停滞について、いくつか考え(やや否定的な)を述べてきた(1、2、3)。一方で、徐々にではあるが、若手の起用や管理職への抜擢、異業種との接触強化、スタートアップなどとの協業を取り入れる風土や仕組みも構築しつつある。経営陣も60代から40代に若返りを見せる組織もあり、行動や仕組みを変えている企業も目立つ。しかしながら、日本はようやく30年前のスタート地点にたったのも事実だ。
30年停滞の要因では、組織の意思決定の遅さ、行動力の欠如、トライ&エラーをしない体質を指摘した。そして、組織の高齢化とともに、現場の意見を共有してディスカッションする建設的な場が不足している点も示した。
これらを如実に表すデータがある。米国IBMなどがまとめた調査によると、組織間に置いて上司と部下の距離感(権力格差)が小さいほど、イノベーションは活発に起こりやすいという結果だ。権力格差が地域ごとに小さい国で、スイス、スウェーデン、米国、英国などはイノベーションが活発だ。一方で、ロシア、マレーシア、イタリア、日本などは権力格差が大きく、他国と比較してイノベーションが起きにくい結果を示している。
別の事例がある。航空機は、操縦の際に機長と副機長がセットで機材を飛ばす。過去の事故を調べたところ、機長が操縦機を主で握っている際に主要な事故が起きている割合が高いことを発見したリサーチャーが、詳しく調べた。結果、先程と同じことが示された。つまり、副機長が自由に機長と議論できない結果、不運の事故につながったとまとめられたのだ。
ドラマの世界だが、「白い巨塔」の中でも、先輩や上司のドクターが独裁者となった医療機関の不慮の事故はなくなることがなかった。
今後、日本の組織が劇的にイノベーションを起こしていくには、当たり前にワイガヤが発生しているチームを作ることにあるのだ。確かに、30年前はタバコこそ激しかったが、上も下もなく皆、日本の成長や企業の成長を考えて、一生懸命に自分の意見を交換して議論しながら道を探っていた。この作業を無視して皆が他人毎になった30年だったのかもしれない。
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