本内容は、2024年5月のKAIL建塾20周年の際の記念講演の抜粋だ。講演者は吉野家HDの立役者安部修仁会長だ。講演を聴いた際の走り書きのメモに、独自の解釈を加えている。
(商品化の原則)
「在っても無くていいものは無くてよい」
「無いより在ってもいい程度のものも無くてよい」
「無くてはならないものを極限まで高める」
日本企業のものづくりは「引き算」よりも「足し算」が多い。既存の商品で可能性があるものを徹底的に極限まで高めて無駄を排除する思想があっても良い。
和食の世界では、料理下手は着味することで味を作る。一方、達人は厳選した素材をシンプルに組合せて味を引き出す。
(時間の活用)
何事も急激な変化は害となる。店舗事業でも10店舗、30店舗、100店舗の成長をある短い期間で成し遂げると歪がでる。仕入れの限界、サービススタッフの限界、教育の限界、マネジメントの限界、運転資金の限界。そのために時間軸を先に伸ばしたシミュレーションが必要になる。
店舗展開する企業に対して、顧客は普遍を求める。いつもの製品、いつものサービス、いつもの価格。無計画な成長はいつもの商品を提供することができないばかりか、内部の不満を爆発させる。人で不足の中での不満、やる気の定価、日々追われて先が見えない日々。
サービス展開で重要なものは目に見えるモノではなく、見えないモノ。従業員の気持ちは即商品の価値に波及する。
(腹落ちさせるコミュニケーション)
トップやリーダーにコミュニケーションが必要な理由は明快だ。GPTを活用すると理論の共有は紙ベースでも機械ベースでもできる。従い、時間と空間を超えて媒体を通じて実現することができる。
しかし、物事の理解を高め、共感を得るためには生のディープなディスカッションが必要。時にトップやリーダーとの1on1など、相手や共感レベルによって試行錯誤は必要だ。共感を得た従業員は、腹落ちして、その概念を同じように自分の部下に対して、自分が理解した言葉で浸透しはじめる。
(成功の秘訣)
成功の秘訣は実はシンプルだ。その取組に対して圧倒的な努力をする。そして、周囲の協力が得られるように徹底的に相手のために行動する。すると最後に神のご加護が得られるものだ。無心に、圧倒的に、一生懸命に。周囲のネットワークが構築され道がひらけないのは自分の都合しか考えていない証だ。
合理性は無いが、成功するまで徹底的に取り組むと必ず成功するものだ。
(問題解決と改善)
問題解決と改善は異なる。
問題解決は圧倒的にスピードを軸に最も重要な課題にフォーカスして解いていく。一方で改善は一定の時間をかけてじっくり行うことが寛容。時間の配分はマネジメントの能力だ。
一方で改善には時期を決める。その時期までは様々な意見に耳を傾け、様々な視点での議論を繰り返す。そして一定の時期が到来したらマネジメントとして役割としての責任を全うする。方針を決めることだ。期限が過ぎたら決めた方針で徹底的に本気になって取り組むのだ。
(組織の仕事)
組織や仲間で協力して成果を出すための仕事は、徹底的に標準化する。そのために徹底的に単純にする。そしてその取組が組織や仲間の中に習慣として身につくまで徹底的に繰り返す。
(マネジメントスキル)
マネジメントに必要な要素は3つ。徹底的に顧客と従業員と利害関係、つまり人を大切にすること。そして、マネジメントスキル。更に今のように過去の延長が効かない世界は未来創造のビジョンを構築できる要素も必須だ。