早嶋です。
出張先でドーミーインを探すことが多々ある。仕事仲間がいつもドーミーインを予約していた。なんでまた、そんなホテルを推すのか、モノは試しに宿泊したのが始まりだった。なるほど、はまる。
基本、出張先のホテルは2つに分けている。しばらく滞在して、ホテルのロビーでの打ち合わせが必要な場合と、ただ泊る場として使う場合。前者は、ホテルはランクが上がり、後者は、快適、清潔、便立地であれば狭くてもどうでもよいと思っている。
時にはアパホテルだったが、価格が需要によって変動するので、その場所を確保する必要性がない場合はスルーだ。他のビジネスホテルは、都内の地下鉄系、JR系、独立系と諸々似たようなコンセプトでどこでも良く差を感じない。
が、ドーミーインはなんか違う。
北海道から長崎まで90拠点以上の宿泊施設を運営する同社。他のビジネスホテルと異なる差別化ポイントが複数あるのだ。
・ロビーでのコーヒーサービス(機械セルフで無料飲みほ)
・充実した洗濯機(使ったことないが)
・天然温泉の大浴場とサウナ
・湯上りのアイスクリーム
・夜食に名物夜鳴きそば(もちろん無料)
・時間帯によって、乳酸菌飲料の提供
・宿泊世代を意識した充実漫画本コーナー
そして、何よりも朝食だ。どの拠点に行っても、ご当地を意識した朝食ブッフェを楽しめる。宿泊金額から考えるとバリューだ。たとえ、一泊の仕事でも、ご当地の名物は朝食会場で一通り食べることができて、なんちゃってでもその雰囲気を楽しめる。
ドーミーインを展開する共立メンテナンスは、学生寮や社員寮の運営事業を母体とする。基本的に、宿泊して終わりではなく、一定期間そのエリアで過ごす学生や社会人に対して生活全般を提供してきた。つまり常にリトルハイアにフォーカスしているのだ。
ビジネスホテルは、アパホテルの事例でも紹介した通り、一見さんを相手にする事業というよりは、そのエリアで不定期に宿泊するリピーターの心をつかむのがカギになる。そのためビックハイアの満足を獲得するよりも、リトルハイアにフォーカスすることがとても大切だと思う。
ドーミーインは宿泊顧客に対して、「第二の我が家」を価値として提供すると聴く。宿泊事業のマネジメントには、特定の状況における「顧客のあったらいいな」を追求し、宿泊サービスを日々改善しているのだ。
例えば、
・シャレオツの間接照明ではなく、天井設置のシーリング照明
ターゲット層は、日本的な庶民文化で育った層、やっぱりその照明が家のようでくつろげるのだ。
・ベットメイキングは高級ホテルと異なり、足を自由に動かせるかけ布団風のデュベスタイル
ベットメイキングの後に、毎回布団をつかんで足を引っ張って、布団とベットを離して、足を開放させる動作が不要だ。こちらのほうがやっぱりくつろげるのだろう。
・館内のパジャマはパンツと上着が別々のタイプ
・スリッパで館内を移動できるように、若干立派なスリッパ
要は、チェックインの後に、パジャマに着替えて、風呂やサウナで汗を流し、そのあともスリッパで館内を自由に移動できる空間を提供したのだ。もちろん、この層にハマらない顧客は度外視しているだろう。特定の顧客をターゲットにしているのだ。
差異化のポイントは、他社と異なる違いを作ること。つまりベターの戦いではなく、ディファレントの提供だ。そのことをよく研究しているのか、改善のマネジメントも独自の手法を持つ。通常視察は、他社のライバル店の宿やホテルを見に行く言葉をさすが、同社は違う。他の自社店舗を見に行くことを視察と表現するのだ。
各地で行われる会議の前に、マネジメントは必ず前泊で自社の他の管轄のホテルに宿泊する。そして風呂、サウナ、アイス、夜鳴きそば、朝食など、すべてのコンテンツを満喫し顧客として体験する。同時に、部屋の中では、ちょっとした仕事をして、電源や照明、部屋の備品などを顧客目線で確認する。そこからのインサイトをベースに次の「あったらいいな」を提案する。
ドーミーインのように全国で90以上の宿泊施設を展開する場合、自社サービスを徹底的に調べて特定の顧客層の立場でn=1分析を地道にくりかえすことには意味があるのだ。このn=1分析は、何もホテルの支配人だけの取り組みではない。副支配人、一般社員も含めて日々顧客目線でサービスを追求しているそうだ。そのチャンスは毎月の月例で、自由に気づきやインサイトを発言提案する心理的に安全な場が確保されている。なるはや提案の場合は、マネジメントや部長職に部下から直電があり、提案されることもあるという。
以下、社員やワイガヤでやってみよう的に開始された取組の例だ。
・池袋はアニメの生地ということで大浴場のBGMにアニソンを起用している。
・御殿場のドーミーインは一般顧客の利用が多く個別サウナの提供や部屋から愛車を愛でる部屋などを展開する。
・調べていくとご当地グルメの朝食も各現場が工夫して提供しているという。
・青森のドーミーインでは地元の作家とコラボしてサウナソングを作った、これが評判で他にも展開する計画を持つ。
ナショナルブランドでありながら、ご当地感がたんまりあるドーミーイン。同社のマネジメントは、インディーズ的な感覚を残しつつ、ナショナルブランドとしての展開をする。常に、特定の顧客のあったらいいなを考えて現場でテストを繰り返す。
まさに、顧客のジョブの解決を日々行う企業のぐっとな事例だと思う。
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