早嶋です。
成長戦略を取らない企業は、将来のキャッシュフローが低迷することを意味し、株価が低下する。資本家はもちろん、事業を執行する側も都合が悪い。一方で、新規事業で安定したキャッシュを生み出すことは簡単ではない。
企業の成長は、アイデアだけではどうにもならず、資金や実行するための人材が必要だ。資金提供者はデットの場合は利息と元本保証。エクイティの場合はキャピタルゲインと配当を期待する。当然にそのような事業は、顧客や市場から求められ需要と供給のバランスを調整し続ける体力が必要だ。
新規事業の場合は、その挑戦が将来に向かい、今は実現が厳しくとも将来に実現する可能性が高まればエクイティによる資金は調達しやすくなる。それは、将来の顧客、つまり市中にいる一般消費者の生活の向上や質や豊かさにつながる。このような挑戦がある限り、世の中は便利になり続ける。
そのために事業化は、現在取り組む事業をスケールさせる必要がある。チマチマ取り組んでも、投下した資本を回収することができない。更に、同じようなイノベーションは模倣されるので、一定の可能性が見えた時点で資本を大きく費やす必要もある。
ここに新規事業のジレンマが現れる。新規の創造や仕組みを作るまでの取り組みは試行錯誤や個性やユニークさが求められる。一方で、プロダクトが出来て、一定のテストマーケティングで確認できた後は、標準化、仕組化、汎用化が鍵になる。同じような取り組みを横展開する、コピペして広域で実現可能な状態を作る。ここには個性が邪魔になる場合が発生する。
これまで新規で創造で実力を発揮した社員、0⇒1(ゼオイチ)よりも、従来の枠の中で10⇒20⇒100を続けた社員が活躍できる可能性が高まる。事業がスケールする前後に、従来の新規部隊人材がモヤモヤして個性を活かせないと感じるが、役割がことなることを理解すべきだ。これは事業を執行する側も叱りだ。
スケールに移行する前後は、従来から取り組んで新規チームとコミュニケーションを取りながら、本人の意向や特徴を踏まえて、スケールの取り組みに残すか、新たなイノベーションの開発に異動させるかを判断する。さもなければ、そのような社員が自分の役割をマイナスに感じ始め組織をでる結果になる。
新規でイノベーションを創造する役割と、イノベーションを標準化して仕組みに落とす役割。役者が違うのだ。全社は個人や個性や創造性が重要で、後者は標準化や汎用性が大切だ。スケールの次期は、異なる2つの塊が、汽水域のように混じり合う。どちらが淡水でどちらが塩水かを見極めながら事業の思考者は組織を構築するのが肝になる。
(過去の記事)
過去の「新規事業の旅」はこちらをクリックして参照ください。
(著書の購入)
「コンサルの思考技術」
「実践『ジョブ理論』」
「M&A実務のプロセスとポイント」