早嶋です。
Z世代に対しての良いアプローチ方法はあるか? 時代背景とデジタルとアナログの特徴を理解すると、育成手法やコミュニケーションのとり方が理解できる。基本は、にこれまでの世代と大きく異ることを理解することだ。
(メリットとデメリット)
デジタルは、情報を記号で表し、電子的に処理でき、コピペ(コピー&ペースト)可能で、伝送も瞬時に行える。現在、デジタル抜きに企業活動を行うことは難しい。Z世代は、デジタル前提で育ち、むしろアナログを知らない。理解を深めるためにデジタルのメリットとデメリットを列挙してみる。
メリットは、効率、共有、柔軟、便利などだ。デジタルにより、人手や時間のコストが削減でき効率を得た。紙ベースの書類管理が電子管理に移行したことで、書類の保管、管理、検索が劇的に効率化された。クラウドやオンライン共有ツールを活用することで、場所や時間に関係なくデータ共有ができる。結果、オフィスやチーム間のコミュニケーションが変化した。データは複製・編集・変更が可能で、行動の検証をアルゴリズムで行うことができるため、改善やブラッシュアップのスピードが爆速化した。ネットショップやデジタル決済は、従来の顧客体験では考えられない変化をもたらした。
当然デメリットもある。安全、情報過多、人間関係の変化だ。デジタル情報はハッカーなどのサイバー攻撃の対象になり、セキュリティ対策は必須だ。更に、情報が大量に瞬時に入手できるためその選択や信憑性の評価が難しくなった。そしてデジタルを活用したコミュニケーションは、リアルの人間との対人能力を劣化させる傾向が強くなった。一方で、テクノロジーに馴染めない人はその登場によりハンディキャプを感じ、これらも人間関係の劣化を加速させている。
(デメリットの事例)
デジタルの活用で対人能力が低下する現象は、経営者にとって深刻だ。イメージを共有するためいくつか事例を示してみる。
国内では、昨今のテレワークの増加でオフィスでの直接的、人間的な関係構築の機会が減少した。コロナ期間に組織に参画したメンバは、その被害をもろに受けている。直接対面することなく仕事をする必要が増し、効率が下がり職場の人間関係が劣化したと報告するレポートが増大している。
中国では、オンライン教育が急速に普及。教師と生徒の対面によるコミュニケーションが減少し、生徒の対人能力や社交性が著しく低下していると言う。
韓国では、スマフォの利用が急速普及した結果、若者たちのスマフォン依存症が問題視されている。24時間365日、スマフォを手放すことができず、睡眠不足やストレスなどの健康問題まで被害が及ぶ。
依存症は米国の若者でも観察されている。スマフォを手放すことができず、社交不安障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの精神的な問題を引き起こす要因にもなっているという。
(Z世代の育成環境)
1997年から2012年頃までの間に生まれた人々はZ世代と称される。現在、10代後半から20代前半の若者たちだ。Z世代は、物心がついた時からデジタルが当たり前の世界で育った。SNやネット検索は生活の一部であり、思春期にはスマフォやタブレット端末が生活のデフォルトとなった。情報はネットから集め、ネット上では自分の考えを表現し、多様な価値観を尊重する傾向を持つ。
一方で、社会での経験は浅く、リアルな問題解決能力や対面でのコミュニケーション能力は当然低い。Z世代自信も問題意識を持つが改善の仕方が分からないでいる。ネット情報に依存し、情報選別の力も欠けており、発言もコピペがベースで自分の頭を使うことが苦手になったのだ。
ただしZ世代はアナログ社会からデジタル社会へのトランスフォーメーションする際は活躍が期待される。企業や教育現場では、彼らが持つデジタル技術を活用し働き方や学び方を変革することが大切だ。社会全体の多様性を尊重し、Z世代の能力を最大限引き出すことができれば、今後の事業環境にも耐えうる組織を作れるのではないかと期待されている。
(Z世代を鑑みた教育)
Z世代に企業が教育する際、フリップラーニング、プロジェクトベースドラーニング、アクティブラーニングがポイントになる。
フリップラーニングは、社員が自宅や職場で事前学習を行い、研修ではより実践的な学びを与える手法だ。デジタル教材や動画を用いたオンライン学習を事前に済ませ、研修はグループワークやディスカッションを中心に設計し対話的な学びを促すことでアナログでしか得られないエッセンスを取り入れる。
プロジェクトベースドラーニングは、現実の問題解決に取り組む。従来のOJTに近いが、問題の設定から課題の特定、実際の解決策の立案や実行までを一気に体験させるの。その際、問題解決の進め方はベテランが示し、解決する中でのデジタルツールの活用はZ世代を中心にフォローしてもらうのだ。ベテランのアナログとZ世代のデジタルを融合することで双方の理解が深まりデジタルとアナログの良い部分を互いに吸収することになる。
アクティブラーニングは、Z世代が自発的に課題や問題に取り組み、主体的に学びを進める方法だ。デジタル化が遅れている企業は初めの一歩が踏み出せない。アナログにどっぷり浸かった中間管理職や部長層のデジタルアレルギーがはびこっているからだ。そこで入社歴の浅いZ世代を中心にチームを組み、プロジェクトリーダーは社長が務める。些細なことでも良いので、全社を改善するテーマを半年程度で繰り返しZ世代を交えて提言してもらい、その実行を実際に行う経験を積ませるのだ。デジタル化の支援の過程でZ世代の力を借り、徐々に自発的に考えるように仕向けていくのだ。
上記により、Z世代が弱いとされるアナログのスキルや世代間を超えたリアルなコミュニケーション体験、そして協調性や問題解決能力の習得ができる。加えて、リアルの世界しか知らない上の世代も、Z世代の生態系を体験し理解すると同時に、一緒に仕事ができるという間隔も芽生えさせることができるのだ。
(企業の変革)
中堅から大企業の人事はZ世代の離職率の高さに悩みを持っているに違いない。しかしZ世代が離職する理由はある程度特定されている。ワークライフバランスの悪さや、職場環境のストレスや人間関係の悪さ、仕事内容のマッチング不良や自己成長の機会の欠如などだ。
従来は、組織に入って5年、10年の期間をかけてジワジワアップデートするのが常だった。しかし、Z世代はコピペして、瞬時に共有する世界が当たり前だった。昭和の忍耐など微塵もない。しかし、それを受け入れることでアナログ企業はデジタル企業にシフトし始める。
ワークライフバランスの改善は、企業のみならず国家単位での課題だ。柔軟な働き方と従業員のライフの充実は今後外せない。職場のストレスや人間関係の悪さは、上記で提言した3つのラーニングを取り入れることで改善されるだろう。そして、その取組の中で、Z世代との関係構築を深め、双方のゴールを共有することで仕事のマッチングも実現させる。そしてキャリアを考える機会やZ世代が検索しても知り得ない、企業自体の魅力をどんどん共有していくのだ。
Z世代の離職率が低い企業は、今後10年を生き抜く企業として、そこそこアップデートした体制が整ったとも考えられる。経営者として、今の世代で会社を精算するか、今の体制を独自のポジションと主張して生き残るか、或いはZ世代の考えを組織にインストールしてガラガラポンするか。当然、ここは選択の問題であり正しいか間違いであるかは無い。経営者であるあなたが自由に判断すべきなのだ。
(過去の記事)
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