◇暗号資産技術を使った新しいビジネスモデル
原田です。
各スポーツクラブが暗号資産技術を利用した「ファントークン」の導入を進めています。現在、急速に普及が進んでいるブロックチェーンの応用で、新たなビジネスモデルが誕生しています。このモデルはスポーツクラブだけでなく、様々な分野へ波及すると思います。
クラブのファンは、クラブが発行するトークンを購入します。誰がどれだけのトークンを保有しているかは、ブロックチェーンで簡単、確実、安全に管理できます。また、クラブはこうしたトークンの発行、管理をITサービスベンダーへ委託します。
トークンを購入したファンは、株式と同じように、持分に応じて様々な特典(限定イベントの参加など)を得たり、クラブの意思決定(ユニフォーム・グッズのデザインなど)に参加できます。
熱狂的なファンにとっては、単に視聴するだけでなく、何らかの形でクラブの経営に関われることは、大きな魅力です。
◇新しい収益の柱
スポーツクラブの主な収入は、入場料収入と、スポンサー収入(広告料収入)です。しかし、このコロナ禍で、入場料収入に大きな打撃を受けました。また広告料収入も、コロナ禍の影響を受け、金額が大幅に減少しました。さらにメディアが多様化するなかで、放送料などは、一回あたり金額が少なくなっています。
そのなかで、「ファントークン」の発行が新たなビジネスモデルとして注目を集めています。クラブは最初のトークンの発行時だけでなく、トークン保有者が別の人へトークンを販売した場合も、その販売金額に応じて手数料を得ることができます。この保有権の移転、手数料の徴収もブロックチェーンを使えば簡単にできます。このとき、「ファントークン」が最初の発行時よりも高い金額で売買されれば、クラブが得られる手数料もより高い金額になります。
◇メガクラブから地方クラブまで
世界的なフットボールチームのバルセロナは、2020年6月にファントークンを約260円で販売しました。60万枚が2時間で完売しました。合計で、約1億5千万円です。ここからさらに転売による手数料収入がに見込めます。他にも、ユベントス、パリ・サンジェルマンなど名だたる強豪クラブが相次いでいます。現在、これらのメガクラブのファントークンを管理するのは、地中海の島国マルタに本社があるチリーズという企業です。このようなベンチャー企業が、歴史あるメガクラブの委託を一手に引き受けています。
埼玉県川越市にあるフットボールチームのCOEDO KAWAGOE F.Cは、まだ社会人リーグに所属する全国的には無名のチームです。30年までにJリーグ加盟を目標にしています。このクラブは、約1,500万円のファントークンを販売しました。
世界的なクラブから、地方のアマチュアクラブまで、ファントークンを活用しています。フットボールだけでなくバスケットボール、卓球など他のスポーツでも、ファントークンを使った新しいビジネスモデルを模索しています。
◇2つのポイント
この世界的な流れには大きく2つのポイントがあります。
まず一つは、コロナ禍のなか、各クラブが新たな収益の柱を求めて危機感を持って取り組んでいるということです。平常時であれば、スポンサー契約で100億円単位の収入を得るフットボールのビッグクラブなどは、こんなややこしいことはしなかったと思います。
こうしたビッグクラブが危機感を持って本気で取り組んでいるので、これからファントークンをベースにした新たなサービスが生まれてくると思います。
次に、この動きはスポーツクラブだけでなく、様々な分野へ波及するということです。当然、有名人のファンクラブなどは相性が良さそうです。更には、クラウドファンティングの進化バージョンにもなりそうです。株式やゴルフの会員券なども管理の仕方が抜本的に変わるかもしれません。地方にある小さな飲食店が、自分のお店のファントークンを発行することも可能になります。
現在、コロナ禍の自粛ムードのなかで経済が停滞しているように感じる方は多いと思います。しかし、そのなかでテクノロジーの普及が進み、新たなビジネスモデルが次々と生まれています。「AI」×「クラウド」×「5G」のトライアングルが完成し、ブロックチェーンが普及しただけではありません。世界的にライフスタイルが変化しました。各企業が危機感を持って様々な取り組みを進めています。実はビジネスの世界はびっくりするほど激しく変化しています。コロナ禍終息後の世界は想像もつきません。
◇動画案内
ブロックチェーンの原理について、gritの動画で解説しています。こちらをご視聴いただければ、その原理のシンプルさと、活用範囲の広さに驚くと思います。
以上、最後までご精読ありがとうございました。
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