早嶋です。
アップルとグーグルが一連のコロナの濃厚接触者の検出通知におちて共同開発する発表をしています。5月にその機能の第一弾を各国の公衆衛生当局に向け提供するようです(※1)。
仕組みは次の通りです。スマホが持つブルートゥースを使って互いの識別情報を端末に保存していきます。新型コロナの感染が見つかった場合、本人の同意を得ることを前提に、過去14日間の蓄積した近隣のスマホの識別情報をクラウド上に共有するシステムです。これによって濃厚接触の可能性がある人を通知ができるという発想です。
さてこれに対しては議論が分かれると思います。個人情報です。しかし、感染者は社会に対して、それ以上感染を広げないようにする義務もあると考えると、私は開放すべきだと思います。当人も、そもそも意図して感染しているわけではないので、一定の倫理があれば当然だとも思います。
一方で、感染経路不明には2種類いて、本当にわからない人と、実は自分の行動を隠している人です。前者がこのような仕組みを活用できれば、濃厚接触者への連絡が今よりも確実に行えるようになり、感染を抑える効果は高まりますよね。一方で、今のような有事の時に後者の言動や行動については、一定のペナルティが合っても良いのではとも思います。
さて本題の個人情報についてです。そもそも個人情報とは、誰のモノでしょう。多くは一瞬で、それは自分のモノでしょう。と答えるところですが、実際にそうでしょうか。私は、事実からすると反すると思う部分もあります。それは2つの理由からです。
1つ目。個人情報は物理的な存在が無いことです。個人情報は単に情報であって記号です。2つ目。確かに我々は固有の名前があります。住所、年齢、職業等々。しかし、これが意味するのは自分以外の他者に認知されてからです。個人情報はしたがって、他者に認知されて初めて存在することに近いのです。ここは明らかに個人の所有というのは違うのかなと思う理由です。
実際、この議論を突き詰めると誰のモノでも無く、社会のモノだという結論が出ると思います。となれば、本ブログで議論している濃厚接触者のデータは社会のために活用できるのであれば個人の主張ではなく、社会の約に立てるべきだと私は思います。
上記を敢えてクリアにした上で、グーグルとアップルが抽出して整理してデータに対しての管理に対しては厳重に注意する必要があると思います。そこにはプライバシーの保護、データ独占による不当な富の独占の排除。そしてデータ独占による不当に強大になった、あるいはなり得る社会的影響力の排除です。これらは、蛯原健著書の「テクノロジー思考」を一部参考にしています。
プライバシーの保護についてです。突き詰めると、この議論はイデオロギー闘争に発展して、対局する保守とリベラルに分かれるでしょう。正解は無く、どちらの割合が大きいか、どちらにふれているか、という感じで行き来しているのです。ただ、今この瞬間は、保守よりはリベラルにふれる傾向が強いと思っています。
データ独占による不当な富の独占の排除ですが、提供する組織が国家であるため、その可能性は相当に低いと考えて良いと思います。この前提がなければ、国家としての機能はすでに失われているからです。
今、我々はある種のエポックメイキングな瞬間を皆で戦っていると思います。リアル空間を強制的にリセットする原体験に加えて、個人情報の所有についての議論。毎日新しい議論とこれまで創造できなかったテーマが次々に湧いています。世界は乗り切る方向に向かっているのは嬉しい視点です。
※1:2020年4月11日 日本経済新聞