早嶋です。
企業価値を評価する手法はいくつかあります。
企業の資産をベースに事業価値を判定する方法。こちらは資産を時価で評価するので透明性は高い一方で顧客との価値や将来のキャッシュフローやこれまで培ってきたブランドの価値などを無視することになります。
類似企業の事業価値を鑑みて判定する方法。この場合は、類似する企業を上場してる企業から選択して、その企業の一株あたりの利益の何倍株価がついているかをベースに、対象会社の株価を算定する方法です。こちらはそもそもどうやって類似会社を選択するかの難しさがありますし、上場している企業のいつ時点の株価を正しいとするかなども議論が生まれます。
企業のキャッシュフローをベースに算定する方法。大企業は得に、事業計画を策定して将来のキャッシュフローを予測し、そのキャッシュフローを今の価値に割り引いて算出する方法が用いられます。しかし、事業計画の算定ですでに推定が入りますし、現在の価値に割り引くことで算数的な処理が必要になります。また、通常は5年から8年程度の事業計画を策定して、それ意向は一定利率で成長する仮定を起きますが、そこにも議論が生まれます。
他にも回収する期間や過去の収益を示す利益で企業ののれん代を算出する考え方もあります。この手法は主に非上場企業の場合に用いられることが多いですが、上場していない企業の場合は利益はかなり調整が可能です。したがって、何を基準に利益を確定していくかも議論が生まれます。更に、回収期間は買い手と売り手によって異なりますし、投資が必要な業界は回収期間が長くなる傾向があり、事業が混合している企業においてはその期間の判断がやはり議論が必要になります。
従って一つの手法が正解という考えかたよりは、複数の手法を用いた場合に、合理的な事業の価値がいくらから、いくらの間にあるという区間を推定して、その後は買い手と売り手双方の交渉によって決まる。というのが実際行われている方法です。
M&Aアドバイザーと話をしていると、少し企業規模が大きい売買を頻繁にしている方は、回収期間の目安としてEBITADAの何倍ということで判断をされている方も散見します。例えば、ファンドが調達した資金を元に投資をする際にEBITADA倍率が10倍で回収に10年などかかるなのです。
しかし、回収期間とみる場合は、実際に手元に残る金額をベースに鑑みたほうがよいので、本来の実質収益としてみることをおすすめします。EBITADAは利息や減価償却、税金控除前の利益です。単純化すると税金を負担する前のフリーキャッシュフロー相当です。当然、どこの世界も企業の勤めとして納税は必要です。
例えば年に1億のEBITADAの事業価値を10億として10年で回収と考えると、ちょっと狂いますよね。1億から税金を差し引けば実際は7,000万円程度が手元に残るからです。10億/0.7億=約14年です。
2000年頃IT革命が始まった世の中は、実はIT屋さんはサーバーやコンピューターなど結構設備投資が必要な業界でした。そのため減価償却の負担や支払い利息の負担などが今と異なり発生していました。そこで彼らが考えたのが自分たちのキャッシュをより良く見せるための見せ方です。それがEBITADAという指標として残っているのです。
事業の価値を算定するための考え方は沢山ありますが、結局は売り手と買い手が握った価格が正解で、その手法が正しいという議論は実務的ではありません。それでもある程度の合理的な幅で金額の算出を行う必要があるのでファイナンスの手法で語られる方法論が複数あるのです。それでも、背景や内容を知らないで活用していると誤った投資や本来もっと高く売れる可能性があったのに低く売却してしまった。とならないように背景の理解はあったほうが良いでしょうね。