早嶋です。
2000年当時の森首相はIT革命をイット革命と称した。当時はIとTの組み合わせはIt is a penのITとしての認識しか無く、情報技術を意味する言葉としての認識は殆どありません。2007年にPCの代わりに世の中にスマートデバイスが出現します。この前後で孫さんが日本の通信環境やインフラ整備を競争に巻き込んだおかげで一気に整い始めました。しかし、情報技術は他の技術革新とイノベーションは従来の資本主義とは違った側面を露呈し始めます。それはより一部の資本家がより富を得るという構図です。
ITイノベーションの本拠地ともいえるシリコンバレー。技術をベースに成功を収める人もいればキャンピングカーで暮らす人々が続出する現象も起きています。高収入のIT人材が世界中から流入してきた結果、住宅費や生活費が異様に高騰して工場や飲食で勤務する人たちが住居を追われたのです。
シリコンバレーを中核とする都市圏の家計所得で20万ドル以上の世帯比率は2018年は3割弱になりました。過去5年間で10%強も増えているのです。一方で同エリアではやはり5年間でホームレスの割合が10%増えています。完全なる自由競争の勝者は莫大な富を得る。しかしその富は社会全体に広がらなくなったのです。17世紀頃から始まった資本主義の常識が一気に通じなくなります。
産業革命によって大量生産が経済をけん引しました。工場のワーカーは多くの仕事を得て豊かな中間層を続出させます。同時に消費や経済成長を支えていきました。しかしIT革命によって富の源泉が知識と情報とデータなどに移行します。
現在、アップルやマイクロソフト、アマゾンやグーグルやフェイスブックなど世界大手10社のデジタル事業の市場評価は約6兆ドルと全ての日本企業の有形固定資産である約5兆ドル(金融除く)を2割も上回ります(参照:日本経済新聞 2020年1月1日 錆びつく成長の公式)。
従来の産業革命と異なりIT産業は高い知識とスキルと経験を持つ一握りの人材で富を生み出します。結果、社会が雇用を生み出す力が弱くなり中間層の概念が薄れてくるのです。
日本経済新聞の統計では、2022年までに世界の高中所得国3億人超えの製造業雇用が8年前と比較して1割消える見通しです。所得の2極化が増強しているのです。
富の偏りは全体の成長を鈍らせます。結果、極端な金利低下を引き起こします。結果、世界中でマイナス金利という異常値が常態化しているのです。
一方で変わった考え方も定着し始めます。1990年後半頃までは企業は株主を中心に議論が進んでいましたが、現在は従業員や地域社会に配慮した取り組みを行わなければSNSなどで世界中に叩かれる状況になっています。また、地球の環境が急速に悪化している理由もあるでしょう。
優良企業はクライメート・ポジティブと呼ばれる状態を2030年までに実現していかなければ急速な地球環境の悪化にメスを入れることが出来なくなると言われているからです。化石燃料を主体とするエネルギー源から再生可能エネルギーに切り替え植栽や植林に力をいれ環境のために取り組む企業、社会のために取り組む企業がよい社会として評価されるようになっています。ゲームのルールが変わったのです。
その中で中国は異次元の存在です。共産主義を貫きながらも利潤を追求する仕組みを国中で実現しています。そのダイナミズムは恐ろしく新たな企業が秒単位で生まれ急速な成長を遂げています。1980年代の中国のGDPは現在では45倍も膨れあがり約13.5兆ドル、実に米国の7割水準にまで迫っているのです。
中国の統制型経済は長期的的には効率悪化が懸念されますが、追われる側の焦りはそんなのを考慮する余裕はありません。結果、貿易戦争という禁じ手を出してきます。保護主義は最終的には世界大戦を招くという1930年代の教訓はすでに90年も昔話になっているのです。
資本主義は過去、産業革命の時期に労働環境の悪化から資本主義への批判が高まりマアルクスが共産党宣言を発したのが1848年。第二次世界大戦後も欧米では自国の国有化と規制強化がはじまり自由競争を後退させる時期がありました。しかしその度に、今度は規制をなくす方向に舵が傾き資本主義が復活します。そして1990年移行、資本主義が東欧諸国や新興国にも広がり世界の貧困率は大きく低下しました。しかし人口70億人が同じ地球で豊かな生活を繰り広げるには資源が圧倒的に足りなくなりました。試練と矛盾を繰り返す動きが常に続いているのです。