シニア・コンサルタントの原です。
顧客モニターマーケティング(グループインタビュー、アンケート調査)により、企業や組織の課題解決に数多く取り組んでいます。
グループインタビューやアンケート調査など顧客の声を集める方法は複数ありますが、それらの顧客の声は、ほとんどが文字データ、つまりテキストデータとして集められます。
集めた顧客の声を定性分析する手法に「テキストマイニング」があります。
テキストマイニングの流れは、(1)単語の分解⇒(2)共起の関係⇒(3)同義語の統一⇒(4)可視化となります。
第一プロセスの「単語の分解」とは、例えば、「見た目、良い、香り、美味しい、蓋、使いにくい」などの単語に分け、各単語がどの名詞、動詞、形容詞などに属するかなどを判断します。
第二プロセスの「共起の関係」とは、例えば、「味は良いが、蓋が使いにくい。」という逆説な文章は、「味が良い」と「蓋が使いにくい」と単語間の関係を把握します。主語と述語の関係で正確に意味を捉えるプロセスです。
第三プロセスの「同義語の統一」とは、例えば、顧客を表す言葉では、「お客様、お客、ユーザー、利用者」など様々です、分析結果が不正確にならいようように、こうした「表記のゆれ」を統一するプロセスです。
同義語の統一後には、分析結果を分かりやすく図や文章により、第四のプロセス「可視化」していきます。
単純に、第一のプロセス段階で、どの単語がどれだけ登場するかのランキングを作成するだけでも、「顧客の興味の傾向」はある程度つかめます。
さらに、単語間の関係から「肯定的な意見が多い」など深く分析することも可能です。
つまり、テキストマイニングの効果とは何なのか。簡単に言えば、営業実績などの定量データでは見えない「顧客の声」の傾向と変化を気づかせてくれることです。
どんな属性(年代、性別、地域、職業など)の顧客が、どの商品に対しどんな印象を感じているのか。商品のどの部分を評価し、逆にどの部分に不満を思っているのか。その不満は、顧客全体に共通するものなのか、それとも属性特有のものなのか。テキストマイニングでは、1つの事象から派生した多様な分析が可能となります。
このように、定性分析の長所には、第一に、定量分析とは違い因果関係や対極性の構造を探るなど数値で表せない情報やデータを分析することができます。
第二に、「細部の木ではなく森全体を眺める」という与えられた問題全体を眺めて何が問題となっているかを抽出することができます。
第三に、定量分析で用いる情報やデータは、基本的には実測時点の過去の状態のことです。一方、定性情報は過去の内容だけでなく、現在の情報や将来の展望など、現在から将来にわたる時間軸の情報を含むなど、将来予測として活用できます。
しかし、テキストマイニングは万能の手法やツールではないです。顧客の声をテキストマイニングで分析すれば、直ぐに業績改善や顧客満足度が上がるわけではありません。
定性分析(テキストマイニング)だけの短所としては、数値に基づく分析でないため、客観的な根拠に基づく分析に欠けます。第一に、担当者や分析者の主観が入る可能性があります。第二に、客観性に欠けるため、評価リスクを考慮する必要があります。これは、定性分析だけの限界でもあって、数値的な分析に基づく定量分析が必要となります。定量分析については、後の項で説明します。