米国GEのジェフ・イメルトCEOは、現在進行系+次世代経営者に助言を残しています。イメルト氏は創業100年を超える老舗企業のCEOです。GEと言えば、ジャック・ウェルチと思っていましたがイメルトCEOになってからのGEも大きく躍進しています。
ジャック・ウェルチ氏がCEOだった時のGEは事業ポートフォリオのうち金融ビジネスにフォーカスしていました。各市場で1位、もしくは2位のものに絞るポートフォリオを実現して、テレビ事業などを売却しながらも、三大テレビ局のNBCなどを逆に買収しています。ウェルチ氏は米国での売上高が6割以上でした。
イメルト氏は、方向性をデジタル技術と製造業の融合を実現しました。ピークを超えた事業は切り離すことを明確に示し、祖業であった家電事業、プラスチック、NBCを切り離しました。イメルト氏は米国外での売上高が6割でした。
ウェルチ氏が引退する頃、2000年のGEのポートフォリオは金融50%、電力システム11%、産業機械システム9%、航空機エンジン8%、産業サービス6%、プラスチック6%、その他でした。
イメルト氏が引退する前の2016年のGEのポートフォリオは電力システム22%、航空機エンジン21%、医療聴き15%、照明エネルギー12%、オイル・ガス10%、金融9%、その他です。
株価の推移をみると、2000年に25ドル平均が2001年に35ドル平均まで上がり、イメルト氏が就任した2001年の中頃には27ドル、そこから2003年にかけて15ドルまで低迷しましたが、リーマンショックの前までは30ドル近くまで高めて行きます。2009年に10ドルを割る価格にしましたが、そこから徐々に価格を上げて現在は当時の最高値に近い30ドルを超えています。
イメルト氏は金融危機とその後の経済打撃を受け、政治的に大衆を迎合する動きの台頭により当時とグローバル・ビジネスの前提が変ったことを語り変えています。イメルト氏の考えを端的に記述するとしたら、次のようになると思います。
先進国の成長を継続するには、消費を伸ばすことのみを考えては駄目。過去40年間、米国の経済モデルは米国の賃金は低いままで、生産を含め海外に出せるものは外国に移すことを基本方針としたグローバル化があった。結果、その恩恵で米国の物価は下がり失業しても低賃金でもその影響は相殺できた。
しかし統計をみると米国の国内総生産GDPの7割は消費が占める。従って1990年以降に、上記のような理屈は通りにくくなった。海外に外注して米国の賃金レベルを低いままにするだけではダメだ。従って、米国の低賃金そのものにメスを入れる必要や指摘が増えた。
上記に対しての打ち手は、ドイツ方式だ。大企業を中心にミッテルシュタントと呼ぶ中小企業群が周囲を指せる垂直統合した製造業のエコシステムの創造です。このモデルにより高度な技術を持つ労働者の報酬を高く維持して、価値の高い輸出競争力のある製品を作り出せる。
仕組みはこうだ。大手輸出企業が従業員1人を雇用すると、その企業の供給に対して8人の雇用が生まれる。大企業が1ドルの経済価値を生み出すことで、地域に1.5ドルの利益を落とすことが出来る。技術進化で米国製造業の雇用規模は全体として縮小しても実際は高度な経済活動をさせているのだ。
行政は、上記に対して様々な優遇制度や補助金の提供を提案する。が、企業が求めるのはその地域の人材だ。人材レベルは地域の教育レベルと質にほぼ相関の関係がある。目先で誘致するのではなく、その地域の特色を活かした教育方針を明確にして戦略的に人材を排出する地域にすると良い。
イメルト氏は、「ダボス会議より製造現場でもっと時間を過ごせ」と主張する。大企業は、グローバル化の本質や一般人への影響を考慮せずこれまでのグローバル化理論をすすめた。経営者は、実際に生活する人々の目線を理解しないままグローバル化をすすめてしまっている。そしてその無理解が企業にリスクをもたらす。
実に意味のある忠告だと思います。