早嶋です。
真珠のTASAKIは、7月下旬に東証での上場廃止が決定しました。投資ファンドであるMBKパートナーズグループが関与してTOBが成立したことが背景です。TASAKIは今年3月にMBOを行い、300億円を上回る金額を調達したという発表をしていました。
創業は1954年、旧社名は田崎真珠です。真珠にこだわり生産から販売までを一貫して手がけてきた企業です。業績を見ると2007年に300億程度の売上でピーク、それから急激に150億台に。2011年からジワジワ売上を伸ばし現在は200億円。ただ収益は芳しくなく純利益がマイナスの状態がしばらく続いていました。
赤字の理由は2000年代にさかのぼります。当時、真珠を取り巻く大きな環境変化が起こっています。中国が淡水パールの生産技術を向上させ、TASAKIが主に養殖していたあこや真珠の1割以下の値段で淡水パールが市場に普及させられたのです。素人にはその違いがわかりにくく、当然ながら市場に大きな影響を受け需要の縮小と単価下落に向かったのです。
それでもTASAKIは自社養殖の品質と生産にこだわり続け、結果的に真珠の過剰在庫を抱えることで赤字を続ける結果になったのです。そして経営判断は過剰在庫をさばくために日常的なセールを続け真珠の価値とともにブランド価値を低下させる方向に動いたのです。
従来、生産と品質にこだわる一方で、在庫を圧迫したくない気持から安売りに走る。幾度となく赤字を計上していた当時、これまでのビジネスモデルを大幅に変える決断をしています。それは真珠の品質にフォーカスしすぎることから、当時の田崎真珠の商品デザインをゼロから見直す活動です。
その際の資金をMBKから第三者割当増資で70億調達して、銀座本店の改装、自社養殖場の9箇所のうち7箇所を閉鎖、全社員の4割の人員整理、そして新ブランドの開発と宣伝広告費に充てたのです。
ブランドの強化のメインディッシュは、グッチやディオールでキャリアを積み当時LVJグループのフェンディの最高経営責任者であった田島氏を社長に迎えたのです。田島氏の戦略の方向性はミキモトの背中を追うことではなく、TASAKIをラグジュアリーブランドに変えることでした。2012年に社名を田崎真珠からTASAKIに変えたのもこの戦略を実現するための1つでした。
さて、今回のMBO。再び、投資ファンドのMBKパートナーズグループの出資によってTOBを実施しています。日本でのリブランディングに成功したTASAKIはいよいよグローバルに活動する意向でしょう。そのために株式を非公開化することで短期間の業績に左右されずに中長期の成果に取り組む方針なのです。
果たしてTASAKIのグローバル化は成功するでしょうか。私は難しいと感じています。日本や中国では真珠の価値は認められていますが、ダイアモンドと違って真珠のグレードを表す概念が曖昧です。つまり言語化されていない価値を海外の方々に理解して頂く取組をTASAKIは行う必要があります。デザインを変えたところで、真珠そのものの価値が伝わるか否かがポイントだと考えるからです。