早嶋です。
経営資源であるヒト・モノ・カネが近年のグローバル化により、そしてIT化により一昔よりも自由に移動する。そうなると先進国の多くの中間層がその恩恵からくる利便性よりも、自分の仕事を脅かす脅威になるのではと感じる。結果、国と国、国と地域に対して昔のように壁を作る圧力を生みたくなるのかもしれない。TPPに対しての反対議論が米国では熱い。現在の大統領候補2人の両方が強く反対しており、オバマ大統領はTPP発行に必要な商品を議会から得られる見通しも全くたっていない。
現在、世界的な不況がきている。中国や東南アジアの経済が鈍化している影響で工場投資や建設ラッシュが緩くなる。それに比例して自動車の購買や家庭の娯楽的な消費に陰りがでる。マクロでは世界の鉄の需要が減り、その影響は海運ビジネスの鈍化に反映する。建設の影響は世界の建設機器の売れ行きが先行指標になるので、鉄の動きや海運の動きを2年位先読みして現れる。現在、建機の需要が底を付きはじめ、鉄やコンクリートや海運が低迷を続けている状況。おそらく、現状のマクロ的な状況は後2年は続くと予測できる。
参照:2016年10月7日 日経新聞 日本郵船、海運不況で特別損益1950億円 7月〜9月
参照:2016年10月4日 日経新聞 コマツ「中国」に底入れ感8月建機稼働
2016年10月4日 日経新聞 大型機、冬のと時代 ボーイング・エアバス減産へ
この連鎖は、世界的に起こる。先進国の需要低迷が新興国の輸出の頭打ちを招くからだ。資源やエネルギーが低迷すると国際商品の価格下押しにつながる。現在は、各国が景気を支える目的で金融緩和を続けているため世界的にお金が余っている状況が続く。
そもそも世界の情報が共有され物流がスムーズになると、世界の何処かで需要が伸び始めると世界的な共有が始まるため常に供給過剰の状態が続く。そのため成長に陰りが出始めるとすぐに、過剰部分が露呈して一気に溢れ出す。結果、飽和した競争力の無い企業の業績が顕著になり結果的に傾き始める。企業は成長に対しての戦略には貪欲で、低迷に対してのヘッジはかなり楽観的に考えるのかもしれない。それがマイナスの相乗効果を与え、実際に低迷してから対処するので始末がわるい。今はそのような状況だ。
日経新聞によれば、国境を超えた直接投資の残高は24.6兆ドルと1990年の11倍の状況だという。企業が先の仮説で優位な市場に迅速にシフトした結果、世界的に生産能力が高まりかつ、過剰ぎみになっているのだ。世界の労働人口も1994年の25億人から2010年には32億人になっている。鉱業にフォーカスするとその人数は5.5億人から9.2億人と倍の伸びを見せた。
資本が急成長する国や地域に集まると、そこに住んでいた人々の視野も拡がる。必然的に将来の自分の生活を海外からやってきた資本家や企業に合わせて考えるだろう。自分の親と同じようにずっと1次産業、2次産業に従事しようとは考えないだろう。また、ある程度豊かになりつつ親は自分の子供に対しての将来を考え教育を施すであろう。つまり途上国の教育水準が高まる動きも加速する。現在は、ネット環境につながれば世界水準の教育がかなり安価な価格で受講できる仕組みが多数あるので数十年前の成長よりも遥かに早いスピードで水準が高まるとも考えられる。経済産業研究所の中島厚志理事業が発言した「モンゴルの大学進学率は今や日本と並んでいる」という事実がそれを物語る。
冒頭の話に戻そう。世界の経済が低迷して、それに準じて貿易が鈍化する。輸出先の締め出しが強くなれば、供給する国や企業の供給過剰問題が一気に露呈する。供給体制の機能低下は生産性の低下をまねき結果、先進国に跳ね返る。現在は皮肉にも各国が国境に規制を張り巡らせる動きが強まっており、一層の世界的な経済停滞を招く要因になるだろう。