コブラは猛毒を持つ蛇で知られていて、インドのある地域ではコブラの駆逐を進めるために報奨金をかけました。一匹殺したコブラを持って来た人に対してお金を払うという仕組みです。結果、コブラは減るどころか増えたのです。理由は、コブラを殺して儲かることを知った人が簡単にコブラを殺せるようにと養殖を始めたのです。
このように意図する目的と全く異なる効果を生むこと、逆に悪い方向に進むことをコブラ効果と呼びます。提供側が考えた思惑と全く異なる結果を生むのです。コブラ効果、日本の自治体でも観察できます。
例えばコブラと似た話にイノシシに懸賞金をかけた自治体の事例です。ある自治体では殺した写真を提出すると、その数に応じて報奨金を出すことでイノシシの撲滅に力を入れました。ある自治体では殺したイノシシのしっぽを持参することで報奨金を渡していました。蓋をあけると隣の自治体でイノシシを殺して写真を取って報奨金をもらい、今度はしっぽを切って別の自治体に提出してお金をもらう。このような方々が何人か出てきたのです。
今度はその行動を防ぐために、殺したイノシシを回収するということを進めましたが、そのうち報奨金が払えなくなり買い取る額を決めてしまいました。しかし、額は予算ありきで、果たしてそのことがイノシシ自体を減少させることにつながるのかという本来の目的を議論されることがなくなります。そして予算ありきで毎年決まったイノシシの予算を取るだけになるのです。
別の事例です。ゴミの減量を進める目的でごみ処理を無料から有料にしました。その結果、山間部でのゴミの不法投棄やゴミ屋敷の増加、そしてお店に対してのゴミの不法投棄が増えた事例もあります。
コブラ効果とは少し違いますが、住民からのクレームも同じような減少を観察できます。ある生活道路の側溝が整備されていなくて危険な状態だったので整備の要請が住民からありました。側溝を整備するときに道端にあった電信柱や障害物を邪魔だったので移設します。結果、道の見通しが良くなり、逆にスピードを出す車が増加したのです。そしてまた住民からのクレームが増えたのです。
大切なことは、行動を起こす前にどのような影響が起こるのかということを対象となる人以外にも思考を張り巡らせることです。我々はひとつのことにフォーカスして他が見えなくなります。そんな時、コブラ効果を意識することは、一度思考を発散させるおまじないになることでしょう。