円安効果で製造業が国内回帰するなどの論調があるが本当だろうか。そもそも日本の輸出が伸びないのは、その商品を司る部品が既に海外からの輸入に頼っており、それを日本で組み立てて調整した後に輸出する動きになっています。もちろん、純国産もあるでしょうが、割合で考えると前者が圧倒的に多いでしょう。
製造業のビジネスモデルを長年見ていると、製造品の原価の8割は部品で占めています。部品を海外から輸入していれば当然その部品の値段もいまの為替では高いものを買うことになります。円安だからと言って国内に工場を回帰したところで、結局は円が安ければコストにあわなくなるのです。
さらに、過去20年くらいで多くの企業は海外に進出しています。また、多くの部品工場がクラスター化しているところも工場が老朽化している訳ではなく、比較的に新しい工場がほとんどです。そのため、1)そのような新しい工場を占めて日本に回帰するインセンティブはそもそも無い。また、部品工場の多くは中国に投資をしています。中国でのビジネスは始めるのは簡単ですが、やめるのはきわめて困難です。従って、2)中国の工場はたためない。さらに、部品は海外からなので、上述の理由から、3)部品そのものは国内回帰したところで安くならない。そして、最後にもし上記の1)から3)をクリアしたところで日本でブルーワーカーと呼ばれる人材がそもそも集まらないでしょう。
ということで現実的に国内に工場を回帰させることは合理的では無いと思います。