早嶋です。
日本近海に埋蔵されているメタンハイドレードは、エネルギーとして経済的に活用した場合、アメリカのシェール革命のようなことにはならないと思います。理由は、コスト面、生産量の2つの視点からです。
コストですが、メタンハイドレードの採掘コストは$50/百万BTU(英熱量)です。これは、アメリカでのLNG価格が約$3/百万BTUですから、その価格差が良く理解できると思います。
参照:http://www.mh21japan.gr.jp/mh/06-2/
詳細をみてみると、メタンハイドレードの採掘コストは、生産原価で46円/m3から174円/m3です。バラつきがある理由は、生産量に依存して決定されるためです。更に、原油価格が上がれば、採掘施設や操業コストも上昇しコストが増すので、メタンハイドレードの採掘コストも連動して上昇します。
生産量ですが、1日に生産できるメタンガス生産量は、天然ガスの日生産量(平均数10万m3以上)と比較すると、一桁低い5万m3程度です。これは、現在主力となりつつある単純減圧法を採った場合の推測値です。ただ今後、生産量を上げるために、多くの井戸を掘るという点に注目すると、原油採掘よりも浅い位置に存在するため、その採掘コストは原油よりも安くなる可能性も考えられます。
参照:http://www.mh21japan.gr.jp/mh/06-2/
ということで現状、爆発的な期待は難しいことが分かります。そもそもメタンハイドレードにフォーカスが当たっている本質は、日本の燃料コストを下げることです。であれば、現実的な手段として、現在石油と連動して価格が高騰している天然ガスのコストを下げる方法も考えられます。
2011年の日本におけるLNGの輸入単価は、2011年のアメリカの輸入単価の3倍、2004年の日本の輸入単価に比べて3倍です。明らかに買い手の交渉力が弱くなっていることが分かります。更に、震災後、日本におけるLNG火力発電への依存度が高まっており、今後のLNG輸入単価の高騰は日本経済に大きな影響を与える要因です。
参照:2011年の日本におけるLNG輸入単価
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4124.html
参照:震災後のLNG依存度
http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/other/pdf/6250.pdf
上記の打ち手として日本政府はカタールやインドネシアからのLNGに対抗して、いち早くサハリンから天然ガスパイプラインを引っ張り、価格競争を導入するべきだと思います。他国の事例では、韓国はその手法で、将来の天然ガス輸入コスト低減に道筋をつけています。
参考:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4124.html
日本に取ってのエネルギー政策は非常に重要です。一つの技術や方向性に頼るのではなく、複合的に日本経済のことを考えた打ち手が必要です。まぁ、シェールガスも採掘技術が確立されるまでは、採算割れと言われていましたが、昨今の技術革新で大幅に採掘コストが下がっています。資源確保のために研究開発を続けてもらうことは重要ですが、何度も言うように、日本全体の経済活動を見据えたポートフォリオをベースとしたエネルギー対策あっての話だと思います。