早嶋です。
意外と知られていないのが撤退時のコスト。企業は立ち上げる時よりも閉じるときも苦労が多いのです。その時に、M&Aの知識があれば、選択肢が増えることでしょう。この問題、国内のみならず海外事業の撤退時に浮き彫りになっています。
日本企業がアジアの進出先で工場を閉鎖する。合弁契約を解消する。この際に付きまとうのが法務リスク、税務リスク等の潜在リスクです。特に近年、中国での急激な労務コストの増加、経営環境の劇的な変化、合弁契約の更新次期を迎えるなど撤退を視野に入れざるを得ない企業が増えています。
中国での撤退が顕著になってきたのは2009年頃。パナソニックが中国の合弁相手と折半出資したブラウン管工場から撤退した次期です。いわゆる退職金に相当する経済補償金での労使紛争が激化しました。最終的に出資分を100ドルで合弁相手に売却して撤退したのです。
中国からの撤退時の選択肢としては、1)破産、2)清算&解散、3)譲渡の3つがあります。1)破産は債務超過時の対応で日本企業の事例は稀。2)清算&解散は主として資産額が負債額を上回る場合です。そして3)譲渡。パナソニックのように持分譲渡が最も多いケースです。相手との交渉が必要ですが、法人が継続するため労働者への補償が不要。
とここまでを読んでこれは大企業の話、と高を括ってはいけません。大企業でも不慣れがことが多い撤退。中小企業でも同様のリスクは十分に考えられます。中国に進出して実施は上手くいかなかった企業は多いのです。交渉が不慣れな日本人がパートナーの中国人に合弁解消を切り出すとNG。結果的にすべての資産を無償譲渡して要約撤退という話は少なくありません。
中国の進出の際に20年から25年の合弁契約を進めていた企業は多く、1990年代の中国進出ブームを考えればちょうど契約更新の次期がやってきます。実際に、その次期がくる前にどのよにするのか?早めに契約を見直していくことが重要です。
海外に進出する場合、撤退の条件を明らかにしておくことは重要です。例えば、3期連続で赤字であれば撤退、資本の7割を食いつぶしたら撤退などです。現在、撤退の話題が多いのは中国ですが、いずれ同様の問題が健在化するでしょう。タイ、ベトナム、インドネシア等。こちらも中国と同様に撤退時に税務当局などの許可が必要なので撤退時の法務リスク等がつきまといます。
大小問わず、海外に進出するときは、同時に撤退するときの選択肢も検討しておくことが重要です。