早嶋です。
複雑系において、初めは小さな無視できる動きが、様々な相互作用の中で互いが増幅してとんでもなく大きなチカラに発展することがあります。こうした性質は一般的にカオスと呼ばれます。その象徴的な事例がバタフライ効果として話題にされます。
例えば、天候。地球の公転軌道、地軸の傾き、太陽の熱で暖められた大気や海水の流れ、人間の諸活動におけるインパクト。これらの要素が複雑に絡み合って天候はつくられます。
この表現は、気象学者のエドワード・トーレンツが1972年にアメリカ学会振興協会で行った講演のタイトルに由来します。『予測可能性 ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか』
この場合、アマゾンに限る必要はありません。それが北京でも福岡でも。また、思わぬ影響を被る場所もテキサスであるとは限りません。東京かも知れないし、長崎かも知れません。バタフライ効果の特徴は、蝶が羽ばたけばどこかで嵐が必ず起こるというわけではありません。蝶が羽ばたくこと自体は大きな影響を残しません。そして蝶の羽ばたきだけが嵐の原因となるわけでもありません。従って蝶の羽ばたきをどんなに観察したところで嵐が起こることを予測することはできません。
一般に、カオスによるこうした増幅作用は予測することが不可能だとされています。蝶の微妙な羽ばたき1つで最終的な結果が異なってくるからです。つまり精密な計算が出来ないのです。
バタフライ効果は、株式市場の乱高下、政党支持の急速な減少、金融危機など後付けで原因を探すことは出来ても、事前に予測することが不可能なのです。つまるところ複雑系の世の中は予測することが不可能なので、それによる不確実性のリスクを低減させることはできません。偶然のいたずらによる影響を常に帯びているということです。何事もパーフェクト。これは有り得ないのです。
であれば、人間万事塞翁が馬と考え、災も福をもたらすかもしれない。人生は予測出来ない部分もあると、でんと構えることも大切なのかも知れません。