早嶋です。
ヨーロッパを徘徊する一匹の妖怪。豚。PIIGSはポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字をつなげた呼称。
上記ユーロ圏の国々は2008年の数年前までは経済状況はそう悪くありませんでした。2008年のリーマンショック前後から財政規律問題、及び経常収支問題が顕著になります。現状のユーロ不安の要因になっています。
EUは、12カ国の発足以来、加盟国を増やしていきます。現在は当時の2倍以上の27カ国。それだけの国が集まった運営も大変なのでしょう。特に問題となって浮き出ているのは、財政が各国単位なのに、金融はEU全体で管理するという仕組みです。
通常、経済が悪化すれば、国は国債を発行して財政支出を増やし、景気回復を狙います。同時に金利を下げ、企業が資金を借りやすくします。結果、その国に海外から投資しても高金利は期待できないので、資金がその国から逃げていきます。そのためにはその国の通過を売って他国の通貨を買う必要があるので、その国の通貨は安くなります。通貨が安くなれば輸出品の価格は下がり、輸出産業にとっては有利になります。輸出が伸びゆるやかに経済が回復するというシナリオです。
EUに加盟している国の経済が悪化した場合も同様に国債を発行して財政支出を増やすことは可能です。しかし、独自に金利を下げることはできません。従って、上記のシナリオのように自国通貨を安くして輸出を伸ばすことはできません。先のギリシャは、経済の悪化に伴い国債を発行して財政支出を拡大することは出来ましたが、通貨を安くすることが出来ないので、結果、財政赤字だけが膨らみました。
問題が深刻化したのは、2009年秋の総選挙による政権交代。新政権の調べによると、前ギリシャ政権は財政赤字の数字を操作していました。当時の財政赤字はGDP比で公表数値の3.4倍の12.7%だったのです。更にEU統計局が精査した結果、実態は更に深刻で財政赤字はGDP比で13.6%にまで達していました。
こうなればギリシャの信用が低下して、新たに国債を買うところが減少します。国債が売れなくなると、ギリシャは追加で借金が出来ない状態になります。まさにギリシャが国家的に破産状態に陥ったのです。そこでギリシャはEUに資金援助の救済を求めます。当然EU諸国はギリシャに誠意を求めます。そこで、ギリシャは緊縮財政に踏み込みます。年金支出額の削減、公務員の削減などを行い赤字幅を減らします。しかし、このことで更に景気が悪化して税収が減少します。悪い循環が続いたのです。
EUの理想の裏には、財政と金融の一体化、つまりEUが完全に1つの国として統合されない限り、上記のような不安定な状況が継続するのです。
ヨーロッパを徘徊する妖怪、PIIGS。アイルランドを除くと皆、ラテン系の国ばかり。ドイツのメルケル首相は彼らを怠け者と揶揄して生活態度にまでかみつきました。陽気な太陽のもとに長いバケーションを楽しむ南欧の人々と長い冬にそびえてコツコツ働いてきた人々。グリム童話の蟻とキリギリスを彷彿とします。そんな作家のイソップはギリシャ人だったとか。うーん。