早嶋です。
市場が伸びている時、首位の企業の真似をすることで、2位以下の企業もある程度の売上を確保することが容易でした。追随をしても、市場自体が拡大しているので、共食いをする可能性が少なかったからです。一方、現在のように市場が成熟すると、2位以下の企業が首位の真似をすることは自社の首を絞めることにつながります。
市場がシュリンクしていて、ともに競争をする中、顧客の中には1位企業以外は魅力を感じなくなるからです。そこに、1位と同じことをしても、所詮は2番煎じ。昔と違って消費者も余裕が無いため、同じものであれば有名なもの、ブランドを構築している商品に意識的、無意識に目がいきます。また、企業の体力も1位とそれ以下では格段に違い、全く同じ方法を取ったとしても、そもそも資本力で負けてしまっている。販促やプロモーションにまでは力が及ばず、結局は似ている1位の商品が一人勝ちをするのです。
1位の企業であっても、市場が伸びているときと成熟している時では戦い方に変化が必要です。自社の顧客も市場の成熟とともに要求レベルやそもそものニーズが異なるからです。例えばオリエンタルランド。開業は今から30年前。その頃のロイヤルカスタマーは現在では40歳を超えています。繰り返すリリピートに対して、独身からファミリー層に上手に変化させ、継続的に来園してもらうための仕組みを構築しています。数十年に渡るロイヤルカスタマーの確保は、その層が年齢を重ねるフェーズに合わせて提供するサービスを柔軟に適応させて来ているのです。
ペプシコーラは一時期、コカ・コーラに対抗してティーンのいけてる炭酸飲料というポジショニングを構築して、クールなコーラという地位を獲得しました。しかし、当時のティーンが年齢を重ねる内に、新たに若い層が定着せずに、徐々にターゲットの年齢が高くなりました。すると10年、15年経つとクールな飲料としてのイメージがすっかり薄れました。ターゲット顧客とともに年を取ってしまったからです。
化粧品業界でも市場の成熟化によって2位以下の企業の動きが目立ちます。資生堂はこれまで通りトップオブ化粧品の地位を躍進しています。一方で当時から4位の位置にいたポーラ化粧品は従来からの販促方法に大きな変化を見せています。働く女性が増えて家庭用の化粧品の販売がすっかり低迷したポーラ。再成長の方向性を従来の家の中から家の外に見出しました。全国の訪問販売拠点2400箇所を活用してエステ店を展開。外に顧客を呼び寄せるこれまでと逆の発想に転換しました。これによって、高齢化した従来のターゲット層を見事若返らせ、20代から30代の女性顧客の開拓に成功します。
人口が減少すると従来のドメインだけでは売上が比例して縮小する。これに上手く対応する企業の収益は高くなっています。例えばJR。営業利益の2割から3割り程度を現在では小売などの鉄道以外で稼いでいます。例えば調剤薬局のクオール。これまで病院の立地近くに展開する発想を変え、あえて繁華街に出店攻勢をかけ集客力を高める戦略で成功しています。
市場が成熟すると、各企業は新しい市場にその活路を見出します。ってことは、既存の企業からすると、何を自分達の市場に参入しているの?ってなります。つまり、これまで以上に異業種の戦いが激しくなるのです。先に示した化粧品会社は、富士フィルムなどの素材メーカー、ロート製薬などの薬品メーカー、などと様々な職種が乱立しています。
コンビニエンス各社が相次いで最高益を更新する。このことは食品スーパーの業績低迷とリンクしています。コンビニが惣菜やデザート類を充実することで食品市場全体のパイを取り合う形になるからです。これは同様にファミリーレストランのような外食産業にも同様な影響を与えます。