牛丼市場。現在は、すき屋、なか卵、吉野家、松屋の4社がほぼ市場を席巻していあす。年間の国内売上で、すき屋が1000億、なか卯が290億(ゼンショー合計1290億)、吉野家が900億、松屋が630億の規模です。これを見るとゼンショーグループが飛び抜けているものの、吉野屋、松屋の3社の戦いがよく判ります。
ゼンショーは2009年末になか卯を完全小会社化。そしてなか卯の位置づけを牛丼店ではなく、和風のファーストフードとして、牛丼の値段を350円に設定しました。一方で、ゼンショーのメインであるすき屋、2009年4月に牛丼並を350円から330円に値下げ。さらに、その年の12月には280円に、徹底した低価格路線を貫いています。松屋を展開する松屋フーズもこれに追随。牛丼並250円キャンペーンを実施しながら、同ブランドの強みでもあるカレーや定食などのサイドメニューへの誘導を実現しています。すき屋、松屋は牛丼の価格で顧客を呼び寄せ、他のメニューで利益をあげているのです。
吉野屋。牛丼の老舗ですが、実際は一番苦戦を強いられています。牛丼並380円は他のチェーンと比較すると割高。値下げ競争の牛丼市場では後塵を排しています。吉野家は安い、早い、旨いの三拍子を唄いながら、味にはこだわりを見せています。そのため他のチェーンがオーストラリア産等の牛肉を使っているのに対して、アメリカ産に拘ります。これが、思うような値下げに踏み切れない理由です。また牛丼に絞っているため、他のチェーンのように別メニューでの下げ止まりを狙う作戦も出来ません。
味に拘ったことで、他社の牛丼値下げ集中攻撃に対応できず、地位を守りきるのに必死です。考えてみると、味の違いに拘っているけれど、顧客はあっさり裏切ってしまいました。安い、早い、旨いというポジショニングは機能的な価値を提供しています。これはモノサシがあるので、簡単に他社と比較でき、かつその優劣は一目瞭然です。特に安さにおいては、多少の味も違いがあっても、一番目立ち易い部分ではないでしょうか。
機能的な面でのブランディングはよいけれど、それだけではすぐに他社に模倣さる。一方で、この部分が不足していたら顧客の集客は難しい。吉野屋が更に成長するのであれば、牛丼はこのポジションのままにして、海外で成長する。加えて、京樽、はなまる、どんでは、感情的な価値の構築を実現する。これまでの吉野家のような合理的な要因での集客のみでは、大きな成長は難しいでしょう。
成熟しているビジネス、市場全体の力関係、規模。様々な要因を考えると、これまでのアプローチの限界が900億円。他の分野のポートフォリオと海外でも地域を絞った牛丼の進出が次の成長の鍵だと思います。