顧客ターゲットを特定する時に、セグメンテーションは重要です。これまでのリクツでは消費者は自分が商品を購入する理由を明確に分かっている、を前提に、顧客の購買プロセスを分析してマーケティングのシナリオを考えていました。しかし、実際、顧客にヒアリングをするから、購買した理由をその時に考える、という考え方もあります。また、消費者の購買の95%は無意識に行われている、という研究結果もあります。
例えば、自分が何か購入するとき、何故買ったかは明確にわからないけど、後で理由付けをすることは多々あります。感情で買って、あとでリクツを考える。です。しかし、法人企業が何かを購買する時は違います。理由は、購買対象が組織であり、その商品を使って自社のビジネスをやり易くする、或は長期的な利益を追求していくために購入するからです。
ということは、B2Bのマーケティングは、B2Cと比較して顧客のベネフィット(購買するための理由)が明確であるということが言えます。セグメンテーションという作業は、自分たちがビジネスを行い易いように、顧客のベネフィットを軸に様々な市場を切り分けて分析する作業です。B2Bのセグメンテーションは、以前示したように、企業毎に大きく分けたあと、重要顧客については組織を更に分けて行く緻密な作業が可能です。
その時に、今度は組織からヒトにフォーカスすることも可能です。消費者の場合は、何故買うのか?は分析しにくいですが、相手が法人の場合、その理由が明確だから、逆に組織に属する個々人のベネフィットも明確に抽出することが可能です。
例えば、役割の違い。役割が高いヒト、通常社長や事業部長など、会社側の人間の購買する目的は会社のベネフィットに従います。従って、商品の購買を通じて利益を追求することを第一の目的とするでしょう。しかし、役割が低くなると様子が異なります。現場にいるヒトは、自分の仕事がより楽になればいい!と考えるでしょう。中間管理職としては、現場からの情報と上からの指示の板挟みにあります。従って、どちらの満足も満たしながら自分の仕事がこなし易くなることを望むでしょう。
このように組織を分析したあと、今度はそこにいる個々人レベルを分析することで、よりマーケティング活動をしやすくなるでしょう。役割の違いによって決算権限や決済金額も異なります。大企業といっても部長クラスではそんなに大きな金額の決済権限を与えられていません。
例えば、リテラシーの違い。リテラシーとは、その仕事内容に精通しているか否か、などと捉えると良いでしょう。役割が高いからといって、その業界のことを良く知っているとは限りません。サラリーマンですから異動があります。部門のトップに立つ役割のヒトであっても、全く違う分野で成績を上げたヒトも多々います。もちろん、叩き上げでその地位を獲得したヒトもいるでしょう。
従って、リテラシーの度合いを観察しておくことは大切です。仮にリテラシーが高いヒトは、ある程度自分が考えているようなシナリオで企業の長期的な利益を高めて行きたいでしょう。その場合のB2Bマーケティングのポイントは、そのヒトの意向を最大限に引き出しながら提案に組み入れることでしょう。逆に、リテラシーが低ければどうでしょうか?ヒトにもよりますが、丸投げニーズが存在するかも知れません。この場合は、B2Bマーケティングのポイントは相手を慮りながらも、こちらのベストな提案を見せてあげれば良いと思います。ただ、丸投げニーズがある場合は、自分の保身には関心があります。そのため、過去の導入実績や大手との取引、自社のブランドなど、この企業に任せておけば大丈夫!という感情的なベネフィットを全面にだすことも大切です。
企業を大まかにセグメンテーションした後は、組織を切り分ける。その中で意思決定のプロセスを分析して、最後は個人レベルまで考える。B2Bマーケティングの場合、購買プロセスの中で誰に対してどのような情報提供を行ったほうが良いのか?いつのタイミングで誰に提案したほうが良いのか?組織の意思決定の流れに加えて個人レベルのベネフィットや権限や力関係を理解しておくことができるのです。B2Cよりも緻密に戦略が立てられるのです。