既存という枠組みを考えたとき、新規という概念が生まれます。
例えば、アンゾフの製品/市場マトリクスも、現状の製品と市場に既存と新規という概念を用いて、4つの象限にわけとるべきシナリオを整理しました。成熟している市場において更に売上を伸ばそうと考えても、既存市場だけではなかなか成果があがりません。市場にが飽和していることは知っていても、その他の市場に目を向けることはなかなか難しいことです。これは、既存という概念を意識していないためです。従って、新規(この場合、既存で取り組んでいる市場以外の全て)の存在をなかなか認めようとしません。
この事は、ヒトが学習し成長するフェーズにも当てはまると思います。これまでの自分の考え方を改めて認識できたとします。すると、それ以外の考え方がある事に気がつきます。これまで自分が考えた背景や考え方の癖、思考経路などを整理する事ができたとします。するとそれ以外の考え方がある事に気がつくでしょう。つまり、既存の考え方を整理すると新規の考え方の存在を知る事になります。
しかし、多くの場合、自分の考え方がどのようなものなのか?という事を認識していないことが多いでしょう。新しい考え方を身につけるためには、先ずは無意識に自分がどのように考える傾向が強いのか?それを意識的に知る事が大切です。自分の考え方を認識出来れば、自分とは違う考え方を認知することが出来るでしょう。そして、新しい考え方は、自分の考え方と違うという事を理解出来るので、批判する必要もありません。受け入れ易くなるのです。
モノゴトを習得する場合、過去の経験や知識が邪魔して、なかなか身に付かない場合があります。その場合、一旦忘れることも大切です。空手でも剣道でも書道でも、お茶でもお花の世界でも、修行を積んでいく過程に守、破、離のプロセスがあります。
守、とにかく基本を馬鹿にせずに、1から10まで手取り足取り型通りに行います。自分のやり方を正しく認識していれば、新しく身に付ける技や考え方は、全く違うものだ。だから、基本を受け入れて、これまでのやり方を一旦忘れよう!そんな態度が重要になります。一見、型通りで融通が利かないやり方だと思えるでしょうが、型が身に付くまではとても大切なプロセスです。
破、いよいよ型が身に付いた時点で破ります。守のプロセスをしっかり踏んでいることが大前提ですが、型を破っていく過程で新しい発見や応用を身につけて行く事ができるでしょう。そして離。守と破の次のステップが型から離れていくプロセスです。始めから我流で行うものと少し違うと思います。基本がしっかり出来ているからこそ、オリジナルが芽生える。そんなイメージでしょう。
守破離のプロセスを例えに出しましたが、大切なことはそもそもの型を知る事。無意識に自分がどのように考えているのか?を理解し、それを型や体系化して捉える。無意識から意識の世界に入ることで、自分の考え方や特徴を俯瞰してみる事ができます。意識的に自分の考え方を体系化すると、意識的に新しい考え方が見えてきます。受け入れ易くなります。そして、その新しい考え方が身に付き、なじみ、当たり前になったとき、その新しい考え方が無意識に出来るのです。
つまり、無意識に当たり前の考え方が定着して、新しい考え方が自分にとって既存になる。無意識の既存。基に戻ります。このサイクルを繰り返していくことで、どんどん自分を成長させることができると思います。