企業目的の1つに顧客満足の継続的な向上があります。しかし、この言葉が一人歩きを始めると、本質的な活動が見失われます。つまり反対の側面、不満の視点がうすれるのです。不満を放置してはいけません、見つけては改善することが大切です。この作業は地道ですが、極めて重要な側面を持ちます。
そもそも顧客満足とは、顧客が製品の購入やサービスの利用において、その前と後の期待値の差分です。事前の期待値より事後の期待値が高ければ満足度があがります。逆に、事前の期待値より事後の期待値が低ければ不満という結果になります。当たり前ですね。しかし、当たり前のことには多くのヒントが隠されています。満足ではなく不満にフォーカスする場合も然りです。
不満を分析する場合、事前と事後に分けて、いつ、どのように不満が生じるのか?を考えます。多くの場合、メインの商品以外に不満が発生することが良く理解できるでしょう。理由は、メインの商品は自分が目一杯魂を込めて提供しているからです。
蕎麦屋さん例です。時々、カツ丼や他のメニューを出している蕎麦屋さんがあります。早嶋は食いしん坊なので、蕎麦と一緒に頼んですぐセットをつくります。そんな時、だいたい蕎麦は旨いです。しかしカツが今ひとつ。良く思います。このお店、蕎麦だけ出していれば、満足度が高いのに、メインではないサブのカツ丼で損している、と。そう、メインの商材は誰であれ気合いを入れています。しかし、サブの商材は、メインの気合いが抜けているのです。そして、ここに不満を感じる。実に寂しいと思います。蕎麦屋さんが出さなくても良いカツ丼のせいで評判を落としているのです。
不満に注目する理由はまだあります。例えば、過去に不満を覚えた体験を思い出してみてください。そして、その後、どのような行動をとったかを。多くの人は、何もしない、と答えたことでしょう。そう、ほとんどの人が不満を覚えても、何もしないのです。この行動をサイレントとしましょう。顧客がサイレントの行動をとっても、企業側は分かりません。寧ろ、顧客は満足していると勘違いするかも知れません。だって人は、自分が大好きですから、自分が提供している製品やサービスに満足しているだろうと思う傾向が強いからです。
サイレントの行動は、企業には黙っていますが、友人や知人に負の評判をするかも知れません。もう二度と買わない、という不買行動をとるかもしれません。そう、サイレントは、顧客が黙ってるので、いつまでたっても自分たちでは気づきにくいのです。これを考えると、普段から企業に不満を伝えてくれる人に感謝すべきです。だって、基本誰だって嫌なことを伝えるのは気持ちが乗りません。しかし、それを乗り切ってまで、企業に連絡するということは、相当の不満を持ったからなのです。ほとんどの人がサイレントであること、不満を伝える勇気を考えると、この手の意見を尊重する姿勢が出てくるでしょう。
満足にフォーカスすると不満の側面が見えてきません。従って、早嶋は不満は無いか?にフォーカスします。満足は、ある程度の製品やサービスを提供することができれば、それ以上を提供しても、顧客が認知できない場合もあります。それ以上を提供するということは、多大なる努力やコストがかかります。ここは、どこまで提供するのか?という満足度のレベル間にもルールをもうけて対応すると良いと思います。
一方、不満をマイナスにしたままにしておくと、全てが台無しになります。従って、不満はマイナスの部分をゼロにすることが大切です。そのための考え方に、製品やサービスを提供する前、する時、した後などに分けて、プロセスに分解し、個々のプロセスにおいて、不満は発生していないか?どのような不満が発生する可能性があるのか?を分析する方法があります。
例えば、引っ越しサービスを考えてみます。引っ越しのメインのサービスは、あるモノをA地点からB地点まで移動させることです。しかし、そのことだけにフォーカスしても満足度はある程度まではあがりますが、不満をゼロにすることはできません。A地点からB地点の移動は、はじめから期待しているサービスなので、特殊なモノの移動を除いては、達成することが当たり前だからです。
そこでメインでは無いサービスに目を向けます。といっても、この場合は、その移動を終了するまでの全体のプロセスに注目します。引っ越しをする前、引っ越しの最中、引っ越しした後などです。例えば、引っ越しの前は、次のようなプロセスがあるでしょう。引っ越し業者の選定→見積もり→決定です。
このように、プロセスに分解したら、次は夫々のプロセス、そのプロセスに移行するまでの間、に分けて、不満を感じる瞬間は無いか?と顧客目線で考えます。
引っ越し業者の選定
●探したい時に、すぐに情報が得られる(電話、Web等)。
●仕事内容や料金等の情報が十分である。
●気軽に問い合わせできる仕組みがある。
等々
引っ越し業者の選定→見積もり
●コンタクトした内容に対して迅速にレスポンスを返す
●必要情報を分かり易く提供してくれる。
等々
見積もり
●見積もりの根拠が明確で透明性が感じられる。
●できるだけユーザーの要望に耳を傾けてくれる。
等々
上記のように、個々のプロセスとプロセス間の繋がりにおいて、顧客が不満を感じる要素をピックアップしていきます。それぞれの要素のうち、もし実際の顧客が不満を感じる点があったら、改善する方法を考えましょう。不満の場合、マイナスからゼロにするだけで、かなりの効果があります。
満足にだけ気を取られると自分たちが提供している製品やサービスそのものに注目して、それらを提供する一連の流れに目がいきません。不満をゼロにしなければ、高い満足度も得ることができないのです。