早嶋です。
2000年後半。ヤマダ電機の郊外から都市部への進出によって大手家電量販店の絵図が変わりました。ヤマダが動く前は、普及品を大量に売る郊外型の量販店と接客や商品知識の提供によって高価格帯の製品を多く取り扱う都市部の駅前型量販店と、営業戦略を大きく2つに分けて行っていました。
しかしヤマダが動いた後は、池袋を中心に既存の量販店と価格競争を繰り広げ、都市部の平均価格が下落しています。メーカーにとっては痛手、値下げの原資をこれまで以上に負担しなければならなくなるからです。国産のテレビが赤字になり、製造を全て外注する構図になった理由の一つかもしれません。
今後の大手家電メーカーは、従来のように駅前と郊外で販売戦略を変えるのではなく、より細かく製品一つひとつに細かく営業戦略を練らなければならなくなるでしょう。しかし、だからと言って従来のような利益率を確保するのは難しい構造になっています。
ヤマダが動く前の新宿を考えてみましょう。従来は、ヨドバシとビックが大型店舗を構えて、互いに必要以上に価格戦争を仕掛けなかった結果、比較的安定した価格帯と利益率を維持していました。しかしヤマダが動いた後は、そうのんびりできません。ヤマダは昨年から今年にかけて東口と西口に大型店舗をオープンしました。これに引っ張られるような形でヨドバシとビックは売り場面積を拡大する策を講じています。
ビックは来年の夏ころに三越伊勢丹の専門ビルに同社最大級の店舗を出店します。ヨドバシも、新宿最大の売り場を誇っていた西口本店の近隣ビルを取得して倍の売り場面積にする計画です。
これは池袋を抜いて、新宿が大手量販店の激戦区になることを意味します。現在、大手三社の売り場面積は池袋が4.5万㎡、10年度の推計で売上が1700億円。これが上記の計画が3社進めば、新宿の売り場面積が現在の4万㎡から倍の8万㎡になります。しかし、売上は推計で1.5倍の2500億。
これは何を意味するのでしょうか?売り場面積を倍にしても売上は1.5倍。床面積あたりの売上が減少してきます。ヤマダの拡大によって、他社も引っ張られていますが、これは正しい姿なのでしょうか?やや疑問です。