アンゾフの成長モデルを考えた場合、企業が浸透戦略以外の一手を考える場合の理由は次の通りでしょう。
市場の成熟化、グローバル化、情報革命によるビジネスモデルの変化。
市場が成熟するとこれまで通りの成長は望めません。そこで、既存のビジネスがダメなら新規市場へ、国内がダメなら海外へ、と発想が広まります。しかし、新規とか海外とか。何か新しいとんでもなく素晴らしい市場が広がっているように聞こえますが、必ずしもそうではありません。
むしろ、その市場も既にドロドロしている場合が多いでしょう。例えば国内の新市場は、既に99%くらいは、その新市場と言われる既存の市場でのプレーヤーが存在します。つまり、かならずそこには競争相手が存在します。もし、別の業界からその市場に参入した場合は、異業種との競争戦略という概念が当てはまります。
海外でも既に日本のようなビジネス環境に陥っている国は上記と同様の状況が考えられるでしょう。発展途上国に限っては、プレーヤーがまだ存在しない、或いは少数の場合もあるでしょう。しかし、少なくとも敵が全くいない市場は考えにくいと思います。
このように考えると、昨今のような成熟したビジネス環境では、業界の競争に加えて異業種間の競争が発生しやすい環境にあると言えます。
他に、ネットの環境によっても企業は影響を受けています。理由は、ネットの環境変化によって、消費者の購買行動のスタイルが変化しているからです。例えば、10年前は、今のようにネットをビジネスに使っていたか?と質問すると、まだまだ一定の企業の専売特許だったとおもいます。しかし、今はネットを取り入れていない企業は皆無でしょう。
つまり、スタイルが変わっているのです。
消費者は昔のように家からでることなく買い物ができます。情報収集ができます。秋葉原では、価格コムで市場価格を調べてきて、そのリストを手に値段交渉を行うお客が出現しています。価格コムに掲載されているショップは、全てが実店舗を持ったリアルな店舗だけではないので、秋葉原にある実店舗を持っている企業にとっては脅威でしょう。
少し考えると分かりますが、Webショップのみのお店と実店舗を持ったお店はコスト構造が全く異なります。従って、最安値を実店舗が叩き出すのは非常に難しいでしょう。
ひどい顧客は、価格コムのリストを持っていき、最安値以下の交渉をしかけてきます。ネットショップで最安値だとすると、仮にその価格に下げても赤字になるのに、それ以下での交渉をされたら・・・、悲劇ですね。
ただ、顧客目線で言えば、じゃ、構造を変えたら?と一言いうかも知れません。これは、業界はおなじだけれども、ネットの出現によって全く異なるビジネスモデルを持つ相手が的になることを理解するために良いケースかもしれないですね。
情報化が促進されると顧客と企業の情報の非対称性は解消されます。むしろ、企業よりもある商品に関する知識は、一瞬顧客の方が上になるかも知れません。その商品を購入するために一生懸命商品知識や他のバックグラウンドに関する情報を集めるからです。
昔は、情報格差を良いことに、企業に都合がよい情報を操作して上から目線の販売促進活動ができたかもしれません。しかし、今は不可能です。何度も言うとおり、顧客も情報武装しているからです。すると、顧客志向に成らざるを得ないのです。