日本国内には18社のセメント会社があります。この業界は今後再編が激しくなるでしょう。
例えば、国内は大手2社の太平洋セメントと住友大阪セメントが首位を占め、残り数社と順位が明確になっています。過去、数度の業界再編は起きていましたが、昨今の国内市場はさらなる縮小、そして米国市場の厳しい状況が続いています。
最大手の太平洋セメントは米国事業の赤字継続によるファイナンスリスクを抱える、一方業界2番手の住友大阪セメントは海外進出を目指していますが、独力での海外展開にはヒト、モノ、カネの負担が大きくなります。この2社はM&Aを加速すること等は考えられると思います。
しかし、この2社が協業したとしても、収益力を見ると世界最大手の企業と大きく格差があります。直近の売上高営業利益額を比較すると、ラファージュ(フランス)2450億円、ホルシム(スイス)2436億円、太平洋セメント105億円、住友大阪55億円です。
最大手のラファージュは、積極的な新興国の進出によって高い利益率を確保する仕組みを構築しています。国内の環境は、上記でみたように互いが価格競争を行い低採算に苦しみ、課題とする海外進出が進みません。
国内のセメントは、一言でいえばドメスティックです。住友大阪は2006年の中期経営計画で海外事業の立ち上げを掲げていましたが、実行したのは中国企業への実質8%程度の出資のみです。太平洋セメントは米国やベトナムに工場を持っていますが、海外売上比率は2割を切ります。つまり、どにらのメーカーも国内専業です。
国内のセメント市場は頭打ち、今後は減少傾向になるのは見えています。セメントはバルキーな商品ですので、どうしても供給地域に工場を持っておかないと流通の面から不利になります。対して、世界のセメント需要は年間4%程度で成長しています。
セメント業界の鍵は国際展開、特に新興国の経済成長を追い風に世界のセメント需要はここ10年間で9割も増加しているというレポートもあります。最大手のラファージュは07年以降に、中国、エジプトで現地企業のM&Aを展開してきました。2010年12月期で、売上の50%以上、営業利益の70%以上を欧米意外で稼ぎ出しています。ホルシムも同様に利益の8割以上を欧米以外の国々で稼いでいます。
セメント業界。独自の成長を続けてもスピードと体力が持たないでしょう。かといって、積極投資に乗り出そうとも、その原資を調達しにくい環境にあります。何もしないか、再編の波を利用して大手の資本を注入して日本の技術を海外の途上国で用いるか。
非常に注目すべき業界だとおもいます。
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