例え話です。ある国では住宅だけの産業が存在したとします。
その国では、ベビーブーマーが高齢化し、退職する一方で、少子化が進み、子供が少なくなったために生産年齢人口が減少していました。そこで、生産体制を強化するために、住宅を提供するまでの殆どの作業が自動化されロボットによってある程度は生産できる体制が整っています。
ところが肝心の消費者が家を購入しなくなっています。消費者の頭数が減少しているからです。高齢化したベビーブーマーはお金を持ってはいますが、将来の日本に不安を抱え、年金の一部までを貯蓄に回し、あまりお金を使おうとはしません。また、生産年齢人口の世代は家が買いたくてもお金がありません。がんばって購入する生産年齢人口の世代もいますが、昔よりもずいぶんと数が減ってきています。
その結果、住宅産業では大量の在庫が発生して、仕方が無いから時々採算割れ覚悟の価格で住宅を叩き売りの状態で処分していました。
そんな時折、その国のマクロ経済学者は、わが国はデフレが起きて価格が安くなっている!という解釈を行います。そこでその国の政策としては、じゃんじゃかとお金を刷りまくれば、住宅のたたき売りが無くなる!ということを信じます。
しかし、この政策はあっているのでしょうか?もし、お金をじゃんじゃか刷って、そのお金で公共事業をじゃんじゃか行って、そのお金が国民の手元に還元されたとしても、それを受け取った国民は住宅を購入するでしょう。
しかし、ベビーブーマーが若かった当時と比較して、その国の生産年齢人口はとても少なくなっているので、やっぱり住宅はそこまで売れません。リタイアしたベビーブーマーは既にローンの返済を終えた持ち家を持っているので住宅の購入に興味を示しません。
そんなこんなで結局、その国の住宅産業は低迷を続ける事態には何ら変りが無いのです。
さて、これは住宅産業に限った話ではなく、自動車産業、電化製品などにも相当するでしょう。そう、現在の世の中、景気がよくなる!と言うのは神話かも知れません。人口ピラミッドのいびつな形が示すように、顧客である生産年齢人口が一気に減少しているのです。
たとえ話かもしれませんが、日本の現状の本質と大きく変わらないでしょう。
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