ドラッカーは著書、ネクスト・ソサエティの中で、次のような事をいっています。「eコマースのインパクトについてもう一つ重要なことを教える。流通チャネルは、顧客が誰かを変える。顧客がどのように買うかだけでなく、何を買うかを変える。消費者行動を変え、貯蓄パターンを変え、産業構造を変える。ひとことで言えば、経済全体を変える。」(1999年初出)
10年前に書かれた文章ですが、今はeコマースのインパクトを十分感じる世の中になってきました。消費者行動の変化が産業の構造を変える、これは例えば昔なら広告代理店やマスコミは花形産業でしたが、今では構造不況業種とまで言われているように実際のものになっています。
この事に関して、Web2.0ではウィフィーが大切!という切り口で面白い論文を書いているeコマースのマーケターがいます。THE WHUFFIE FACTOR、タラ・ハントさんです。ツイッター等が紙面でも盛んに報じられていますが、Web2.0のツールそのものに関するよりも、Web2.0によってビジネスモデル、消費者行動の変化に関して大きく変わる事を示唆しています。
ウィフィーとはSF小説に出て来たキーワードですが、タラ・ハントはこの言葉を使ってWeb2.0でのビジネスをうまく説明しています。ウィフィーは、信頼や評判、尊敬や影響力、人脈や好意などの積み重ねによって生まれるもので、金銭の尺度とはちがいます。これは、企業と顧客、企業と関係企業、企業と社会の中に生まれるものです。
Web2.0が当たり前になってきた今の世界では金銭も重要ですが、企業として、個人としウィフィーをどれくらい持つのかによってもビジネスの行い方が変わってきます。つまり、今後のビジネスではウィフィーを増やしていくことがキーになるのです。
一度や2度は経験したことがあると思います。どこからともなく口コミで美味しいパン屋さんの噂を聞いて、買いに行く。口コミの評判通りだったので、また仲の良い友達にお話をする。これもいわゆるウィフィーです。
Web2.0が登場する前、メディアがある種の業界に握られていた頃。物を買わせよう!という動きがあり、テレビや新聞などのマスメディアを資本力で動かすというのがありました。全てにおいてではありませんが、企業からの一方的なやりとりです。Web2.0になると一変します。ある論文では、Twitterはテレビ広告よりも効くという事例も示されていました。
現実の世界がそうであるように、Webの世界でも嘘はすぐにばれ、信頼を失います。1日、10万人くらいアクセスするブログを書く人をαブロガーといいます。彼ら彼女らを囲って、企業に都合が良いようにブログを書いてもらうマーケティングの手法がありますが、その内容に偽りがあれば、遅かれ早かれすぐにばれてしまいます。そして、それによるマイナスの影響ははかり知れません。
Web2.0では、何よりも信頼を勝ち取る事が重要視されるのです。その概念をウィフィーと定義して体系化されています。
早嶋聡史