ビール国内首位のアサヒビールが同業世界最大手のカールスバーググループと海外販売で提携するニュースがありました。これまでに両社に資本関係は無く初めての業務提携となるようです(日本経済新聞)。
08年の国内のビール関連の販売量はピーク時の94年から16%減少しています。速報値では09年も前年の数値を下回っています。少子化、若者のアルコール離れ、景気の低迷。確実に今後も市場規模は週リンクするという判断でしょう。そこで国内の内需依存を改める必要に迫られているのです。
アサヒビールが目をつけた新市場はまずは香港。カールスバーグが強い欧米系飲食やコンビニ、スーパー向けにチャネル開拓を行いスーパードライを売って行きます。これまで同社は和食レストランに限った展開を行っていました。香港の市場は1300万ケース。日本が5億ケースなので規模は小さいですが、成長市場と捉えています。
国内市場に見切りをつけて、海外市場に目を向ける国内の企業。これまで以上に加速するでしょう。しかし、多くの企業はピラミッドの頂点をターゲットにビジネスを加速していますが、今後のトレンドとしてピラミッドの底辺に焦点を充てるビジネスを検討せずにはいられなくなるでしょう。
BOP、Bottom(or Base) of the Pyramidの略。世界の所得レベルをピラミッド状に例えたとき、所得階層ピラミッドの最底辺で暮らす人々を指す言葉です。統計的には年間所得が3000ドル以下で暮らす低所得層です。しかし、人口規模は世界で40億人。つまり、地球人口全体の7割をカバーするのです。
BOPの先駆けはグラミン銀行です。バングラディッシュ・チッタゴン大学経済学部長のムハマド・ユヌス氏が貧困層に個人的にお金を貸したところ、借りた人が経済的に自立して、返済率が思ったよりも良かった事より、83年頃より正式に許可を取って設立した銀行です。この銀行の付与制度はマイクロクレジットと呼ばれ、女性を中心に500万人以上に貸し付けが行われています。詳細はC.K.プラハード著のネクストマーケットに譲りますが、これまでビジネスにならないと考えられていた方を対象にビジネスを行う新しい概念です。
アマゾンのロングテールを考えると理解しやすいかもしれません。しかし、通常我々の生活レベルを考えていればとてもビジネスになるとは考えにくいのも事実です。そのため、日常ではあまり耳にされませんでしたが、グローバルでビジネスをしている企業にとっては重要なキーワードの一つです。
フランスに本社を置く国際的な食品関連企業であるダノンは、BOPビジネスに先行投資をしている企業のひとつです。低価格ヨーグルトであるシャクティ(価格は日本円で約8円)を開発して、低所得者の市場で受け入れられる水準で、かつ、食料事情の悪さで不足がちなヨウ素、鉄、亜鉛、ビタミンなどの微量元素を配分しています。バングラディッシュでは約500名のシャクティ―・レディーが1日に約3万4000食のシャクティ―を販売しています。
ダノンはグラミン銀行と協力してバングラディッシュの首都ダッカの北西にヨーグルト工場を建設して、2010年度には2つ目の工場を作る予定です。ダノンの関係者によると「ダノンがバングラディッシュに投じた2000万ユーロは投資に見合う利益は期待できない。しかし、食を通じて世界の人々の健康に貢献する(日経新聞)」としています。
確かに立派な社会貢献ですが、ダノンはシャクティを通じて最貧国での事業ノウハウの獲得して新興国のビジネスにつなげる明確な意図があるのでしょう。
早嶋聡史