早嶋です。
本日は、終日仙台、富士フィルムさんの研究職向けにマーケティングの研修でした。参加者の方々、お疲れ様でした!
「経営者の使命は、手段にしか過ぎない製品を生産することにあるのではなく、顧客を作りだすための価値の満足感を提供することにある」これは、1960年にハーバードビジネスレビューに投稿されたセオドア・レビットの論文「マーケティング・マイオピア」の一文です。
この論文では、鉄道業界の衰退を例にマイオピア=近視眼の例を説明してます。鉄道会社は鉄道という形態に固執し、旅行者や貨物をA地点からB地点まで運ぶという機能を忘れてしまいました。その結果、同じ機能を満たすモータリゼーションについて楽観的かつ否定的なポジションをとったために衰退したのです。鉄道業界は、鉄道という形態を発展することには必至でしたが、自分たちの価値や顧客にとっての機能を輸送事業として捉え再定義することはできなかった。論文ではこのような説明が続きます。
上記を近視眼的なマーケティングだとレビットは主張しています。そして、近視眼的発想から抜け出すためには、創造的な破壊を繰り返し、事業の定義を顧客中心にとらえなおすことで永続的な成長の基盤を得ることができると。この考え方はその後の経済成長に一役買い、多くの企業に採用されたのは周知の事実です。
しかしマーケティング・マイオピアにも否定的な面があります。それは、近視眼的な視野の拡大は時として無理な多角化を招くからです。鉄道やがやみくもに自動車屋や飛行機屋に参入できるわけではありません。これは、いわゆるマーケティング・マクロピアと呼ばれます。
マイオピアになりすぎず、でもマクロピアにもならない。このバランスが実に重要なのです。そこで一役買う概念が事業の定義、いわゆる事業ドメインと事業コンセプトです。事業を定義する場合、誰に何をという市場発想からのニーズも重要ですが、自分たちが持っている経営資源や強みを考慮した上で顧客を選定して自分たちの事業ドメインとコンセプトを明らかにしていく。
近年のマーケティングでは、この事業ドメインやコンセプトをまとめてアンビション(戦略的な意図)として表現されています。