早嶋です。
午前中に仕事を終え、午後は終日ジェフリー・ムーア三昧でした。久々にムーアの著書を読み返しました。ムーアはキャズム理論を提唱した著名なマーケティング・コンサルタントです。
キャズム(chasm)とは深い裂け目や氷山によって出来た深い裂け目を表す言葉です。通常、イノベーションの導入は正規分布によって示されるライフサイクルがあり、エベレット・ロジャーズの普及理論によって広く一般化され、それぞれの顧客カテゴリーを5つに分類されています。イノベーションは革新性の違いによって、人によって受け入れ度合いが異なるため時間的なノイズが生じます。
ロジャーズが分類した5つのカテゴリーはイノベーションを採用する人たちを時間軸で区切ったものです。イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティー、レイトマジョリティー、ラガードです。
マーケティングを行う際、これらのカテゴリーに応じて異なった施策を提供しながらイノベーションを広げていくことが一般的です。ムーアはこれに対して、イノベーターとアーリーアダプターで構成される初期市場と残りのアーリーマジョリティー、レイトマジョリティー、ラガードで構成されるメインストリーム市場の間には、容易には超えられない溝がある、すなわちキャズムが存在すると提唱しています。
イノベーションがメインストリームで利益を生み出すにはこのキャズムを超える必要があるのですが、多くのイノベーションはキャズムを超えきれずにいると指摘しています。そのため多くのイノベーションが規模の小さな初期市場の中で消えていく運命をたどっています。
ムーアはこの理論を普及理論とプロダクトライフサイクル(PLC)理論を重ねあわせて説明しています。ムーアのキャズム理論が明快なのは、単にキャズムの存在を指摘してメカニズムを解明するのに加えて、そのキャズムを如何に乗り切るか?つまり、クロッシング・ザ・キャズム戦略にまで言及している点です。
ムーアの理論に興味がある方は、是非以下の書籍に目を通してみてください。
「キャズム」1991年の著書、キャズム理論の全貌について解説。
「トルネード経営」1995年の著書、キャズムを超えた後の企業経営について解説。
「企業価値の断絶」2002年の著書、企業価値を如何に高めるかについて解説。
「ライフサイクル イノベーション」2005年の著書、ムーアの理論体系の全貌を解説。