早嶋です。
北京オリンピックを前に、水泳界では水着問題で揺れています。事の発端は、スピード社の新素材を使った水着、レーザー・レーサー(LZR RACER)。2月に発売されたこの水着はとにかくすごい。何がすごいか?着用すると確実にタイムを更新するのです。実際にレーザー・レーサー着用選手が既に35個の世界新記録を更新しています。
また、国際水泳連盟(FINA)から「浮力の優位性に関する化学的な根拠はない!」との正式なお墨付きをもらい、まさに世界的に話題となっている水着なのです。
レーザー・レーサーは、スピードインターナショナルの研究開発チームであるアクアラボが3年以上の歳月をかけて開発しています。しかも、400名以上の世界中のトップスイマーでテストを重ね、NASAをはじめとする国際的な研究機関や専門家の協力を得ている恐るべき水着なのです。
特徴は「縫い目がない」世界初の無縫製競泳水着。3つのパーツから成り、立体構造で、あたかも自分の肌のようにボディーにフィットする。完全にカバーされるように内側に溶着されたファスナーは、ものすごくフラットで流体力学的にも優れた効果を発揮するとか。
実に素晴らしい水着が登場して、それで、何が問題・・・?
日本選手にとって深刻な問題なのです。なぜなら、レーザー・レーサーをオリンピックで着用することは不可能だからです。これは、オリンピックがスポンサービジネスになってしまった事に起因します。北京オリンピックで日本代表の水泳選手が着用する水着は、アシックス、デサント、ミズノの3社のみ。つまり、どんなに素晴らしい水着でも日本選手は着用することを許されないのです。
そこで、あせった日本水泳連盟は、上記の3社に水着の改良を求めます。しかし、その3社、レーザー・レーサーに対応できる素材なんて持っていません・・・。しかし、救世主現るです、山本化学工業。
同社は、競泳界では無名の存在でしたが、トライアスロンや遠泳の世界ではメジャーな会社。6年も前から世界中のメーカーの依頼を受けて、アウトドア用の水着素材の開発に着手。新素材を使ったレーザー・レーサーに対抗できる素材、バイオラバースイムを開発していたのです。そして、既にニュージーランドのブルーセブンティー社が商品化しており、FINAの認可も取得済み。
山本科学工業の山本富造社長曰く、「日本製より英国製がいいと言われるのが頭にきていた。絶対、スピード社より速いです」と。実に素晴らしい!
そしてもう1つ、大企業の滑稽な話が浮き彫りに。実は、昨年の10月に山本科学は、ミズノ、アシックス、デサントの3社に対して、バイオラバースイムの提案を行っていました。しかし、わずか社員数70名程度の中小企業と相手にしなかったのか、山本化学は断られたのです。しかし、今回は間逆。上記3社から山本化学に、別々に素材の提供を依頼されたのでしょう。実際にテスト用の素材を納入しているからです。
山本社長曰く、「五輪で、日本の技術屋は大したものだと思ってもらえれば、それだけでいい」。実にシャープなコメント。山本社長以下、社員数わずか73人の大阪の町工場が、現在進行形で世界に挑んでいるのです。
日本の中小企業は、まだまだ絶好調なのです!