早嶋です。
家の間取りやマンションの間取りを見ていると、台所や洗面所、トイレ、それぞれの部屋などをつなぐ廊下や出入り口など、日常的な生活を行う上で最も効率的に動けるように動線が考えられています。
知人のデザイナーは、更に、その家に住む家族構成やライフスタイルを調査して、10年後、20年後に動線が変更する可能性がある場合、それを予見した柔軟性の高い設計をしています。
動線の設計は、住宅に留まらず、小売業にも適用されています。例えば店舗などでは、顧客が来店して精算するまでの動きを計算して動線を作っています。多くの顧客の同行はバラバラに見えてまとまりがあるのです。それは、時計回りであったり、反時計周りであったり、といった具合です。
これは、近所のスーパーを例に取ると分かり易いと思います。顧客は、頻繁にスーパーに来店し、必要な食材を買って帰ります。その中で重要なモノは、買い置きがしにくい生鮮食品。そのため、野菜や果物、肉や魚などの商品は必ず、スーパーの周りに配置されていて、調味料や保存が利く商品は内側に配置されています。これも、効率的に顧客が商品を選択してレジにいけるように考えられた動線なのです。
動線の設計は、顧客の購買欲を喚起するツールとしても利用されます。これを最も利用しているのはデパートではないでしょうか?デパートのように8階も9階も階があれば、最上階に行けば行くほど客足が鈍ってしまいます。そのため、最上階では、催事会場を設けたり、目的買いが多いとされる書籍やおもちゃ、レストラン等を配置しています。
業界ではシャワー効果と呼ぶようですが、一気に最上階まで行って、徐々に下ってもらいながら、ついでに他の階によってもらおうという作戦です。対して、地下に食品、デパ地下に集客を強化して上層階に誘う作戦は、噴水効果と呼ばれています。
また、デパートでは、必ずと言っていいほど、1階は化粧品コーナーです。これも、1階にお客さんがにぎわっているように見せかけて、他の店舗もにぎわっているんだろうな?という誘導作戦です。コンビニの窓際に雑誌や本を置き、立ち読み客が外から見えるようにするのと同じような原理ですね。
他に、動線の究極?と思われるのがワンウェイ・コントロールと呼ばれる売り場作りです。例えば、同じスーパーでも入り口から出口がほぼ1つの動線でつながっている店作りをしている店舗があります。入り口に成果売り場があり、鮮魚や精肉と続き、飲料や冷凍食品、そして惣菜です。惣菜を最後に配置しているのも、惣菜を買う顧客は目的買いが多い統計データからでしょう。
海外の家具メーカー、イケアの店舗動線も完全にワンウェイ・コントロールとなっています。
ワンウェイ・コントロールのように動線を使って、顧客の滞在時間を長くして多くの商品に触れてもらう、顧客の利便性を考えた動線を作る、など目的はあれやこれやありますが、普段の生活の中に動線計画は溶け込んでいるのです。
これを書きながら、福岡の街並みが無造作に作られている(狭い道でも一方通行なんていう発想がない?)なぁと感じています。