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今朝の紙面で、パイオニアは山梨県南アルプスで計画していたプラズマパネルの新工場建設を凍結するとありました。凍結の背景は、1)薄型テレビメーカーの価格競争の激化、2)パイオニアのパネルを組み込んだプラズマテレビの販売不振、による収益悪化です。
パイオニアは、今回のプロジェクトを進めるにあたり、06年夏に既に数十億円を投じて10万m2の用地を取得しています。プロジェクト全体の初期投資額は300億円。
プロジェクト自体は07年に着工して建屋や生産ラインを新設して年度内の稼動をゴールに設定していました。しかし、上記の背景から、今年の1月に計画を延期、今回の凍結に至ったのです。
パイオニアの決算状況を調べてみると、中間決算では今年度3月期の連結営業利益を150億円から100億円に下方修正しています。この要因は、プラズマディスプレイの不振です。プラズマの事業部は、計画80億円の営業赤字幅が145億円に拡大との見通しで、販売台数も計画72万台に対して56万台に引き下げています。
さて、この一連のニュース、数十億円も投資していて勿体無い!と考えた方はいらっしゃいますか?今回の意思決定は、サンクコストの概念を説明するのに最適だと思いました。
サンクコスト(埋没コスト)とは、既に発生して取り消すことが不可能なコストを指します。今回の数十億円がサンクコストです。ファイナンスの世界で、あるプロジェクトの投資の可否を判断する際、a)プロジェクトを実施する場合と、b)実施しない場合でそれぞれ発生するキャッシュフローを計算します。そのキャッシュフローからNPVを計算して意思決定を行います。そのため、サンクコストは、a)の場合でも、b)の場合でも、それ以前に出て行ったお金は相殺されてしまうので、考える事に意味がありません。
今回のパイオニアの例は、まさに用地等の取得費用の数十億円がサンクコストになるのです。今後の状況を見ると、新たに新工場を建てるよりも、パイオニアが決定したとおり、従来の工場での効率を上げた方がより多くのキャッシュフローが見込めると判断したのでしょう。