早嶋です。
ヘレンケラーの言葉です。『ニオイは、私たちを何千マイルのかなたへそしてかつて住んでいた時代へと運んでくれる素晴らしい力を持った魔法使いです。』
秋、キンモクセイの香りを感じるたびにこの言葉を思い出します。
初恋をして、そして失恋をした時期、キンモクセイの花が咲いていました。秋の乾燥した冷たい空気の中、キンモクセイの香りが一段と強い香りを放つのです。
ニオイを感じる部分は、脳の中でも最も古くから発達してる箇所で処理されます。ニオイは、本能的に火事のような危険が迫ってくることを警告したり、腐っていないかを確認したり、生活の中でも重要な役割をしめています。
多くの動物はニオイを通じてコミュニケーションを取ることが確認されています。ニオイを通じ、繁殖活動を行い、獲物を見つけ、危険を回避する。まさに本能的。
鰻の香りに誘われて鰻を食べていた。うどん屋さんで隣の人のカレーの香りにつられてカレーうどんを注文した。もし、意図的にお店がニオイを放っていたとしたら?
映画館でポップコーンのニオイがしないと気分がうかない。新車のニオイに購買後、更に満足を覚える。そんなことは無い、偶然だよ。
違うのです、世の中のマーケターはニオイさえもコントロールしています。有名な企業にシンガポール航空があります。ステファン・フロリディアン・ウォーターズ。一風変わった名前ですが、シンガポール航空が特別に調合したアロマの名称です。
このアロマ、フライトアテンダントの香水に使われ、離陸後のオシボリにブレンドされ、機内全体にスプレーされています。シンガポール航空に一歩踏み入れると、無意識の内にシンガポール航空を感じるようになるのです。
ロールスロイスが新しいモデルを発表した時、歴代のモデルのレベルに至っていないという苦情を受けました。その詳細を調査した会社の結論は唯一つ、ニオイでした。古いタイプのロールスロイスの内部は、木、革、麻袋、羊毛など自然の素材が使われており、独特のニオイを持っていたのです。ロールスロイスは、このニオイを再現するために多額の費用をかけたというのは想像するとおりです。
アウトドアショップのノースフェイスの店内には、ユーカリの香りが漂います。試着室などにユーカリのニオイを放つ装置が隠されています。ノースフェイスのブランドイメージとニオイをリンクするマーケティング活動を行っているのでしょう。
普段何気なく嗅いでいるニオイ、本当のニオイかなって、調べてみるとマーケターの妙を感じることが出来るでしょう。