早嶋です。
百貨店4位の三越と5位の伊勢丹が持株会社方式で来春にも経営統合する方針を固めました。持株会の会長は伊勢丹の社長、武藤信一氏が、社長には三越の社長、石塚邦雄氏が就任します。
今回の統合によって、売上高の合計は1兆5859億円(06年度連結)となり、大丸と松坂屋ホールディングスの持株会社、J.フロントリテイリングの1兆1737億円を抜き、業界トップとなります。
マスコミの報道では、三越と伊勢丹の経営統合によって、規模の拡大により、管理部門の統合や物流、仕入の共通化によってコスト削減が期待できるとしています。加えて、富裕層に強い三越と若者に支持される伊勢丹は補完関係にあり、幅広い顧客層に対応できるとしています。
三越は長らくの間、業績が低迷しており、一方の伊勢丹は高収益を上げながらも規模の面では劣っています。伊勢丹のノウハウを取り入れて業績を改善したい三越と規模や顧客層の拡大と効率化を目指したい伊勢丹の思惑が一致したのは事実でしょう。
通常、コスト削減は、重複する部分が多いほど効果的と言えます。今回の三越と伊勢丹は、補完的な関係にあるため経営統合による大幅なコスト削減は難しいのではないかと思います。
加えて、富裕層に強い三越と若い世代を対象とする伊勢丹とでは、品揃えが異なることより、経営統合による商品開発や仕入の効率化が思惑通り望めるのか疑問です。
更に、伊勢丹と三越での文化も気になります。伊勢丹は若年層、三越は呉服店の老舗のブランドからの発展とあって中高年層や法人外商に圧倒的な強さを持っています。その分、三越社員のプライドは高く、経営統合によって伊勢丹が主導権を握ると、社員同士がうまくなじむか疑問です。
また、伊勢丹は三菱銀行時代よりメインバンクである三菱東京UFJ銀行出身者を役員に複数登用していたので、旧三井財閥系の三越との影響も少なからずあるでしょう。
今回の経営統合は、両社が株式交換で持株会社の参加に入ることで進められます。そのため、両者の独立性は維持されます。従って、三越と伊勢丹が経営統合したからといって2社の店名は変わることが無いので品揃えが大きく変わることも無いでしょう。となると、百貨店のユーザーにとって何のメリットもないと思います。
では、何故、経営統合の道を進むのか?個人的な推測ですが、2社とも投資ファンドによる買収を回避するのが目的だったのではないでしょうか。百貨店各社は時価総額の割りに土地や建物などの保有資産が大きく、保有資産の売却を狙う投資ファンドに狙われやすいと言われます。
三越の場合、7月末の時価総額が約3,000億円で土地の保有額は2,500億円です。これだと保有する土地の売却を目的に投資ファンドが三越の経営権を取得にかかる可能性があります。統合すると、2社の時価総額は7,000億円を超えます。これだと、投資ファンドも経営権を取得するのが金銭的に難しくなりますものね。
つまり、今回の経営統合は2社の付加価値が向上したり、顧客にメリットが増えたりする経営戦略ではなく、2社の経営の独立性を維持するために進められた統合なのではないでしょうか?