早嶋です。
退廃した仮想の都市を舞台として、主人公を演じるネットワーク・ゲーム、「アナーキー・オンライン」があります。発売5年目を迎え、いまだに世界中のゲームファンを魅了するオンライン・ゲームで、20もの国際的なゲーム賞を獲得した怪物ゲームです。
このゲームの世界で突如現れた看板に描かれている、ベールに覆われた車には「TOYOTA」の文字が。ゲーム中にこの看板をクリックすると、荒れ果てた風景に場違いなピカピカの小型車が登場します。
プロダクト・プレイスメント(PP)を使ったトヨタ自動車の米国向け小型戦略車「ヤリス(日本ではヴィツ)」の新たなプロモーションです。ヤリスは今春、米国市場に投入され、ガソリンの価格上昇といった追い風に乗って好調な売上を上げています。
ヤリスのプロモーションでアナーキー・オンラインを選択した理由に、「おやじ車」の払拭があります。トヨタは新しい広告媒体を利用して、これまで訴求が難しかった若い世代を取り込もうとしているのです。
トヨタがテレビからゲームという媒体を選択した理由として、エンターテイメント媒体の変遷も考えられます。米国調査会社ニールセン・エンターテイメントの報告によれば、2005年に18~34歳の男性は、テレビの視聴時間を前年比で12%も減らし、逆にゲームの時間を20%も増やしているからです。
近年、トヨタに限らず、大企業が広告シェアわずか1%程度のゲーム広告に注目している背景に、ネットワーク・ゲームが主流になったことがあります。従来は、ゲームといっても、カセットやCD-ROMといったパッケージソフトが主流でした。この状況で広告を入れると、一度入れた広告の内容も変更できないし、企画段階から実際に世の中に広まるのにかなりの時差があって、適当な広告媒体になりえませんでした。
それが、ネットワーク・ゲームになってから、上記の自由度が上がり、大企業がこぞってPPの手法によるゲーム広告に目を向けたわけです。
米国大手経営コンサルティングのマッキンゼーは、2010年にテレビCMの訴求効果が90年に比較して70%程度少なくなると予測しています。一方で、ゲーム広告の需要は2010年に今の約13倍に相当する7億3200万ドルと見ています。
今後、広告という流れがどこまでゲームに変遷していくか?この流れが、米国にとどまらず、世界の主流となるか?広告媒体のパラダイムシフト、どの様に影響を及ぼすか興味があるところです。
—ただ今、ブログマーケティング実験中。—
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