早嶋です。
日常的に金利という言葉は良く耳にすると思います。金利とは、お金の貸し借りに対して資金の使用料を払うことで、その使用料を元本に対しての割合で示したものです。
金利の歴史は、人類の歴史と同じくらい古いと言われています。残存する記録のなかでは、バビロニアのハムラビ法典にもでてきています。現物のハムラビ法典を見たことがないのですが、クサビ文字を、日本語に訳されたハムラビ法典を読んだことがあります。その中に、例えば、穀物金利40%、銀金利20%などと金利を表す記述がありました。
穀物が何で銀より高い金利なの?と疑問を持ったことと思います。当時、穀物は、春先に種をまいて秋に収穫するように、穀物の育成は環境にまかせっきりでした。従って、豊作の時期もあれば、不作の時期もありました。ハムラビ法典の中では、借りた穀物が不作の時期であれば返さなくても良いといった決まりがあったため、そのリスクを図って穀物の金利が銀よりも高く設定されていたのです。
金利は、リターンを表しますので、リスクが高い分リターンも高く設定されていた。つまり、リスクとリターンの関係は、バビロニアの時代から脈々と受け継がれていたことになるのです。
中世のヨーロッパでは、一転して金利を禁止する動きがありました。旧約聖書の中で金利に関する記述があり、同胞から金利を取ってはならない、というのが主な理由だったようです。お金を貸して、それに金利をつける行為は、何の変化も無いお金に対して、お金を取る行為だ、つまり、人をだます行為だ。といった主張がされていたのです。ただし、同胞以外、つまり違う宗教や、友人や身内以外の人から金利を取ることは認められていました。
近世になると、金利の考え方が、また変わってきます。これは商業の発達が大きな理由です。一昔前の中世では、モノの変化が無いものに対して金利をつける事は、だましだと主張されていました。しかし、商業が発達すると、この考え方が一転します。
例えば、コショウの貿易。商人は、コショウが安く買える所に買い付けに行き、そこでは市場で売られている価格より、少しだけ高い価格で買いつけます。それから、商人はコショウが高く売られている所に行き、その市場より少し安い価格で売っていました。商人は、この利ざや(アービトラージ)でお金を儲けます。
コショウ自体は形を変えることは無かったので、中世の考え方のままでは受け入れられ無い行為です。しかし、コショウを使う人にとってはメリットがあります。安く売られている所では、高く買ってくれるので得をするし、高く売っている所では、安く買うことが出来るので得をする。つまり、商人の行動のおかげで、皆が得をする事になるのです。このように考えると、モノ自体が変わる事は無いけど、そこに価値が生じるので、これはみんなにとってハッピーだ、だからいいことだ。という主張になり、金利に対しても容認されたのです。
この当時、の金利水準は王様の貸出金利よりも商人同士の融通金利の方が低かったとあります。今の世の中で考えるとこれは真逆ですね。これにも理由があります。王様がお金を借りる時は、戦争をする時など、状勢が危うくなる時です。もし負ければ、お金は返ってこない。また、王様が死んだ時は、借金は相続されないで踏み倒されるかもしれない。ということで、王様にお金を貸す行為は、商人同士でお金を貸す行為よりもはるかにリスクが高たったのです。ここにもリスクとリターンの関係が定着していますね。
金利の動きを長期で見てみると非常に面白いことが分かります。イタリア、ジェノバの金利の記録が1500年代から残っています。この記録によれば、1620年代の低金利が最安値を記録しています。1.125%。日本より、はるかに良いですね。傾向として重要なことが記録からわかります。金利の上昇と下降の関係です。金利は上昇する時は一気に上がりますが、下がる時はじわじわ下がっています。これは金利の特性として知られている事ですが、歴史によっても確認することが出来るのですね。
イギリス、アメリカ、オランダの金利の歴史的な推移を見てみると、面白いことが発見できます。金利が上がる局面はやはり、急に上昇しますが、このタイミングは戦争勃発の時期や、エネルギー高騰の時期と重なります。金利上昇のパラメーターとして戦争やエネルギー価格は重要な指数と考えることが出来るのです。
現在に重ねて見ると、冷戦が終わりかけるとじわじわと金利が下がり始めていますし、テロといった敵が見えない戦争がもっと拡大すると金利が急激に上昇するかもしれません。また、今エネルギー価格が高騰しているので、これも一つのパラメーターとして考えることもできます。
このように、歴史を見ていくと、今言われている法則を確認できたり、今後発生する事象を予測する時のヒントにつながることがあるのです。歴史は繰り返されるといいますが、面白いですね。
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