早嶋です。
中堅企業以上で次のような文言を聞く機会があります。
『2025年に向けて売上を(例えば)500億にします!不足する(例えば)100億は新規事業とM&Aで補います!』
って、実際に具体的な新規事業の中身やM&Aに対しての取り組みを見ると、これからという企業があまりにも多いです。しかし実のところM&Aは国内でも年間に4,000件程度の成約しかなく、しかも多くの方がイメージする実質的な支配権を獲得する買収はそのうち3割程度、5割は資本参加という実態です。企業の数が300万社から400万社ということを鑑みてみ、如何にM&Aのオプションが実は現実的な可能性レベルよりも少ないことがわかります。
仮に、新規事業をM&Aで補うことを考えて見ましょう。M&Aを実施する際、1)新規分野への投資、2)既存分野への投資があります。そして、それに対して今事業が不調な企業と好調な企業に別れます。
1)新規分野✕好調
好調な企業は仮に買収出来ても結構良い値段がつくと思います。仮に買収できても、買い手企業がその企業をマネジメントできるかは別です。本来、M&Aは資産価値から負債を差し引いた純資産の価値以上の買収価格が付きます。そのため、買い手企業はM&Aをした時点で損をしていることになります。得にベンチャー企業などは急成長を武器に、積極的な外部資金調達を行っているため、買収時に発生するのれんが相対的に大きいです。そのため買収後にベンチャー企業が思うように成果を出せなかった場合はのれんの減損が発生します。
1)新規分野✕不調
不調な企業ですから買収価格は安いでしょう。しかし、買い手からすると新規の事業であり、しかも事業内容が不調。そのメカニズムすら理解できないでしょうから、買収は出来ないでしょう。
2)既存分野✕好調
こちらはいわゆる同業者の買収になります。もしこの分野のM&Aを検討するとしたら、すでに売り上げが頭打ちで何らかの理由で売上が確保したい場合でしょう。買い手としては、既存事業ですので事業の理解もありマネジメントは可能ですが、新規事業のポートフォリオとしては不敵説ですね。
2)既存分野✕不調
買い手が一定のシェアや規模を持っている場合、売り手企業の不調レベルが理解できると思います。そして、仮に買い手の傘下になった場合、その不調部分を補える場合は良い買い物になるでしょうが。不調な分、買収価格は低い。しかも買収することで、双方にメリットが生じ、将来の企業価値が高くなるのです。
と考えると、本来M&Aは2)既存分野の不調を買うのが最も合理的だということが変わります。少なくとも新規事業のエリアを買収して伸ばそうとすると、相応に高い金額でなければ変えないし、相応のマネジメントがいない限り、更にその企業を伸ばすことが出来ないのです。
では、M&Aは新規事業において不適切かといえば、そうとも断言できません。もし、僕が同様の立場で一定の新規事業をM&Aする必要性があるとしたら独自のCVCを運営して、M&A候補ベンチャー企業にマイノリティ出資を行うことで、買収後のマネジメントに対してのヘッジを考えると思います。
上記の説明から買い手企業が新規エリアに事業投資を行っても、そもそも業界のことや事業のことが不明でマネジメント出来ない可能性があります。そこで、いきなり支配権を得て経営をするのではなく、業務提携や業務資本提携からはじめて、一緒に事業をしながらDDを行うのです。マイノリティ出資を行うことで、双方の信頼関係は高まり、実際に事業を進めながら双方が協力する中で、短期間で行うDDを実務を行いながら行うこともできます。もし、最終的に完全に支配下に収めたいのであればその後にM&Aの交渉をするのも有りなのです。
一般的なベンチャー投資は投資リターン、つまりキャピタルゲイン等を狙い、事業リターン、つまり協業を通じた新規売上等を評価軸としてその最大化を評価軸として動きます。ファンドには業務執行を行い無限責任を負うGPと業務執行を行わないLPの2種類の組合員で構成されます。そして通常のファンドは、複数のLPがお金を出し合って運営します。
ファンドは、出資先企業の情報を獲得でき、情報収集手段として期待されます。それからファンドを運営するGPは提供する情報を増やして、直接投資の機会を提供します。しかしGPの目的は投資リターンの最大化であり、投資リターン意外には情報提供に留まります。
一方でCVCの場合は、GPとLPの二人組でファンドを組成します。そのため重点領域の選定や投資検討プロセスに関与することができ、投資リターンとともに事業リターンを最大化することが可能です。
ということで、20●●年の戦略的なギャップをM&Aや新規事業で補います!的な取り組みを行っているものの、実際はどうしようと悩んでいる方がいましたらCVCを構築して運営するというのが一つの筋だという考えを記述しました。もし、上記の取り組みにご興味がありましたらご連絡ください。