新規事業の旅 若手とベテランの壁

2025年1月29日 水曜日

早嶋です。約3400文字。

諸々観察した結果、Z世代は40代以上の世代と比較して、「より正解を求め」「より失敗したくない」傾向が強いのでは無いかと思う。

●より正解を求める傾向
学校教育やインターネットの影響で、最適解(ベストプラクティス)が得られやすい環境になった。SNSやYoutubeで検索すると、瞬時に動画情報や画像情報で関連する情報を得ることができ、AIに問いを投げかけると文章でコンパクトに答えを提示してくれる。それが正解かどうかは別として。そのため、自分で試行錯誤するよりも、最初から正解を求める姿勢になった。

●より失敗しない行動をとる
いつしかコスパが一般的な呼称になり、時短、効率ばかりが叫ばれ、「ぼーっと」無駄に過ごす時間の価値が失われた(チコちゃんもわるいのか?)。遠回りしてでも経験から学ぶ知識と本やWebで提示される価値の違いを理解することなく、成果が得られるものと思っている。或いは、そのような概念すら無いのかもしれない。とにかく、失敗を極端に避ける文化が強まっている。

その結果、1対1ではまだしも、2人以上の会議体になった瞬間に発言しない。間違ったことを言ったら批判されると思っているのだろう。当然、挑戦しない。失敗のリスクが非常に高いと勘違いし、はじめから回避し防衛的な態度を選択するのだ。40代以上から見ると、結果的に卒なくこなすように見える。目立たず、最適解(と思しき)に沿って、過不足なく仕事をこなすように見え、主体性が観察出来ないのだ。当然に、そこには試行錯誤やちょっとした失敗を回避できた喜びなどが無いものだから、つまらなくなり長続きしない。そして、ゲームのようにリセットして、すぐにソフトを変えるように転職するのだ。

仮に、このような傾向が、Z世代とした場合、他の世代も混在する組織では、失敗しても学びになる環境をZ世代向けに、どう作るかが課題になりそうだ。

一方、40代以上のベテランもまた、固有の特徴を持つ。「自分から学び寄り添わない」のだ。

●自分から学び寄り添わない
未だに最終学歴を気にして、過去の栄光で物事を考えている。50代であれば30年以上も前のことを、未だに懐かしく、最高の瞬間だと思っている人もいるのでは無いか。そこまで無くても、自分が経験してきたことを絶対視し、他の考えと比較することをしない。結果、過去のやり方を無意識にも最高だと位置づけている。新しい考え方や、プロセスが全く異なる手法には問答無用に懐疑的になるのだ。

企業で多く観察できるのが、デジタルツールや新技術への抵抗だ。今までの取組で問題ないのだから、必要ない。それは若い世代が取り組めば良いじゃないか。と考えているのだ。極めて変化に適応する意識が低く、新しい事を学ぶモチベーションがとても低いのだ。

一方で、新たな取組は、若手の役割と言いながらも、過去の栄光を語り、自分の経験を押し付ける。若手の価値観を理解することなく、自分たちの時代の基準を押し付ける。結果、Z世代の「発言しない・挑戦しない」傾向が更に加速されるのだ。

極点にZ世代と40代以上の世代を比較したが、世代間のギャップはどの組織も発生している。Z世代は「正解主義・失敗回避型」、ベテランは「経験主義・学ばない型」となり、相互理解が難しい。ベテランが「自分のやり方が正しい」と思い込み、新しい教育手法を取り入れないため、若手が育ちにくい。若手のアイデアを取り入れるなどの新陳代謝は起きないのだ。結果、組織は硬直化して新しいアイデアが生まれにくく、過去の成功モデルに固執し、変革が始まらない。

論理的に整理すると、ベテランの学ぶ姿勢を促し、Z世代には挑戦する環境を提供して、世代間のギャップを埋める場を作る。となるが、結構難しい。

●ベテランの学ぶ姿勢を促す
ベテランの場合、変なプライドがあるのだろう。学ぶということは、過去の成功を否定する気持ちになるのだ。そのため過去の成功を否定されることを恐れ、新しい知識を学ぼうとしないのだ。興味があることがあれば、大学や学校に入って学べばよいのに、自分の最終学歴と比較して、「なんで今さら、その低い偏差値の所にいくのか?」などが典型的な例だ。さらに、格好が悪いと思っている。「今さら若手に教わるのは格好悪い」「俺のやり方が一番」と思ってしまうのだ。

私としては、そのようなオジサンやオバサンは放置して、「出来る組織で効率的に先に進んじゃえ!」と思っちゃうが、それを言ったらおしまいだ。日本は、組織の入れ替えが出来ない仕組みになっている。解雇が超絶難しいのだ。そこで、いくつかアイデアはある。そして実際に複数の組織で実験している。まずは、「学び」が役立つことを体感させる。いきなり研修や講座を受けさせるのではなく、「学ばないと損する」現実を見せるのだ。デジタルツールのデモを見せ、過去の取組が如何に生産的でないかを体験させるとか、新たな知識が自分の思考の幅を広げることに繋がるなどを実感させるのだ。

新しいツールや取組は、逆メンター制度を取り入れる。若手がベテランにデジタルツールや最新の知識を教える仕組みだ。近い年齢だとプライドが許されないかもしれないが、孫くらいの世代だと可愛く思えるだろう。そして「教える=上から目線」と思われ、反発されそうなので、「学び合い」として設計する。

更に、必ずベテランの成功体験を活かせる機会も同時に設計しておくことがコツだ。「これまでの経験は不要」と言うと反発が起き、再起不能になるので、経験を活かした取組を若手に教える場を作るのだ。その過程があると双方にフィードバックがしやすくなるという算段だ。

●Z世代には挑戦する環境を提供する
キーワードはマインドセットだと思う。「失敗=だめ」という文化や概念を壊すことから始めるのだ。これは若手に失敗させると評価が下がると考える管理職も含めて思考を変える必要がある。SNS世代のため、「間違ったことを言う=恥ずかしい」と思いがちで、オジサン、オバサンよりも周囲の目を気にしている。そのため指示待ちで言われた範囲で取り組んだ方が安全だと思っている。従い、事細かく指示を確認して動くのだ。そのような人間が評価されるとさえ考えているかも知れない。

で、どうするかだ。ここには色々と試みたが王道はスモールスタートだった。とにかく小さく始める。小さな挑戦からスタートするのだ。いきなり大きなプロジェクトを任せるのではなく、小さな成功体験を積ませる工夫を徹底的に考えるのだ。1週間で小さな改善提案を出すとか、社内で新しいツールを試すなどの取組でも構わない。実際に行動することで学んでもらうのだ。

そして、「失敗してもいいよ」と言っても通じないので、仮に失敗等があったらその振り返りを行い、評価する取組を導入するのだ。例えば、このプロジェクトで学んだことをプレゼンする場を設け発表してもらうなどだ。すると、そこでの学びを前向きに捉える発言をすることで、若手も徐々にだけど挑戦の意味と価値を理解しはじめるのだ。

●世代間のギャップを埋める場
ここも工夫することが大切だ。そもそも若手とベテランは、単に互いを知らないだけなのだ。双方を理解するための最も簡単で地味なやり方は、コミュニケーションする時間と頻度だ。そこで、世代間を超えた関係で、1on1ミーティングを導入する。業務時間内に、定期的に、ベテランと若手が1対1で対話する時間を作るのだ。アジェンダは何でも良い。目的は、互いを知ることとして、互いの仕事のやり方をシェアするとか、最近の悩みを話すとかだ。

その際、役職を出来るだけ取っ払うのが大切だ。とにかくフラットにするのだ。世代間のギャップがあることは双方が感じている。そこで、敵対関係ではなく、共通の課題として認識して頂き、1on1を通じて何か生産性を上げる工夫を見出すなどを話し合うのだ。

ベテランは過去の成功に固執し、学ぶ姿勢を持たず、Z世代は正解を求めすぎて挑戦しない。結果として世代間ギャップが広がり、組織の成長が停滞している。解決には、まずZ世代が小さく挑戦できる場を作り、次にベテランに「学ばないと損」と感じさせる環境を整えよう。そして、世代を超えて意見を交わせる対話の場を設けることが重要だ。一気に変えるのではなく、小さな成功体験を積み上げることが現実的なアプローチとなる。



コメントをどうぞ

CAPTCHA