早嶋です。
少し古いデータになる。「日本性育成協会の全国調査」をみると男子女子(大学・高校)ともに性体験率は2005年頃をピークに劇的に減少している。性体験を持たない若者が増殖しているのだ。2014年のデータですら、交際経験が無い20代は4割、30代は3割で、女性でも20代で2割、30代で16%となっている。2023年にデータを更新すると間違いなく交際経験が無い男女は増えていることだろう。実際、生涯未婚率の2030年の推測は、男性が3割、女性が23%に達する。
昭和や平成初期の世代の恋愛のスタートは人が集う場所からだったと思う。学校や下宿先。サークルや部活動。課外活動のたぐいだ。会社であっても勤務場所や労働組合、会社のイベント事がリアルに不特定多数何度もあり、自然と時間と空間を共有する中でいつしか恋愛関係に発展した。当然ながら損得勘定やコスパなどを考える発想はまったく無い。
現在は、マッチングアプリが主流で、要は出会い系サイトだ。めんどくさいアナログの時間と空間の教諭はなしに、サイトの仕組みでいきなりスペックが会う人を紹介してもらう。年齢、容姿、職業、年収、住居エリア等々。システムに条件を入れて、スクリーニングされた相手を選び恋愛をスタートさせるのだ。
この違いは何を意味するのか?
アナログ環境での出会いは、意味がわからず、明確な理由が無く、互いが関係構築する。時間をかけて関係性が強固になる。一方、デジタルの場合は、スペック有りき。嫌な部分があれば、我慢すること無く、次の選択肢を選ぶ。無意識か否かは判りかねないが、相互に交換可能だと感じているかもしれない。
アナログは置き換えが難しく、一方でデジタルは代替可能なのだ。
コロナで、コストパフォーマンスに加え、タイムパフォーマンスなる言葉がでてきた。私の中で嫌いなワードの上位に両方ともランクインする。無駄が性能を生み完成が生まれ成熟すると理解しているからだ。しかし、仕組みがデジタル化すると、男性と女性の関係すらも損得勘定で比較するようになっているの傾向を鑑みれる。
関係性を時間をかけて構築するアナログの部分はなく、スタートからスペックありきがデジタルでふるいをかけ面倒があれば問題解決する間のなく入れ替える。あるいは、付き合わない選択肢を優先するのだ。幸か不幸かにして、抑えられない性愛感情はデジタルでまたアウトソーズしているのだ。
当然、女性にも変化がある。男性優位社会は崩壊し、当たり前に努力をすれば、性別に関係なく能力が認められ社会で力を発揮することができる。アナログ世界のぐずぐず男性と決別し、アナログ時間を無駄にするより、健全で自分や社会のためになる取組に投資するほうが合理的になったのだ。
したがい、男性が恋愛や性愛を損得化した結果、マネジメントできない男性はリジェクト。そして女性は、そのような男性に懲り懲りし、やはりリジェクト。自分の人生や恋愛以外にパワーをフォーカスしているのだ。
昭和生まれや大正生まれの人からすると、恋愛は喜怒哀楽を含めたメリットとデメリットを含め、合理的に損得勘定で考える世界とは別の次元だ。包括的な全人格的な概念と理解するだろう。したがい上記の行動は理解するのが難しいと思う。しかし明らかに異なるのだ。
なぜ、この考察を本稿に記したかと言えば、企業の離職転職にも当てはまるからだ。現在の若者の新卒採用の登竜門がまさにマッチングアプリよろしくのリクルートや大手エージェント会社が提供している。将来の新卒学生をデータベース化して、採用したい企業のハブになることで互いにメリットを提供している。企業は学生を採用しやすく、学生は企業を選択しやすくなっている。入社する前から双方がスペックをじっくり眺め、互いのレベル感に応じた企業と学生をマッチングしているのだ。2000年前後より始まったこの活動は、現在では転職する際も活用され当たり前になっている。
若者の恋愛しかり、仕事をスペックで選び、想像と現実が異なった場合に、アナログ的にじっくり問題解決することなく、転職してしまう。デジタルが当たり前になった今、行動としては止めることができない。人材も相互補完が効き、双方がつまみ食いをしあっている状況が続いているのだ。
しかし、実態は、企業側はその仕組を使いつつも、心の何処かでは「今の若者は忍耐が足りない」とか思っているのかもしれない。その仕組を提供して定着させたのが企業に責任があることを鑑みずにだ。実際、人手不足と言いながらも採用のあり方や新卒一辺倒のあり方があまり変わっていな。イノベーションと標榜しながらも、従来通りの採用で満足している。そのような出会いでは確実に一定数が数年も立つと転職して他に行くのは見えているのだ。恋愛よろしく、変えることに何の抵抗もないかもしれないのだ。
早嶋聡史の関連事業
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・M&Aアドバイザーの教育機関は日本M&Aアドバイザー協会
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「M&A実務のプロセスとポイント<第2版>」
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