早嶋です。
キャズムを超える
新規事業で、特に会員数や一定のシェアを獲得するKPIに対してキャズム理論が参考になります。この概念は米国のマーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーアの主張です。
”新規プロダクトをローンチし販売するためには、アーリーアダプターを確保することが普及のカギになる”とキャズム理論で提言しています。
新しい概念や商品は市場に受け入れられるまでに一定の認知が必要です。この概念はエベレット・M・ロジャーズのイノベーションの普及学で整理されています。商品が大衆に普及するまでは、次の流れが考えられます。まず、市場の3%程度のイノベーター(革新者)に認知されます。このそうは所謂超オタクで、常に自分が関心のある分野において情報を探しているので、商品を提供する側が意図的にプロモーションをせずとも積極的にリスクを背負って購入する層です。そして、一定のリテラシーがあるので多少不具合があっても自分たちでなんとか吸収して使用します。そのためこの方々に受け入れられても市場の成功とはほぼ相関がありません。
スタートアップや新規事業や新たな概念の普及のスタートは、市場の14%程度のアーリーアダプターの受け入れから始まります。このそうは超オタクには負けますが、一定の感度とスピード感を持って商品を積極的に導入します。メディアなどはこの層の動きをウォッチしており、人によっては自分たちがアーリーアダプターとなって様々な商品を試します。そのため業界ではインフルエンサーとかオピニオンリーダー等も称されます。
とイノベーター、アーリーアダプターに採用され始めると市場の市場の17%前後に普及することになりますが、ここにギャップがあるのです。ジェフリー・A・ムーアはこれをキャズムと称しました。新規事業や新たな概念を市場に普及させ、市場の17%前後に普及した後に企業は安心して、一気に展開しかけます。が、多くが次の波に乗ることが出来ずに急激に失墜するのです。キャズムを取り超えれない現象です。
アーリーアダプターの次の層は、アーリーマジョリティと呼ばれます。市場の34%が相当します。流行りを見て、インフルエンサーの様子を見て、自分たちも商品の導入を検討しますが、実際のメリットや使い勝手がイメージできないまま、何度も購入を試みますが、一方で購入を諦めるという行動を繰り返します。自分にはまだ早いかな。使いきれるかな。今の商品でよいのではないか。ほしいと思いながらも、周りに持っている層が増えてから購入しようなどと考えてしまい、アーリーアダプターのような急激な普及がおきません。
スタートアップや新規事業を行う際に、市場の普及の17%をまずは目標に大量に利用や使用を勧めていきます。アプリなどは兎に角広告宣伝費を費やしてシェアを獲得して赤字度外視ですすみます。ときにはファイナンスとにらめっこしながら兎に角シェアを増やすことに躍起になります。そしてアーリーマジョリティに普及する手前で気が緩んでしまい、従来と同じ仕様やマーケティングを行った結果、上手くいかないのです。
ポイントは、16%から17%のイノベーターとアーリーマジョリティとそれ以降の購買層は全く別の生き物と捉えることです。そして、市場のメインディッシュに行く際は、再度自社のプロダクトの使い勝手や顧客に対してのメリットの訴求やコミュニケーションのあり方を徹底的に検証します。アーリーマジョリティは想像以上に商品の購入、特に新しい概念に対しては慎重なのです。ここを想定したマーケティングを考えておくことが大切なのです。
新規事業の旅(その16) キャズムを超える
新規事業の旅(その15) 偶然と必然
新規事業の旅(その14) 経営陣のチームビルディング
新規事業の旅(その13) ポジションに考える
新規事業の旅(その12) 山の登り方
新規事業の旅(その11) 未だメーカーと称す危険性
新規事業の旅(その10) NBとPB
新規事業の旅(その9) 採用
新規事業の旅(その8) 自分ごとか他人ごとか
新規事業の旅(その7) ビジネスモデルをトランスフォーメーションする
新規事業の旅(その6) 若手の教育
新規事業の旅(その5) M&Aの活用の落とし穴
新規事業の旅(その4) M&Aの成功
新規事業の旅(その3) よし!M&Aだ
新規事業の旅(その2) 既存と新規は別の生き物
新規事業の旅(その1) 旅のはじまり